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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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番外 side理絵 私だって幸せになりたい1

シリーズで嫌われ者な設定の理絵のサイドストーリー。

どうしてそうなってしまったのかが…多分分かると思います。

「私…富田君の事が好きなの」

「ありがとう。でも、俺気になる子がいるんだ。ごめんね」

中学2年の塾の夏期講習でずっと気になっていた男の子に告白して、見事な位に私は散った。

あの頃の私は、気になる子が誰なのかあまり気にもしていなかった。



「ちいは好きな人はいるの?」

「…いるよ」

「ええ?誰よ。それ」

「同じ学校じゃないから、探そうとしたって無駄よ。私の話はおしまい」

修学旅行のホテルでの出来事。他愛のない話がいつのまにか好きな人の話になった。

皆がきゃあきゃあ言いながら、次々にその想いを明かしていく。

一番サイトになったのは、ちいというニックネームを持つ佐倉倫子。

私は小学校2年生から転校してきたので、なぜ彼女をそう呼ぶのかまでは知らない。

小さな子どもたちがつけるニックネームだから、ちびっこって所が由来なのだろう。

実際に彼女の身長はクラスの女子で一番前が定位置だ。

今まで、一度も同じクラスにならなかったから、同じ町内に住んでいても彼女の事を何も知らない。

私が知っているのは、そこそこ頭が良くって、去年場では水泳部にいて、県大会までいける実力の持ち主だと言う事と。歌うのが上手で合唱コンクールでソロパートの経験があるということ。

それから、両親を亡くしていて親戚と一緒に暮らしている…これ位しか知らない。



そんな彼女の恋のエピソードは皆が初めて聞いたのだろう。

けれども、彼女は最低限…と言うよりはキーワードに近い言葉を残してからは、一切明かす事はなかった。

今は皆の話をにこやかに聞いている。

彼女のプライベートは…ほとんど知らない。同じ塾の土日コースにいるのは知っている。

それも、幼馴染と一緒に通っていると聞いた事がある。

夏期講習とかで見かけた塾での彼女は、そんな幼馴染達やずっと一緒のクラスメートと穏やかそうに過ごしているように見えた。



逆に学校では、ドライでクール。もしくは無関心な態度をとっている。話しかければ、ちゃんと応じてはくれるけど。

多分、そこに何かがあるんだるけど、私はその時も然程気にもしなかった。

その位、私達には接点がない。泳ぐのが早かったのに、去年の秋で部活を止めてしまっている。

病気から体調を崩して止めたのかと思っていたけれども、本当の理由は誰も言わない。

同じ部活の子に聞いたのは、どんなに頑張っても、もう限界だから…。

どうやら、今の成績には満足してはいないが、今以上の成績を残す事が出来ないと言う事らしい。

対して泳げない私からしたら、その発言は贅沢だなぁと思うけど、自分の意思とはどうやら別に泳いでいたようなので、それなら仕方ないのかなと思っていた。



彼女の両親は亡くなっていて、今は親戚と暮らしている。

そう言うのを考えると彼女なりに努力をしているのだろう。

本人の口からは言わないけれども、学年トップクラスの成績だ。

同じ塾には通っているけど、コースがちがうから、一緒になる事はない。

講習の時も、彼女がいるクラスの方がレベルが上だ。

そこは彼女よりも早くから塾に通わせている、私の母はとても気に入らないらしい。

成績を見せるといつも溜め息をつく。私なりに努力している結果なのに褒めてくれた事もない。

私もそんな状態に慣れてしまったが、それはそれでどうなんだろうか?



「ただいま」

「理絵、定期テストの結果は?」

今日のような、定期テストの結果が出る日の放課後が一番嫌いだ。

娘が帰ってきた第一声がテストの結果を聞いてくるのもおかしい。おかえりなさいはないのだろうか?

それよりも、この日が好きだと言える人ってそもそもいるのだろうか?

そんな人がいるのならば、ぜひともお目にかかりたい。

「いつも通りって所じゃないの?」

私はそう言うと、母に渡す。母は私の成績を見てから、大きく深い溜め息をついた。

「ちゃんとやって…これなの?クラス順位が今回は一番悪いじゃない」

今回一番気にしているところを抉るように言い当てる。

今回のクラスはどうも頭のいい子が多いようだ。

母のキツイ言い方は私の心に大きな楔として打ち付けられた。

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