第五十七話 『 動く死体と動かされた死体 』 2/3
重要な条件に気付いた夏男!
ここで一度〝枠ミッション〟を簡単におさらいする。枠ミッション内容とミッション達成条件は以下の通り。
殺人枠(全7人)
2人以上のプレイヤーを殺害する事。殺害方法は問わない。息の根を止めれば問題なし。他のプレイヤーにバレないよう殺す事を条件とする。2人以上殺害してから他のプレイヤー死体発見後72時間経過するまでの間に犯人である事がバレなければミッションクリア。
裁判枠(8人)
ゲーム中に殺人事件が起きた際にミッション開始となる。あなたは正式な裁判員の権力を得、事件を解決すべく犯人を暴く必要がある。殺人事件による死体発見通知から72時間以内に犯人を暴かなくてはならない。30日間殺人枠がミッション達成しなければミッションクリア。
脱出枠(5人)
あなたは脱出ルート内にある宝箱を5つ集めなさい。脱出ルートの場所は探せば見つかるだろう。30日以内に5つの宝箱を見つければミッションクリア。宝箱には限りがあって合計20個しかない。早いうちに他の脱出枠プレイヤーを殺してしまうのも一つの手。
裏猫枠(3人)
あなたはゲーム中〝猫〟になって下さい。1~15日目は裁判枠か殺人枠を選んでもらう。16~30日目は植物枠か脱出枠を選んでもらう。選んだミッションを両方クリアすればミッションクリア。占いの力を持っている枠があるので、何に化けるかが重要。更にあなたが裁判員に犯人だと決定され、処刑が決まった時点でもミッションクリア。当然処刑はされない。
黒幕枠(3人)
あなたは黒幕サイドに仲間入りした。主な詳細については本日午後23時に食堂へ。その時間は就寝時間で出入りは禁止されているけど処罰の対象外。
植物枠(2人)
あなたはそのうち植物人間になって下さい。分かりやすく言ったら死体に化けよう。あなたはダレカに殺されたフリをすれば良い。あなたが死体と認められ、最後までバレずにゲームを終えればミッションクリア。本日の就寝時間にいつでも死体に化けれるよう、特殊メイク道具一式を持っていく。
人造枠(2人)
あなたは高橋未来ともう一人の未来と枠ミッションを交換しなさい。ゲーム開始から24時間以内に交換出来なければ処刑。交換が完了したら、あなたはその交換した枠ミッションに従いなさい。交換された高橋未来ともう一人の未来の枠ミッションは〝未来枠〟になる。未来枠とは、特殊なもので一夜に一人占う事が可能だ。占いはそのプレイヤーの枠ミッションが何枠なのか分かる能力。
切札枠(1人)
この枠の能力は他プレイヤーに渡される全ての枠ミッション内容と達成条件を知る事が出来る。その上で自分の立位置を自分で決めてもらう。つまり他枠のキーパーソンと成り得る枠。占い能力はなし。
Q.速攻クエッション発生!
米山恵斗が生きていると考えた場合、考えられる枠ミッションは上記の計8枠ミッションのうち、どれに当てはまる?
