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コロシタノダレ ~黒幕の脅威と地下学園脱出~  作者: まつだんご
―エピソードⅥ― 「島村姫と罰シマス」
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第五十一話 『 時は満ちた 』


  死体発見報告!


 『ぴんぽんぱんぽーん。プレイヤーの死体が発見されました。詳細はペル手帳に送られてくるメールを確認して下さい。繰り返します。プレイヤーの死体が発見されました。詳細はペル手帳に送られてくるメールを確認して下さい』


 アナウンスを聞いた夏男を初めとした6人のプレイヤーは急いでペル電子手帳を手に取り、死体発見通知を確認する。


 死体発見アナウンスが終わった直後に送られてくる黒幕からの死体発見通知メール。メールに書かれた内容は以下のとおり。


 プレイヤーの死体が発見されました

 死体発見時刻はゲーム開始6日目・10時28分

 被害者は被験者ナンバー13米山よねやま恵斗けいと

 死体発見者は舞園まいぞの桜雪さゆき1名

 死体発見場所はフレームデッドエリア・米山恵斗マイルーム

 以上!


 P.S.

 ゲームパートナー決定報告の最終期限はゲーム開始4日目の24時で締め切ったよ。エスケープルート参加プレイヤーは申請出来ない仕様なので特別に……本日中にパートナーを決定してチュリに申請してくれ。くれぐれも期限を過ぎないように。特別だけどあんまり調子に乗るんじゃないよ!


「米山さんって参加プレイヤーなんだろう。どうしてまた殺人が起きてんだ!」


 死体通知を受けた電田が悔しがっている。どうやら此処にいる6人はみな米山恵斗という人物を知らないようだ。本編でさえ一度も登場していない米山という男がこのタイミングで死体と化す。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 米山ヨネヤマ 恵斗ケイト(18)

 男性 身長178cm 体重161kg

 初紹介にして舞園桜雪に死体で発見される

 【踊れるデブーン】の異名をもつダンサー

 他にも歌が上手いと周りの評判は高い

 好きな食べ物はマヨコーンピザとピーチグミ

 13人目の被験者(初紹介)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「とにかく早く此処から出よう。ゲームの様子が気になる」


 不思議な事に、夏男らが引き返している道中には魔獣らしき生き物と一度も出くわさないでいた。釈快晴が檻の中へ魔獣を全て回収しているのか?


 それにしても踊れるデブーン米山の死体は、彼のマイホームにて舞園桜雪に発見されたようだが、死亡原因はプレイヤーのダレかによる殺害なのだろうか。メールに書かれた以外の詳細が一切分からない状況。


 場面移動

――――――――――――――――――――――――――――

 フレームデッドゲーム・エリア1F米山恵斗の部屋入り口


 米山恵斗の部屋入り口前にて。開いたままのドアとそこに座り込み、無表情で涙を流している1人の女。彼女の名前は舞園桜雪。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 舞園マイゾノ 桜雪サユキ(16)

 女性 身長156cm 体重41kg

 右手中指と小指に黒いテーピング着用

 どこか上から目線でプライドが高い

 その他にも前髪の形を過激にこだわる

 舞園創と同じ苗字であるが詳細は不明

 4人目の被験者(第十八話初登場)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 人の死体を間近で見たショックで腰が抜けてしまっているようだ。流れる涙と表情のない顔で米山恵斗の部屋を見つめる桜雪。


 すると、死体発見通知を見て駆けつけた他のプレイヤーらが廊下の奥から桜雪の名前を呼ぶ。そして米山の部屋の前まで来たところで入り口が開いたままになっているので中を覗いてみる。


 米山の死体を確認しては1人、また1人と悲鳴をあげてから部屋を離れて走り去ってしまう。その中で1人の男が桜雪の肩に手を置いて質問してくる。その男の名は前作で何度か登場した一匹狼探偵の路瓶ろびんそんだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 重要人物 路瓶ロビン ソン(42)

 男性 身長180cm 体重69kg

 〝真実こそが正義〟がモットー

 有馬駅連続殺人事件で息子が被害に遭い死亡

 前作で人質にされていた亀谷妙子を救出する

 茶色のコートと帽子を被った正義の探偵

 16人目の被験者(第九話初登場)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「君、大丈夫かね。此処で何があった?」


「分からないわ」


 米山の室内には彼が先程まで聴いていたであろう音楽が流れている。室内に置いてある音楽プレイヤーから流れているようだが、その音楽プレイヤーに貼られたシールには〝倉庫品〟と書かれている。


