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皇国最期の反撃作戦  作者: パイン
対連合国戦線
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鉄のカーテン 迎撃

「すごい数だ!空が真っ黒だぞ!!」


無線誘導弾による攻撃の後、敵の戦闘機隊が襲ってきた。


P51マスタングやF8Fベアキャットなどは想定内だったが、ここ数年ぱったり見なくなったF4FやF4Uコルセアなども混ざっていた。


このような旧式機は紫電や景雲の敵ではなかった。


しかしやはり数が多すぎる。背後についたと思っても別の機が自分の後方でこちらを狙っているのだ。


また、気を抜くと上空で待機しているP38が急降下して攻撃してくる。


一撃離脱に徹されると、こちらも思うように攻撃できない。


迎撃をすり抜けた戦闘機が地上部隊に機銃掃射を繰り返す。


破壊された滑走路上では決死の消火・復旧作業と並行して対空車両が走り回り絶えず攻撃を防いでいた。


飛行場は爆炎と硝煙の臭いに包まれ、作業は難航していた。


火を消そうとホースを伸ばしてもそこを狙って敵機が攻撃してくるのだ。


戦いが長引くと、滑走路上にもトラックの残骸や機関砲にバラバラにされた兵士の死体が散乱するようになった。


近接信管のついた対空砲弾も対空砲が次々と破壊されたため撃ちあげられることもなく、燃える飛行場を守るすべはもう無かった。


敵機の襲来から30分。迎撃機の3割が堕とされた頃、希望が見えた。


「電探に感あり!沖合から高速で接近する機影、およそ200!」


西海岸に投錨していた空母艦隊から緊急発進した戦闘機隊がやってきたのだ。


艦隊も少なからず損害を負ったが、残った空母から次々に戦闘機が発進。


熟練パイロットにかかればアメリカの戦闘機など敵ではなかった。


新鋭機と呼ばれていたF8FやH型マスタングもほぼ全滅。残された戦闘機も撤退、あるいは撃墜されもう戦える機体はなかった。


飛行場が破壊されたため、航空機はすべてギリギリまで接近していた「信濃」や「甲斐」をはじめとする空母に収容された。


これにて敵の戦闘機は壊滅した。だが、アメリカの本命の攻撃は爆撃機によるものだった。


それらの接近を、かろうじて稼働している飛行場の電探が探知した。


「『信濃』に連絡!敵爆撃機が二編隊に別れ接近中。一隊は高度5000で低速侵入。もう一隊は高度10000で高速接近中!!」


低速侵入してきた部隊はTBFなどの軽爆撃機やカタリナ飛行艇のような旧式機がおよそ700機。


高高度で侵入してきた部隊はB-17フライングフォートレスやB-29スーパーフォートレス、B-33フライングビーストの大型爆撃機だ。その数およそ1000。


軽爆撃機の編隊は対空砲火での撃墜が可能だが、大型爆撃機ともなるとそうはいかない。


戦闘機隊による迎撃でなければ撃墜は困難だ。


幸い空母には大型爆撃機撃墜用の新兵器が搭載されていた。


「ロ号噴進弾」とよばれるこの兵器は、射程距離2キロのロケット弾だ。


敵の対空砲火圏外から爆撃機を撃墜するために戦闘機が発射。その後時限信管か近接信管で作動する。


直撃は困難でも、その爆発と破片で敵の爆撃機を飛行不能にさせるには十分だ。


ー迎撃隊 中岡少尉機 景雲ー


「エンジン始動、発艦する!」


甲板の厚い装甲のおかげでジェット機の発艦が可能な大和型空母から次々に戦闘機が発艦する。


翼下には例のロケット弾が装備されている。


「中岡より各機、高度11000で水平飛行に移行、ロケットの信管作動距離である2,5キロで一斉に射出せよ」


ロケット弾の攻撃で最も大切なのは弾幕だ。


一か所にどれだけ弾を集中させることができるかが勝利のカギとなる。


「予定高度到達。全機密集体系、ロケット弾発射用意!」


コックピットの双眼鏡を覗く。前方にキラキラと不気味に光る機影が見えた。


あの形は忘れもしない。B-29だ。距離はざっと5キロ。まだはやい。


「前方に敵機視認、全機発射用意・・・撃て!!」


バシュ!バシュ!


発射されたロケット弾が赤い尾を引いて敵に向かっていく。


「頼むぞ・・・」


信管が絶妙な位置で作動することを祈る。


どのくらいの時間がたっただろうか。一時間かもしれないし10秒かもしれない。


長い待ち時間の後、目の前で次々に光が見えた。


直撃を受けた一機は両翼が吹き飛び墜落。


ほかの機体も至近弾を受けておよそ30機が墜落した。


戦いは乱戦となった。


あちこちでブローニングの赤い曳光弾と五式機関砲の白い曳光弾が交差する。


爆撃機の防護火力はすさまじく、接近することさえ困難だった。


「前方の目標、左エンジンから出火!撃墜確実」


「こちら8番機、被弾しました!エンジン損傷、帰投します!!」


敵味方双方に甚大な被害が出ている。


地上部隊上空までおよそ300キロ。30分ほどで爆撃が開始される。


「こちら中岡、敵の数が多すぎる。至急増援を!」


「こちら『信濃』艦橋。現在低空より侵入してきた敵の対処に追われている。そちらへの増援は困難だ!!」


景雲の継戦能力にも限界がある。


小さな機体に五式機関砲を取り付けた為に装弾数は600発となっている。


長期戦ともなると不利だ。


「こちら電探基地。迎撃隊に接近する多数の機影あり。噴進機と思われ、高速で接近中。数はおよそ200」


西海岸の電探が大きな編隊を捉えた。


東から高速で接近する機影。敵機だろうか。


「中岡より各機、こちらに大編隊が接近中。警戒を怠るな」


この状況でさらに増援が来るとなると、戦況は米軍側に傾くだろう。


「日本機に告ぐ、こちらドイツ第三帝国空軍。これより貴編隊の援護に回る」


接近していた機影はドイツ空軍だった。


シュヴァルベやメッサーシュミットをはじめとする主力機が次々と米軍に襲い掛かった。


日本よりもはるかに上回る威力を持つマウザー機関砲を装備したドイツ軍は強く、戦局は大きく傾いた。


彼らはノルマンディーの攻勢にも参加した精鋭部隊で、機体には赤い撃墜マークが多数描かれていた。


「赤きメッサー」の名前で連合国に恐れられていた部隊の出現に米軍側は撤退を始めた。


だが、レシプロの爆撃機、それも爆装している状態で逃げ切れるわけもなく、全滅した。


西海岸の軍港からは撃墜された敵機が火を噴いて堕ちていく様子がはっきりと見えた。


これにてアメリカ合衆国は戦力を喪失。


残る地上戦力もはるかに少なく、降伏は目前に迫っていた。

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