ベルリン 燃える
「乗客の皆様に申し上げます。当機はまもなく離陸いたします。シートベルトをお締めください」
つかのまの平和を取り戻したヨーロッパ。
その南東に位置する小さな国。シリアからドイツ国営航空会社の大型旅客機Me2238号機が、今ベルリンに向かって飛び立とうとしていた。
ここ中東一帯は大日本帝国の統治する石油の一大産地である。
また、そこにはドイツ第三帝国からの虐待から逃げてきた多くのユダヤ人が住んでいた。
今は平和な暮らしを送っているが、誰しもがドイツに対する憎しみの炎を胸に秘めていた。
高度一万メートル。 大戦中は爆撃機の飛行高度として血に染まった空域が、今は多くの民間人を乗せた飛行機の飛ぶ空域となっている。
「お客様、お飲み物はどうされますか?」
笑顔の客室乗務員が乗客に対応する。
その時
「飲み物はいい。 コックピットに連れていけ」
背後から男の声がした。
「お客さま、危険ですのでお席に・・・」
後頭部に冷たい感触。
「二度は言わない。早くしろ」
気づいた乗客が悲鳴を上げるが、その乗客に拳銃が向けられると、悲鳴はピタリとやんだ。
コックピットに案内された男はそのまま機長と副操縦士を射殺。
そのまま操縦桿を握った。
「ベルリン空港より8号機、着陸許可は下りていない。高度を上げろ!」
空港からの警告を無視して高度を下げる。
眼下に広がるのは高層ビルの立ち並ぶ第三帝国の首都、ベルリンだ。
「8号機、そちらは飛行禁止区域だ、進路を変えろ!撃墜されるぞ!!」
飛行禁止区域に侵入したとたん、近くの空軍基地に緊急発進が下命され、戦闘機が対応に向かった。
しかし、遅すぎた。
そのまま帝国議会に向け急降下。
火柱が立ち上がり、多くの議員と市民が死傷した。
数時間後、シリアを拠点とする武装勢力「ユダヤの牙」が犯行声明を発表。
大戦の罪を思い出せ。報復は終わらない。
と語った。
ドイツはすぐに報復を発表。
地中海に展開する空母打撃群と機甲連隊、歩兵師団をシリアに派兵。
すぐにテロリストたちとの戦闘状態に入った。
しかし自分の統治場所を戦場にされた大日本帝国は撤退を要請。
しかし、どちらも応じる気配はない。
遂にドイツ軍は帝国陸軍の管理する油田地帯へのミサイル攻撃を開始した。
「対空戦闘用意!目標、敵対地ミサイル!!」
油田の警備を命じられた日本陸軍の歩兵中隊と高射連隊が対応を開始した。
撃ち漏らした一発が油田に着弾。
あたりは炎に包まれ、多くの兵士が死傷した。
「やむを得ん、こうなったらミサイルの元を断つ!!」
警備の部隊は、誘導弾でドイツ軍のミサイル部隊を攻撃。
ふいを突かれたドイツ軍は一時的に撤退。
しかし、すぐに戦車部隊を主力とする大部隊で攻撃を開始した。
空母打撃群からの航空支援も相まって警備の部隊は壊滅。
大日本帝国はこの事態に対し、スエズ運河に展開する空母「加賀」と「赤城」を主力とする空母打撃群の派遣を決定した。
決戦の場は東地中海だ。
日独の局地戦か、全面戦争か・・・!?