 死体を発見しては逃げ出すプレイヤー達に対して慣れた手つきで捜査を始める路瓶孫。桜雪は入り口付近の壁によたれかかって座っている。


 まずは死体の状態を確認する路瓶孫。そこで米山の死体の異変に気付く事になる。


「これは……」


 すると背後から別のプレイヤー数人が入室して来るや否や、米山の死体を捜査する路瓶に話し掛ける。


「米山恵斗、米山恵斗っと。ありましたね、ロビンさんこれを見て下さい。確かにペル電子手帳のプレイヤー名簿に更新されております。つまり彼はもう……」


「そうか、やはり密かに更新されるか。死んだ者はプレイヤー名簿のプロフィールに載るシステムのようだな。彼宛てにペル何とかとやらでメールを送ってみてくれ」


 計3名のプレイヤーが入室して来た。その人物らの名は青葉博文、高橋未来、そして椎名葵の3名だ。


「あ、葵ちゃんは中を見ない方が良いかもしれ……」


「ばびぶべぼぼぼぼぼ……」

 泡を吹いて聞き取れない言動を連呼している葵は無残な死体を発見したショックにより気絶してしまう。高橋の忠告すでに遅し。


 青葉は、気絶してしまった椎名を高橋に任せて路瓶孫と2人で米山殺しの捜査を開始する。気が付けば舞園桜雪の姿がどこにも見当たらない。


 耳障りに思う米山の部屋に流れる音楽を止めると、妙に緊張感のある気味の悪い一室へと空気感が変貌する。


 〝ピロロロロロ〟


 米山の所持していたペル電子手帳に送ったメールの受信音だ。夏男は気付いていないかもしれないが、この電子手帳ペルの隠れた機能として、プレイヤー名簿に情報交換や死体更新として登録されたプレイヤーとメールのやり取りが出来るようだ。


「米山の電子手帳が見つかりました」


 捜査を始めてから30分の時間が経過した頃。開けっ放しになっていた室内に〝大きな人影〟が2人の目に映る。すぐに振り返って入り口を見てみると、そこに立っていたのは巨体〝熊田威之助〟こと〝くまお〟だ。


「驚かせないでくれ、熊田君。見ての通り、最悪の事態が起きてしまった」


 黙ってじっとこちらを見つめているくまお。


「何としても犯人を捕まえなくては。殺人者を野放しにする訳にはいかない」


 路瓶が犯人を捕まえると言ってから目線を米山の死体へ戻す。少しの沈黙が流れた後、静かに口を開いてその場を後にするくまお。


「お前らが米山を殺していないとは限らない。証拠を隠滅するような行動は俺が許さない」


「何だと!?」


「2人とも表へ出ろ。死体捜査の前にするべき事がある」


 くまおの鋭い目つきが路瓶らを威嚇する。表情に一切の変化がなく、上から見下ろすような冷酷なその目から見えてくる路瓶と青葉に対する米山殺しの疑い。確かにこの男の言い分は正しい。路瓶と青葉が米山を殺した犯人であるならば証拠を隠滅する事が可能だ。


「どうするつもりだね、熊田君」


「プレイヤー全員をホールに集めるんだ。まずはプレイヤー全員の情報を収集し、総合して満たされる条件を適合させる。死体の捜査はそれからにして貰おう」


 くまおの目に一切の光がない。此処に集まる全ての人間を敵と見ているのか、プレイヤーを見る際の彼の目は生きたまま死んでいるよう。彼の行動に一切の隙がない。


 場面移動

―――――――――――――――――――――――――――

 エスケープルート・ブラックゾーン道中


 5日前に通った武器庫・ブラックルームのあるエリア、ブラックゾーン道中にて。


 どういう訳か魔獣エリアに出現する筈の魔獣と一回も遭遇しないで此処まで引き返して来れたよう。やはり釈快晴が魔獣を檻へ戻したのだろうか。


 そんな状況下の中で、例のトラップルーム入り口のロックが解除された仕組みについて語るのは山本カルロス。


 山本以外の5人のプレイヤーはエスケープルート内を走り回って息切れ状態なのにも関わらず、全くへっちゃらだと言わんばかりの様子で走行ペースが落ちない山本。


 人間体力には限りがあるというもの。急ぐべき状況とは言え、無理をしていては解決出来る問題も解決出来ない場合がある。よって少しの間、歩きながら引き返す事にした。その間に山本が語るトラップルームの一件。