※ 議 論 開 始
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米山恵斗殺人事件
リアルディベートⅤ
路瓶「もしや桜雪さんは何らかの理由で米山の思惑に協力している?」
桜雪「何よそれ。私が米山を殺したとでも言いたいのかしら?」
路瓶「そうは言っていない。米山はあの時確かに生きていたのだからな。あの特殊メイクの腕には驚かされたがな」
青葉「桜雪さんはこの事件について何か知っている事はないのかね?」
桜雪「あらやだ。じゃあ何かしら。あなた方の質問から考えるに、まるで私が米山恵斗に〝死体に成り済ますよう仕向けた〟みたいな感じね。どうして私がそんな事をしなくてはならないのかしら」
夏男「米山が〝植物枠〟だから……じゃないのか?」
桜雪「はい? よく聞こえないのでちゃんと声を張って下さるかしら?」
電田「確かに桜雪ちゃんが米山に死んでもらうフリをさせるという読みはどうかしてる。どう考えたってその線はないだろう。それに何と言っても眩しいオーラに包まれたお美しい桜雪ちゃんをまるで人殺しのような疑いの目で見るなんて。おい野郎共、こんなお美しいおレディーに寄って集ってどうしようって言うんだ」
鎌倉「あんたは黙ってなさい。クソビ……じゃなくて路瓶さんは桜雪ガールに事件について何か知ってる事はないかと尋ねているだけだわ」
路瓶「この事件の裏側に気付く事が出来ても、犯人の……いや事件を起こした米山本人の目的が分からない以上は結論に達しないのが否めない。彼の事をよく知る人物、つまりパートナーである桜雪さんはこの事件について何か知っているのではないか。もしくは彼の妙な言動や、彼を見掛けなかった時間帯などが分かれば色々見えてくるものもある」
桜雪「彼と最後に会ったのは昨日の夜よ。それから彼が何をしていたのか私には分からない。翌日の朝になって彼の部屋に訪れたら部屋が荒れてて音楽が流れてて、部屋の真ん中で死んでいた」
路瓶「倉庫から取って来た音楽プレイヤーは起動されたままだったな。あれは米山が持って来た物なのかね?」
桜雪「え、ええそうよ。そうよって言うか音楽プレイヤーについても私は何も知らないわ」
路瓶「では君が直接倉庫へ行った事はないという訳だね?」
桜雪「倉庫、どうだったかしら。一回だけどんな物があるのか覗きに行った事はあったかもしれないわね」
路瓶「なら〝鍵の閉まった倉庫の開け方〟を君は知っているという事で宜しいかい?」
桜雪「え、鍵? えっとどうだったかしらね、米山が開けてたからよく分からないわ」
路瓶「ならば米山と貴方は2人一緒に倉庫へ行ったのかね。その際に彼が倉庫の室内で見つけた音楽プレイヤーを持って行っていたのではないのかな?」
桜雪「そんなもの、私の知らないところで米山が再度倉庫に行って取って来たとも考えられるじゃないの。貴方さっきから何が言いたいの」
路瓶「桜雪さん、この場で嘘をついてはいけませんな。貴方は先程からずっと嘘の証言を並べて仰られている」
桜雪「…………」
電田「おいこら路瓶のおっさん。そんなに桜雪ちゃんを責めないでやってくれよ。彼女は何らかの事情を抱えて米山をかばっているだけなのかもしれないだろ」
路瓶「何らかの事情? 何らかの事情とは何だ。米山が本物の死体に扮しているのがバレないよう嘘を付いているという訳かな?」
電田「いい加減にしろ!」
※ タイムストップ
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速攻クエッションの回答「植物枠」
白熱する議論が繰り広げられる中で路瓶の疑いの目が桜雪に向けられる。それもその筈、恐らく桜雪は序盤からずっと嘘の証言を繰り返している。仮にもプロの探偵の目は誤魔化せないという事か。
そして夏男も今回の事件について、1つの疑惑が確信へと変わる。
路瓶の質問に対して答える桜雪の仕草や話し方の焦り具合、その発言の曖昧さから見て、夏男も路瓶と全く同じ答えに辿り着く。
けれどもどうした事か。夏男の中で引っ掛かる枠ミッションの内容と、それを知るのは切札枠のみ。切札枠は夏男のただ1人である事から、早いところ真実を詰めるべきだというのに。
いや、そうではない。説明したくともそれが出来ないのだ。何故なら彼を含めた議論に参加するプレイヤーは皆、裁判枠であるとCoしている。
裁判枠である事を前提にこの裁きの議論に参加する権利を与えられる。つまりこの議論において、裁判枠以外の枠Coはルール違反で裁判室退場を意味する。
「俺が切札枠である事、そして植物枠が存在する事を皆に伝えたら、自ら裁判枠ではないと認めた事になる。まだ2つも事件を残しているのにここで退場する訳にはいかない」
夏男は残り2つの事件の真相に近い推理をまとめている。彼が退場してしまえば、恐らくは残りの事件を解決する事が出来ず、誤った人物に投票して処刑してしまうただの殺人が起きてしまう。
よって夏男から事件の真相を語る訳にもいかず、他の方法で言い包めて米山が生きていると証明しなくてはならない。
しかしそれで本当に良いのか。米山が生きていた事が発覚してしまえば彼は〝ミッション失敗〟で幕をとじる事になるが、そうなるとどうなる?
