第10話 初恋×今恋──邂逅
俺と姫乃ちゃんの間に物理的に割り込んできた小春は、腕組みをして俺を見ろしていた。
「あ、小春……」
4年前から現代へと、俺の意識は一瞬にして引き戻された。
小春は胸を下から持ち上げるようにして腕組みをしている。
胸が腕に乗っていた。
いつだったか『胸が大きいと、こうしないと腕が組めないんだよねー』と言われたことを思い出した。
「あ、小春じゃないしー! 今の今まで完全にアタシの存在を忘れてたよね? 2人の世界に入っちゃってたよね?」
「ごめ……あ、いや……その……そんなことは……ない……ぞ?」
謝りかけてから、バツの悪さを感じて、やっぱり小声で否定する俺。
なんていうかその、例えるなら浮気現場を見られた彼氏の気持ちって言うのかな?
小春に問い詰められた俺は、なんともやましい気持ちを感じてしまっていた。
もちろん俺は年齢=彼女いない歴なネイティブフリー男子なので、クラスの女子と仲良く話していても、誰に文句を言われる理由もないんだけれど。
それでも俺はやましさを感じてしまっていた。
それはきっと、俺が小春に告白しようと思っていたからだ。
小春に告白する気でいながら、他の女の子に夢中になってしまっていた自分に、俺は激しい後ろめたさを感じてしまったのだ。
「そんなことあるしー! アタシが後ろで声をかけても、ユータってばぜんぜん気付いてくれなかったしー!」
「別にその、小春を無視したわけじゃなくてさ……」
無視したり存在を忘れていたわけじゃないと思うんだ。
ただちょっと気付かなかっただけで。
うん、それを世間一般では忘れていたって言うのかな……。
小春は「もー、しょーがないなー」とつぶやくと、腕組みを解いて、姫乃ちゃんの方に身体を向けてから言った。
「それでこの子はユータの知り合いなの? 妙に仲良さげだけど」
「ああ、うん。紹介するよ。転校する前の小学校で仲の良かった子で、二宮姫乃ちゃんって言うんだ」
俺が姫乃ちゃんを紹介すると、
「初めまして、二宮姫乃です。勇太くんとは前の小学校でとても仲良くしてもらっていたんです」
姫乃ちゃんはふわりと笑って自己紹介をした。
「へー、そうなんだ。とても仲良く、ね」
な、なんだよ小春?
なんで今、俺の方を一瞬見たんだよ?
お、女友達くらい、いても普通だろ?
「今日こうして4年ぶりに再会できて、つい話が弾んじゃったんです。ごめんなさい、一人だけ仲間外れにしてしまったみたいで」
「ふーん」
なんだろう?
姫乃ちゃんの言葉の最後らへんに、微妙にトゲトゲしいものを感じたような気がした。
ま、まあいいや。
俺の気のせいだろ。
なにせ姫乃ちゃんは誰にでも優しい天使のような女の子だからな。
俺は次に小春を姫乃ちゃんへと紹介する。
「それでこっちの子は、転校してから仲良くなった小鳥遊小春。小鳥が遊ぶって書いて『たかなし』って読むんだ。珍しいだろ?」
ちなみに小春の名字の読みを間違えるヤツは、過去に一人たりともいなかった。
これは俺の推測なんだが、読み方を間違えて小春に悪印象を持たれたくないからだと思っている。
それはさておき。
「初めまして、ユータの幼馴染みの小鳥遊小春です」
「幼馴染み……」
「うん♪ 家が隣で、朝は毎日起こしに行ってあげてる仲なんだよねー。今日も朝から寝坊すけユータを起こしてあげるのに、もう大変でさー」
小春も自己紹介をした。
だが別に言わなくてもいい情報が、入っていたように感じてしまった。
「……そうなんですね」
「うん、そうだよー。朝ごはんも一緒だったしねー」
小春がわざとらしく俺に視線を向けてきた。
「ああ、うん。一緒だったけども」
うなずく俺。
でもその話って、今関係あるかな?
俺はないと思うんだけど……?
すると姫乃ちゃんが、まるで小春に張り合うように昔のことを話し出した。
「わ、私も小学校の頃はいつも一緒だったんですよ。なにより私が大ピンチの時に、勇太くんが助けてくれて――。あ、これは2人だけの秘密なんでした」
今度は姫乃ちゃんがニコッと小春に笑いかけてから、わざとらしく俺に視線を向けてきた。
「あ、ああ、うん。そうだったよね」
またまたうなずく俺。
でもその話って、今関係あるのかな姫乃ちゃん?




