日々是好日
晦日も晦日の大晦日、気の緩みから体調を崩してしまいました。
お母さんの代からお世話になってる往診医のすみれ先生に診てもらったけど、風邪ではなく疲労からきているらしいので、晴さんの仰せで今日は動いてはいけない日に。
「お蕎麦を作らなければいけないのに……申し訳ありません……」
「ううん、私がいつも甘えちゃって……雫にたくさん無理させてたから。ごめんね……それから、今年も一年ありがと」
すみれ先生が帰ってからは、お姫様抱っこの格好で私は抱えられている。
恥ずかしいけど……でも、あなたの匂いと温もりが一番近くに感じられるから……今日だけは我儘を。
だって、除夜の鐘がこの煩悩を打ち消してくれるから。
「年越し蕎麦を食べるのって、細く長く──って理由だよね?」
「そうですね。他には切れやすいので厄を切る、蕎麦の実が解毒する……なんて、諸説があります」
「……ねぇ、今年は私が作っていい?」
そう言って強く抱きしめられて、優しくソファへと置かれる。
離れ際、頭を撫で擦りキスをもらう。「目を瞑って休んでてね」と言われたけれどコッソリあなたのことを見つめていて、目が合う度に私の下へ来ておでこにキスをしてくれた。
甘い時間が過ぎていき、気が付けばウトウトと夢の中。遠くで鳴り始めた除夜の鐘に起こされ、ソファ前の机にはあなたの手料理が置かれていた。
「どう? 私なりの……ふふっ、年越し料理」
それは蕎麦でもうどんでもない、黄金色に輝くパスタ。その上には赤いミニトマト、緑色のバジリコソース、白く光るモッツァレラチーズたち。
「色んな理由に託けて蕎麦を食べるなら……私たちなりの理由があってもいいのかなって思ったの。勿論長くながーく一緒に生きたいから麺類にしたけど……きっと雫と一緒にいれば、雫が私を長生きさせてくれるよね。だから私は……その道々に色を添えたいなって。今日使った具材は……酸いも甘いも噛み分けていけますようにって願いを込めたの」
あなたと出会って……衝動的に身体が動いてしまうことが多くなった。ただそれは私の本能で、あなたへの愛が私の心を衝き動かす。でもそれは止められないし、止める必要も無い。こんなにも愛していて…………こんなにも愛されているのだから。
溢れる想いをぶつけるようにあなたを押し倒して、あなたの唇を塞ぐ。
「ふふっ。いただきますくらい……しなくちゃいけないんじゃないの?」
「今日くらい……いいじゃないですか?」
「ふふっ……どうして?」
「毎日毎日あなたへの好きが募って、今日が一番好きなんです。今日は大晦日……つまり、今年一番好きな日なんです。だから……」
「だから……?」
色んな理由に託けているけれど……あなたの全てが欲しいだけ。
今年一番好きな日。それから……今年初めて、あなたを好きになる日。
「………………しよ?」
「もー……後悔させてやる♪」