ゲームオーバーになる条件
30日経っても脱出出来なかった場合。ミッションに失敗した場合。脱出ルートで死亡した場合。就寝時間の外出等ルール違反を犯した場合。
ゲームオーバーになればバツシマスを受ける処刑人に決定される。ここで米山が生きていた事が発覚してしまえば、ミッション達成のために行動しただけの罪のない彼がバツシマスによって処刑されてしまうのだ。
「ふざけんなよ、俺はどうすれば良いんだ」
互いに意見をぶつけ合う討論が弾ける中、1人頭を抱えてしまう夏男。事件の真相が発覚しようがしなかろうが、どちらにせよこの事件をきっかけに全員が無事に脱出する未来の突破口が見えなくなる状況。
それでも議論は止まる事なく進められていく。
※ 議 論 開 始
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米山恵斗殺人事件
リアルディベートⅥ
青葉「殺した人物がいない今、この議論の本来の結末を避けねばならない。確かこの裁判は参加者全員が処刑人を決定する投票を必ずしなければいけないルールではなかった筈だ」
チュリ『いいやそれは違うよ。モレクの裁きで議論に参加して貰ったからには参加者全員が全ての事件に1票ずつ投票をしなくてはならないルールだ。投票するしないを選択出来るのは議論に参加しない傍観プレイヤーだけネ』
電田「おいクソ人形。今更出てきてどういうつもりだ。ずっとお前を呼んでもちっとも出て来なかったじゃないか。話を聞いていたのなら私の質問に答えろ!」
チュリ『いやー退屈だからちょっと覗いてみたんだけどさー、なーんか全然投票する雰囲気じゃないからがっかりしたー。もうさっさと投票しちゃいなよーユー』
鎌倉「何処からあたし達を監視して喋っているのか知らないけれど、人形でも何でも良いから姿を見せたらいかが?」
チュリ『ムカッ。それが出来ないからイライラしてるんだよこの空気読めないブタカマが!』
鎌倉「ブタ?……んだとごらおい……ブブブブッチーーンッ!」
チュリ『とにかく早く結論を出して貰わないとチュリも傍観者達も退屈しちゃうから早くしてね。そうだ、制限時間を加えちゃおう』
路瓶「制限時間などなくともこちらはもう結論が出ている。この殺人事件は偽造事件だ。米山はダレにも殺されてなどいない!」
チュリ『え……生きてるって?』
桜雪「ぞうさん。あんたもゲームマスターの前に1人のプレイヤーなんだからルールに従いなさいよ。議論の途中参加は認められないんだから、あんたが割って入るのは違反でなくて?」
チュリ『黒幕枠だから無効ビシーン!』
夏男「ちょっと待ってくれ。米山が生きているという証拠がまだ不自由分過ぎる。路瓶さんも早とちりするような真似はしないでくれ」
路瓶「夏男君?」
夏男「すまない路瓶さん。あんたを疑っている訳ではないがそれは桜雪さんに対しても同じ事が言える。どちらの発言も信憑性に欠ける部分があるから、もう少し時間を掛けて2人の話を聞いて判断したい。制限時間とかふざけたルールの追加は認めない」
チュリ『路瓶孫は米山が生きていると思っているのかな?』
路瓶「ああ。そこにいらっしゃる青葉先生も同意見だ。彼は間違いなく生きている」
夏男「おいチュリぞう、良いからお前は議論に入ってくるなよ」
チュリ『間違いない?』
青葉「ああ。彼が生きているのを私も確認している」
夏男「だから話に参加するな、早く失せろ人形!」
電田「何をそんなに焦っている冬男」
※ 議 論 中 断
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建物中から緊急アナウンスが流れる。報告される内容は最悪な結末。
