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際限の無いこの想い


「雫、髪伸びたね」


 日向さんの一言で気がついたけれど、肩よりも大分下になってきた。

 最後に切ったのは確か……


「……もう出会ってから半年経つんですね」


 半年前の私に、今の私の事を言ったらどんな反応をするだろうか。

 信じられなくて、変な声を出してるのかな。

 今、半年後の私から言われても、きっと変な声を出すのだろう。


「では近々切ってきますね」


「……ねぇ、せっかくだからちょっとアレンジしてみる?」


「ふぇ?」


    ◇


 いつも日向さんが使っている化粧台の前に座る。

 鏡越しに目が合うので、どこに視線を向ければ良いのか分からない。

 

「そんなに緊張しないで? 恥ずかしかったら目を瞑っててね」


 素直に目を瞑ると、頬に柔らかい感触がした。

 恥ずかしくてそのまま俯いてしまう。


 優しく髪を梳かしてもらうと、肩の力が抜けてきた。

 日向さんの柔らかい手と、優しい櫛使いがとても──

 

「気持ちいい? ふふっ、なんだか猫みたい」


 色々と見透かされていて、顔が熱くなる。

 でも、好きな人に触れてもらえる事は幸せで心地よいモノ。

 小さく頷いて、また身を委ねる。

 

    ◇


「うん、出来た。雫、目を開けて」


 恐る恐る目を開ける。


「どう? 可愛いでしょ?」


 編まれた髪は後ろで束ねられている。

 可愛くて綺麗で、とてもお洒落。


 まるで私じゃないみたいで、何度も角度を変えて鏡を見つめる。


 こんな私でも、少しだけ……輝いて見える。


「へ、変ではありませんか?」


「照れちゃうくらい凄く似合ってるよ」


 そう言った日向さんの顔は、少しだけ赤らんでいた気がした。

 少しでも……喜んで貰えたのだろうか。


「……この髪の毛の作り方、教えて頂けますか?」


「……切らないの?」


「…………もっと好きになって欲しいんです」


「っ…………これ以上好きになったら変になっちゃうよ?」


 おでこ同士を擦り合わせて、鼻先が触れ合う。


「駄目ですか……?」


「……もっと狂わせてよ」

 

 毎日毎日、気持ちが積み重なっていくから……昨日の好きよりも、今日の好きという気持ちの方が暖かい。

 それでも、明日の私に負けない位、今日の私は日向さんが好き。

 なんだか矛盾してるけど、際限の無いこの想いに理屈は通らない。


「そんなに可愛い顔して……どしたのかにゃ?」


「…………にゃんでもにゃいです……にゃ」


「もう……どうなっても知らないよ?」


 半年前の私に言ったら、卒倒するんだろうな。


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