表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/30

明らかにいってるんだが

「なんと。その者が、昨日メルティーナを助けてくれたと……!」


 スウォード王城。その《謁見の間》にて。

 ひざまづく俺に、国王が嬉しそうな声をあげた。


「素晴らしい……! メルティーナは我が大事な娘というだけでなく、王国の将来を背負って立つ人材じゃからな。ルシオ殿は見事な功績を残したと言えるじゃろう!」


「はい。ありがとうございます」


 言いながら、俺は深々と頭を下げる。


 ……あれ?

 国王も俺が《外れスキル所持者》だってことは知ってるよな?


 どうして他の人と同じく、冷たい態度を取ってこないんだ?


「お言葉ですが、国王様」


 と。


 そんな俺の気持ちを代弁するかのように、隣でひざまづいている兵士が刺々しい声を発する。言うまでもなく、メルの潜像護衛のひとりだな。


「その者は《外れスキル所持者》です。ご存知でしょうか、その者のスキル内容を」


「うむ……?」


「《全力疾走》です。――ククク、あまりにも馬鹿馬鹿しくて、逆に芸術的とさえ思えるスキルではありませんか?」


「…………」


「そんなしょうもないスキルを持っている人間が、メルティーナ王女殿下を救えるはずがありません。どうぞこの者に騙されることのないよう――ご留意くださいませ」


 こいつ……言ってくれるな。


 たしかに《全力疾走》は最強とまでは言い難いが、馬鹿馬鹿しいだの芸術的だの、そこまで言われる筋合いはない。兵士が意図的に俺を蹴落とそうとするための……悪意のある提言としか思えなかった。


「はぁ……」


 メルも同じことを考えていたんだろう。額に手をあて、呆れた表情でため息をついている。


 だが当の兵士は――ドヤ顔を浮かべているな。


 これは……あれだ。

《普通の人と違うこと考えてる俺かっこいい》みたいなやつ。

 国王でも王女でも気づいていないことを指摘して、まるで愉悦に浸っているかのような表情だった。


 しかしそのドヤ顔も、次の瞬間には引きつることになる。


「そなたは……我が娘の言っていることが、虚偽だと申すのか?」


「えっ……いやいやっ。決してそのようなことは」


「ではさっきの愚かな発言はどういう意味じゃ。答えてみい」


「そ、それは……」


 うっはぁ。

 怖い。めっちゃ怖いな。


 さすがはメルの父親――もとい、大国を収めるリーダーだ。そのすさまじい迫力は、メルのそれより何倍もすごかった。


 黙り込む兵士を最後に一睨みすると、国王は隣に立つメルに向けて言い放った。


「ところで、メルティーナよ。今回の要件は、このルシオ殿を専属護衛にするということじゃったか」


「ええ。血筋も問題ないですし……あとは試験さえ合格できれば、専属護衛にすることは可能でしょう」


「ふむ……。そうじゃな」

 国王は数秒間だけ顎鬚をさすると、二人の兵士たちを見て言った。

「ちょうどよい。おまえたち二人、試験官を務めてくれんかの」


「え……?」

「わ、我々がですか……?」


「うむ。現職の護衛に勝つことができれば、護衛としての実力は充分。そうじゃろ?」


 その瞬間。

 いったいなにを思ったのか……兵士たちの表情に、暗い笑みが浮かんだ。


「え、ええ……! そうですね、まったくその通りだと思います!」


「必ずや我らがルシオを殺――いえ、公正な試験官となってみせます!」


「うむ」

 国王は満足そうに頷くと、近くにいた大臣に声をかけた。

「そういうわけじゃ。いますぐに試験の手筈を進めるがよい。いますぐにじゃ」


「イエス・ユア・マジェスティ」


 大臣は深くお辞儀をすると、そそくさとその場を後にするのだった。


「きひひ……! これでやっとルシオをフルボッコにできる……」

「楽しみだぜぇ……!」


 俺の隣でそう呟いている兵士たちの目は、明らかにいってしまっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