〝プレイヤーミッション失敗確定を報告。被験者ナンバー13米山恵斗1名が本日午後6時25分に植物枠ミッションに失敗確定しました。これに伴いナンバー13をバツシマスの対象と決定し、公開処刑を行います。処刑対象者は速やかにレッドルームにお越しください〟
〝繰り返します。プレイヤーミッション失敗確定を報告。被験者ナンバー13米山恵斗1名が本日午後6時25分に植物枠ミッションに失敗確定しました。これに伴いナンバー13をバツシマスの対象と決定し、公開処刑を行います。処刑対象者は速やかにレッドルームにお越しください〟
アナウンスが切れてからチュリぞうが一言。
『ゲームオーバー』
何が起きたのか分からないで辺りを見回している議論参加者達。その中に居る夏男が天に向かって悲しみの訴えを叫び、チュリぞうに反論する。
「ふざけるな、俺達はまだ米山が生きていると結論を出した覚えはないぞ。おいチュリぞう、ちょっと待ちやがれ。そんで路瓶のおっさんはさっさと発言を訂正しやがれ、今ならまだ見過ごしてくれるかもしれない早くしろ!」
「何事だ。ミッション失敗とは何の話だ。私が発言を訂正? 夏男君なぜだ?」
路瓶の元へ駆け寄り胸倉を掴んで彼の身体ごと持ち上げる怒りと悲しみに満ちた夏男。
「良いからさっさと俺の言うとおりにしろ」
「ば、ばなぜ苦じい」
アナウンスで報告されたからには黒幕サイドが引く訳もなく、結果が覆る訳もなく夏男の訴えは無視されてしまう。
黒幕サイドは処刑が確定した米山を捕獲すべく建物内探索に取り掛かる。床に手をついて泣き崩れている夏男。何が起きたのが理解が追いつかない他のプレイヤー達。
「何故だ、何故迷った。もっと早く手を打っていれば米山の処刑を止められたのかもしれなかったのに。俺にしか止められなかった筈だ。なのにどうして俺はッ!」
自分が慎重な余りにこの事態を止める前に手を打たれてしまった最悪な結果に、悔いては涙を流して床をグーで叩きつける夏男。
路瓶が夏男に寄る。
「話してくれ。これは一体何事なのだ。君は何を知っていたのだ?」
言えない。真実を言えば即ここから追い出される。
「どうして米山がミッションに失敗して処刑されなければならない。それと私の発言に何か関係があるのかね。答えなさい夏男君!」
泣き崩れる夏男を見かねた路瓶が夏男を無理矢理起こしてみせる。
「しっかりしなさい夏男君、君の知っている事を全て話すんだ!」
「言えない」
「今のアナウンスはどういう事なんだ。米山は生きていたんだろう。彼が処刑されるって何の話だ」
「話したくても話せないんだよ畜生!」
路瓶の顔面を一発殴って吹き飛ばした夏男。右手で涙を拭って真っ赤になった目をプレイヤー達に見せて立つ夏男が一言。
「こんな俺を軽蔑するか?」
止まらぬ涙を流しては拭って他のプレイヤー達を睨み付ける夏男。対するプレイヤー達はこの状況の理解に遅れ、夏男に妙な不信感を抱く。夏男が何かを止めようとした先程の行動から見て、この事件の内情を知る人物であるのは間違いない。
その上、何も語らず言葉を抑えて泣き出した夏男に同情するなど出来る筈もなく、ただただ不信な行動と捉えられてしまう。
米山は植物枠という枠ミッションを達成すべく死んだフリをしていた。それに気付けるのは、ミッション内容を知る権利を与えられた切札枠と、ミッション内容を知る黒幕サイドのみ。
もっと言えば此処に居るプレイヤーは自分の枠以外のミッション内容を知らない。よって、切札枠の能力を知る術もないので、Coして全てを話さなければ分かって貰えない。
上手い事モレクの裁きに追加されているルールの落とし穴に落ちてしまった夏男。彼が切札枠である事を伝えなければ植物枠についての説明も証明も出来ない。
しかし切札枠である事をCoしてしまえば裁判室から追放され、残りの事件解決を捨てなければならなかった。
