表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/242

心満意足


 大晦日、年越し蕎麦の準備をしています。

 カウンター越しの日向さんは、嬉しそうな顔で私を見つめている。


「日向さん、その……照れてしまいます」


「ダメ?」


 日向さんのお願いを拒むなんて出来ない。

 好かれているからであって……贅沢な悩み。


 でも、何をするにも日向さんの視線が気になってしまう。

 顔が真っ赤なのは、蕎麦を茹でている湯気のせいにして貰おう。


 ◇  ◇  ◇


 蕎麦が茹で終わり、二人で仲良く啜っています。

 そんな最中も、日向さんはニコニコと私を見つめてくる。


「ど、どうしましたか?」


「んー……好き」


 ……嬉しい。

 でも、本当にどうしたのだろうか。

 

「あ、あの……」


「もうすぐ一年が終わっちゃうでしょ? 今年の雫にはもう会えないから、いっぱい見つめて好きって言ってるの」


「わ、私も日向さんが好── 」


 言葉を塞ぐように、口が塞がれる。

 

「今年の最後……雫の最後を私に頂戴」


 あなたに始まってあなたで終わる一年は、とてもとても幸せで、満ち足りた一年でした。

 言われなくたって、私の全てを捧げますから……


 鐘の音がどこか遠くで響いている。

 鳴り止んだ時、それは新しい年を迎えた証。


 そんな鐘の音に呼応するように、日向さんは私に愛をくださる。

 甘くて、蕩けて、重なって……


 今年最後の、日向さんからの愛。


「雫、大好きだよ」


 言葉尻、鐘の音が鳴り止む。

 それは今年初めての愛の始まり。

 私から……日向さんへ。


「大好きです。初めて……貰っちゃいました」


「もー……ふふっ、貰われちゃった♪」 


 幸せな一年の、始まり。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