 会話は電田の質問から始まる。


「って事は釈快晴っていう男は最初から5日後に私達をトラップルームから解放するつもりだったという事か?」


「うむ」


「なるほどな」


「あのままアンタら5人を開かずの間に監禁し続け、銃撃されたそこの姉ちゃんが死んだ場合を想定すれば分かるこたぁ」


 篠原すみれを見る山本カルロス。


「姉ちゃんは釈快晴の銃撃によって出血しているのは紛れもない事実。そして開かずの間にて姉ちゃんが餓死する前に出血多量で死んだとなると何が起きるでしょう」


 神埼夏男が推理をしてから返答する。


「残された俺ら4人が篠原すみれの死体をトラップルームで発見したと死体発見通知アナウンスが流れる」


「そういう事でぇそんな時にカルサが開かずの間の入り口前で待機していたら相手方はどう思うのでしょうねぇ」


「篠原すみれを殺した犯人が釈快晴であるのが事実な訳だから、殺人を犯した証拠が残された部屋の前に予想外のプレイヤー、つまりおっさんが待機している事から釈が犯人であるという事がおっさんにバレてしまい、結果ゲームのルールに従い発動する罰を恐れた?」


「御名答」


 釈快晴は最初から5人を殺す目的で開かずの間に閉じ込めた訳ではなかった。餓死する前に釈快晴の銃撃による大量出血によって篠原すみれが死亡しては、困るのは閉じ込めた張本人の釈という事になる。


 開かずの間付近で見つかった篠原の血痕や、緊急銃撃用にセットしておいたピストルを見つける事によって監視者が釈快晴とまでは分からないにしろ、このステージを監視する何者かの仕業だという事が分かるという事だ。


「妙に怪しい一室がありやしたんでぇ。アンタらの監禁されたトラップルームでやす。そこには他の場所に比べて余分に監視カメラが設置されておりやした。つまり監視すべき重要な鍵となる空間である事は間違いないと判断出来やす」


 山本の顔を見ていると火傷跡に目移りしてしまいがちであるが、彼の目をじっと見ていると一瞬ピカリと光ったように見えた。


「監視者の落度に高を括って5日間待機しやした」


「そこまで先を読んでいたのか。何ていうかおっさん、あんたすげーな……」


 夏男が山本の鋭い状況判断に関心している。しかしここで山本が意味深な発言をする。


「カルサは過去に嫌というほど死に対する人の恐怖や絶望、その果てに必ず現れる悲しみに満ちた〝亡声〟を聞いてきやした。アンタらの声が密閉された場所で外部に漏れなくとも、その悲しみを感じ取る事さえ出来れば見えてくるものもあるんでぇ」


 そこで夏男の方に視線を合わせるカルロス。夏男を見つめる彼の表情は真剣だ。


「本当に神崎殿を信用して良いのでしょうな」


「ああ。だが山本のおっさん、分かってるな?」


 此処を出た後の計画について、今は何も語ってはいけないと小声で呟く夏男。山本の〝異質な聴覚〟が夏男のメッセージを聞き取る。エスケープルート入り口まで目前の所に迫って来ているが、夏男は此処を出て何をしようというのだ?


 ここで場面は移動する。全ての会話を聞いているであろう人物の不気味な微笑みが聞こえてきたような気がした。


 場面移動

―――――――――――――――――――――――――――

 エスケープルート・春子の部屋(特等席)


 薄暗い室内に幾つも置かれた監視カメラに繋がるモニターの明かりに照らされて、微かに映る釈快晴の微笑んだ表情。右手に1枚の書類を持ってそれに目を通している。


 その書類には山本カルロスのプロフィールが書かれていた。


「元軍人の山本カルロスか。何処かで見た面かと思えば……とある戦争にて、守るべき王下一族に引き金を引いた飛んだ糞野郎じゃねぇかンフフフ」


 目線を6人が映し出されるモニターへ移す。


「通りで簡単に全エリアを突破をされた訳だ。思い返せば戦闘中の奴には抜け目がなかった。なぁ〝チュリ〟よ」


「ニヒッ」


「しかしオ・レ・が・こんな男を野放しにすると思うかチュリよ。どうだいチュリよこの状況。お前は今日というこの1日をどう思う、んん?」


『舞園と堂島も到着したようだし、何かこれから滅茶苦茶ヤバイ事件が起きる予感でワクがムネムネ!』


「違うぞチュリよ。胸がワクワクだ。それにしてもせっかく〝本体〟がすぐ傍に居るというのにわざわざ人形で喋る必要もないだろう」


『い、良いのだ良いのだ。チュリはいつまでもチュリってる感じが一番落ち着くのだ。そこには触れないでやってくれ!』


 チュリぞうと話をしているようだが暗くてよく見えない。それにしてもチュリぞうの本体とは一体。


 釈快晴が話を続ける。


「舞園と堂島は校庭まで到着した。虎野郎も楽々釣れた。エスケープメンバーも内部の連中と合流が出来そうだ。ついでにお釣りで死体が新たに発見された。6日目にして時は満ちた」