残り2件の事件を残してでも米山を救う道もあったろう。しかしそれでは残りの死人をどう処理出来たか。結果的に頭を悩ませているうちに黒幕サイドに先手を打たれて米山の処刑が確定してしまう。
悔しい。まるで米山を見殺しにした気持ちにさせられる夏男。
自分を責めては悔いて涙を流して終いには精神が崩壊する。その間に米山を捕獲しようと動き出している黒幕サイドの連中。
建物内を数人のピエロ仮面が走り回って米山の行方を追う。ピエロ仮面それぞれがバズーカ型ロケットランチャーを背中に背負って探索している。
一方その頃。議論の行方を見守る傍観室にて、不信な動きを見せる男が1人。
不信な男とは苗字を明かさない未来の事。ダレかと繋がっている〝通信機〟を右手に持ち、小声で通信相手の男と会話をしている。
「特等席が襲われている?」
「ああ。お前も早く来い」
「何を言っているのさ。僕は貴方に協力するつもりはないよ」
通信機の相手はどこか聞き覚えのある男の声。周りで爆発音が響いて聞こえ、特等席がただ事でないのが分かる。しかしその男の誘いをキッパリ断る未来。鼻で笑った相手の男が次の一言で思わぬ提案をして未来を惑わせる。
「今こそお前が殺したいと願い続けてきた〝兄貴〟を殺す時だ」
「え」
「黙って俺に従え。そうすれば〝勇気の首〟は好きにして良い」
男の誘惑を受け入れようと言わんばかりに未来の死んだ目から光が満ちる。
通信機を強く握り締める右手が小刻みに震えて手汗が吹き出る。一瞬ではあるが微笑を見せてから傍観室を後にする未来。
そんな彼の不信な動きを黙って見ていた熊田の表情が険しくなる。
裁判室は静まり返っていた。たった今米山の身に何が起きたのか分かっていないプレイヤーが多数。次なる魔の手を差し伸べようとチュリぞうが音声でプレイヤーに指示を出す。
『同士が1人いなくなっちゃうのは寂しいものだよねー。うんうん分かるよその気持ちー。でもでもでもでもー此処でずーっと泣いててもしょうがないんだしさ、もう決まった事なんだから負け犬みたいにキャンキャンキャンキャン鳴いても時間の無駄なんだー。という事で〝第2ラウンド〟逝っちゃおう!』
精神が崩壊した夏男が静かに立ち上がり、チュリぞうを睨み付ける。
「俺が黙って米山を殺させると思うか、ん?」
『は?』
「どうしても米山を殺すって言うのなら、次の議論はお前に投票して片を付けてやる。もう無差別だろうが何だろうが関係ない。ここでお前を殺さないと不幸の連鎖は止まらない」
『ふーん。でもどうだろうね。プレイヤーの中に殺人者がいるかもしれないのに、そいつを逃してしまえばオ前の言う不幸の連鎖が止まるとは到底思えないんだけどねー』
「関係ない。俺はお前を許す訳にはいかない」
初っ端から黒幕サイドにしてやられた夏男の崩壊っぷりを見ているプレイヤー達の不安が募る。この最悪な流れから、先の見えない危険な未来を予感させるモレクの裁き第2ラウンド。
このままでは事件解決を目的とした趣旨とはズレた殺人議論が展開されてしまう。既に冷静さと理性を失った2つの事件の真相に一番近い男、夏男を中心に乱れた空気で〝第2のディベート〟が始まる。
次に議論する事件は、謎に満ちた事件として不意に死体発見報告された〝堂島快跳殺人事件〟
悲しみと怒りと真実と正義が入り混じった夏男は、この難解な事件をどう運んでいくつもりであろうか。
そして、ミッション失敗によってゲームオーバーになってしまった米山恵斗は、これからバツシマスで処刑されてしまうのだろうか……
3/3へつづく→
※後書き・訂正報告
前話、第五十七話1/3にて最後の方で再度紹介された枠ミッションの種類が全部で〝7種類〟と紹介されてましたが、正しくは〝8種類〟です。脱字御免!




