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七夕ショート(ニ年目)


「日向さん、今日は七夕です! というわけで、笹を調達してきますね」


「ふふっ、笹じゃなきゃ駄目? そもそもなんで笹にぶら下げるんだろう……?」


「諸説ありますが、笹は神事にも使われる神聖なものですし……なにより、天高く真っ直ぐ伸びていきますから、星々に願い事が届きそうな気がするからではないでしょうか」


「素敵だね。じゃあ我が家で一番勢いのある植物は…………これかにゃ?」


 というわけで、緑のカーテンを作っている苦瓜に願いをのせることにしました。

 ポン助は満腹祈願、バジェット一号二号は延命息災です。

 さて、私達はというと……


「うーん……幸せすぎて願い事ないや」


「ふふっ、私も同じです」


 強いて言うならば……

 互いに書いた願い事、目を丸くして笑い合う。


日向さん()と健康で長生き出来ますように”


 吸い寄せられるように顔が近づいていき、唇同士が触れ合う頃には、網戸に張り付いた蝉声は私の耳に入ってこなくなっていた。



 ◇  ◇  ◇  ◇



「ふふっ、いつもより積極的だったね」


「……一年で一日しかない、特別な日ですから。織姫と彦星もこんな気持ちなのかなと思うと……その、気持ちが溢れてしまいまして……」


 仲良く苦瓜に短冊を掛けます。

 それから二つ、橙色と水色の折り鶴も寄り添うように吊るした。


「ふふっ、なんで鶴なの?」


「吊るすものは、短冊だけではないんです。折り鶴を吊るす意味は……健康祈願です。それから、日向さんが選んでくださった苦瓜……この花言葉は強壮。二人どこまでも健やかに歩めるよう願うには、最適ではないでしょうか」


「もう……ホント、物知りな織姫様だね」


「……いいえ。あなたと出会って、あなたが教えてくれた沢山のコトには…………敵いません」


「ふふっ。じゃあ……もっと知らないこと、一緒に知っていこ?」


 その日あなたが教えてくれたことは、恥ずかしいなんて次元では済まないことだったけど……

 あなたが教えてくれるから、あなたと歩んでいけるから、私は幸せです。


 一年に一度しか会えない織姫と彦星。

 今夜二人はどんな会話をしているのでしょうか。

 

 私の彦星様は、ゴーヤチャンプルを口いっぱいに頬張って幸せな顔をしています。


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