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とある日常。


「では行ってきます。お昼前には戻ってきますから」


「うん、いってらっしゃい」


 雫は大学に用があるらしく、アパートに一人残された。

 整理された部屋、まさに彼女を表している。


 ふと見ると、ベッドと壁の隙間に本が挟まっていた。

 何かと思い見てみる。


 ……これって小学生向けのファッション誌だよね……?


 なになに……“可愛いを作ろう☆控えめでモテるコーデ満載♡”

 “付録!○○モンメチャ可愛ポーチ”


 えぇ……

 付箋が幾つも貼ってあり、勉強した様子が伺える。


 正直、参考になる事なんて書いてあるとは思えない。

 でも、臆病で奥手な彼女が勇気を出してこれを買って……多分私の為にしてくれているんだと思うと、心が温かくなる。


 こんな事をしなくても、彼女はこの世界で誰よりも可愛いし、誰よりも彼女を愛してる。

 

 せっかくなので私も付箋を貼る。

 参考になるのか定かではないけれど……


 最後に付箋にメッセージを書いて元に戻す。

 

    ◇


「ひっ、日向さん!! こ、これ見ました!!? 見ましたよね!!?」


「うん、見た。ごめんね?」


 鞄から○○モンのメチャ可愛ポーチが顔を出している。

 顔を真っ赤にして、目に涙を浮かべている。


「雫は何を着ても可愛いよ。背伸びしなくてもいいから。そのままの雫が好き」


「で、でも……日向さんはいつも輝いていらっしゃるので……私なんかが隣に立つと……」


「……ううん、それは間違ってる」


「えっ……?」


「好きだから輝いて見えるんだよ。だって私から見たら雫はとっても……」


 そう言いながら見つめると、彼女は恥ずかしそうに俯いて両の指同士をくるくると回していた。

 堪らず抱きしめる。


「……まだご不満?」


「いえ…………でも……少しはお洒落に気をつけないと……」


「……じゃあさ、私が選んであげる。私の好みだけど」


「全部、日向さんの色に染めて下さい」


 そう言って彼女からキスをしてきた。


 私も彼女の色に染まっている。

 十人十色なんて言うけれど、私達はお互いが混ざり合って同じ色をしている。

 

「……お揃いの服買おっか。ね?」


「わ、私も同じ事を考えてました」


 色々な形があるけれど、私達はこうやって一つになっていく。


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