 薄暗くてよく見えないが、釈快晴の「時は満ちた」発言に対して人形チュリぞうが汗を流して〝ドキッ〟としている反応を見せる。ゲーム開始6日目にして釈快晴が次の指令を出す。


「本日午後18時までにレッドルームより〝モレクのいしち〟を用意しろ。きっと連中は……代償を払ってでも喜んで飛び付くだろうさンフフフ」


 モレクの石打ちとは一体!?


 場面移動

――――――――――――――――――――――――――――

 エスケープルート・入り口の扉前


 ついに入り口まで辿り着いたエスケープルートの参加者一行。そしてびくともしない開かずの扉の前で全員が立ち止まっているところをカルロスが一言。


「それでは電田殿。アンタの持つダミーアイテム〝マスターキー〟で扉を開けて貰いやしょう」


「本当にこの鍵で開くんだろうな……」


 電田がブラックルームでプレイヤーポイントを消費して手に入れたアイテムは、秘密の部屋を開けるアイテムと紹介されたマスターキーだ。山本カルロスの予想が的中していれば見事に此処から抜け出せる。抜け出せると言っても初日の振り出しに戻るだけであるが、今の状況よりはマシだろう。


「開けるぞみんな」


 電田の言葉に対してプレイヤー全員が頷く。そして入り口の扉にある鍵穴にマスターキーを差し込ませてそれを回す。すると〝カチャッ〟とロックが解除されたような音が聞こえてきた。


 思い切り入り口の扉を押してみると、それが口を開き始めたのだ。つまりエスケープルートから抜け出せた!?


 〝ギギギギギギ〟


 扉の開く重たい音が周囲全体に鳴り響く。その先に見えるのは微かな希望の光と、絶望に満ちたデスゲームへと続く此処にやって来る際に下りたハシゴが1台と、不気味に微笑む苗字を明かさない未来が1人。


 って、あれ未来!?


「やぁ君達。遅かったじゃないか。僕はもう待ちくたびれたよ」


 満面な笑顔を見せてこちらに「遅かったじゃないか」と発言する未来。何をどうしてエスケープルートから抜け出したのか知らないが、彼は一足お先に怪我もなく脱出していたようだ。涙の再会を果たした瞬間なのにも関わらず、余裕の表情を見せて気力が抜けた風に現れた未来に激怒する夏男。


「お前、何が待ちくたびれただ。何なんだよその余裕!」


「ほーら神崎君。モタモタしている時間はないんじゃないかな。また1人プレイヤーが殺されちゃったって報告あったでしょ。涙の再会も悪くはないけど今は早く見に行ってあげないと、ね?」


 言葉が見つからない……



 ※後書き・報告

 幾つかの脱字誤字や方針変更による修正を報告致します。


 ・プレイヤー名簿の一部ミス(7~12人目表記のズレ)

 ・椎名葵が再登場した際の紹介にて男性と書かれていた→女性

 ・バツシマスの内容公開→罰の話が展開されるまで非公開

 ・山本カルロスの唱える魔法(一部修正)

 ・明らかな脱字の細かい修正→24ヶ所

 ・舞園創と堂島和雄が第2部で登場したにも関わらず紹介されていない→作者の意図

 ・挿絵の落書きページをクリックすると〝黒幕のラクガキ〟とは別に隠れたネタバレ画が見れる→申し訳ありません非公開設定致しました

 ・ドン釈が一ヶ所だけひらがなになっていた→意味はありません脱字です

 ・青田向日葵の体重→非公開は作者の意図

 ・重要人物以外の人物名簿一覧の一部に誤った名前有り→修正済み

 ・ヒント百のコーナー→前作完結と同時に終了しております


 皆さんにお伝えする機会がなかったので、どうしてもお伝えしたい修正部分と再度確認の報告をさせていただきました。


 次回は主人公神崎夏男の脱出ルート出戻りによって、デッドゲームサイドのお話が核となります。

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