第87話「で、なんでなんだ? こんなことをした理由を聞かせてくれないか?」
「まぁそうなんだけどな? でも、まるで見てきたかのように推理してくれちゃうのは、恥ずかしいからやめて欲しいな!」
さすが幼馴染み。
俺の行動は、小春には完全にお見通しのようだった。
「はーい♪」
そしてまったく反省してなさそうな返事を返してくる小春。
ま、それは今は別にいいんだけど。
幼馴染みならお互い様だしな。
俺はコホンと軽く咳払いをすると、真面目な声で言った。
「で、なんでなんだ? こんなことをした理由を聞かせてくれないか?」
俺が真面目モードになったことは2人にも伝わったみたいで、小春も真面目な顔で答えてくれた。
「ユータが最近、アタシたちとの関係をずっと悩んでたっぽかったからさー。見てられなかったっていうか?」
「だから私たちの方から話をしないとって思ったんです」
「べ、別に悩んでなんか――」
「悩んでたよねー、ひめのん。時期的には動物園に行った後くらいからかな」
「はい。あのあたりから急に、なんでもないときに真剣な顔をすることが多くなりましたから」
「あー、うん。まぁ……」
どうやら俺は心の中でだけ思い悩んでいたつもりが、顔や態度にもろに出してしまっていたらしい。
いいや、決してもろではなかったはず。
きっと小春と姫乃ちゃんだから、俺の変化に気付いたんだ。
俺に好意を抱いてくれていた2人だから――。
「見てたらわかるよねー」
「はい。勇太くんは優しいので、きっと悩んでるんだろうなって、ずっと心配だったんですから」
「じゃあ2人で、俺に踏ん切りを付けさせてくれたわけだ」
不安定な関係性に苦悩していた俺を、小春や姫乃ちゃんはずっと心配してくれて、こうして背中を押してくれたんだな。
なんて風に、俺は2人の気持ちを受け取ったんだけど。
「んー、ちょっとだけ違ってるかなー」
しかし小春からは予期せぬ答えが返ってきた。
「えっ?」
「ぶっちゃけユータのことだから、『俺はどっちも好きだから選べない』とかなんとか、思ってたわけでしょ?」
「……まぁ、うん。その、……なんだ。悩んでいたってことは、まぁ、そういうことだよな。どちらか選べたら、そもそも悩む必要はないわけだし」
優柔不断だと自白しているようでどうにも答えにくい質問だったが、俺は少し言葉に詰まりながらも、正直に肯定した。
ここで見栄を張ったり虚言を弄すのは、絶対にダメだから。
「でね、実はそれはアタシも同じでさ? 今の関係に悩んでいたわけ。だからまずひめのんに相談したの。3人でこの問題を共有しない? って」
「姫乃ちゃんと?」
「正直、私も勇太くんと同じように3人の関係に悩んでいたんです。だっていわゆる三角関係ですよね、今の私たちって」
「まぁ、うん。そうなる……よな」
俺の優柔不断を起因とする三角関係なので、これまたなんとも答えにくかったのだが、ここでも俺は正直に肯定の言葉を返した。
「だったらいっそのこと、3人で共有しちゃった方がスッキリするでしょ?」
「同じ三角関係でもそれぞれが1人だけで悩み続けるのと、3人で共有していくのじゃ、似ているようでぜんぜん違うと、私と小春ちゃんは考えたんです」
「なるほどな……。それが今回の同時ラブレターの理由だったんだ」
どうやらそういうことのようだった。




