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In other word・・・  作者: トムトム
2章 歩いていこう ~Ich werde gehen.~
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「今日の数学は後半クラスよりちょっと進んでしまったからこのプリントを解くように。残ったらそれは宿題だからな。計算用紙が必要ならば取りに来るように」

今日の数学は、プリント学習。先生は他のクラスの課題をチェックしているようだ。今日の問題もかなり難問だけど、補習プリントよりは難しくはない。自由帳を取り出してすぐに溶ける問題から解いていくことにした。

多分……どこかの大学の文系学部の問題かセンター試験の問題なのだろうなあと解いていくと解き方が二通りあることに気が付いた。片方は中学の知識で解けて、もう一方は高校に入ってからの知識で解くことができる。楽に解けるのは圧倒的に後者なのだが。とりあえず二通り解いてから私は山崎先生に聞くことに決めて問題を解くことにした。

「先生、ちょっといいですか?」

私が座っている前の教卓に座っている先生に問いかける。ちなみに一人だけ外部生の私は教卓の前を指定席にされている。他の席は皆自由に座っていることになっているけど、左隣はまなちゃんで右隣はみちが座っている。私の周りは自然と三組が今井君以外で固まっている。今井君は前に座ると見えないと苦情が入ってしまって一番後ろの席だ。彼の事だからきっと睡眠学習だと思うけど。

「どうした?佐倉。気分が悪いか」

「そうではないです。この問題についてですが……」

私は声を出した時は怪訝そうだった皆の視線が問題の質問と分かると一部が険しいものに変わっていったことが気配だけで感じる。そんなことを気にしてもどうにもならないので、敢えて気が付いていない素振りをしていた。

「これって、これでいいですか?」

私は県産用紙にしている自由帳を見せた。山崎先生はそれを見て小さくほおと呟く。

「正解。ついでだから他のものも見てやろう……。後はちゃんと書き写しておくように。朝提出して貰った課題も全問正解だ。これが今日の分のプリントになるから残りの時間はそれを解いていてもいいぞ」

「ありがとうございます」

私は椅子に座りなおして、授業の課題プリントに答えを書き写す。それから昨日の補習プリントの問題をノートに書き写していく。最初に解いていた時に間違えたところも書き込んで、最終的に正しい答えになるまでは赤いペンで書き込んでいく。そうすると、どこが自分で理解していないか分かるから復習するときに注意しやすい。


私がノートを纏めているところで、かなり時間がたったようで、山崎先生は次の時間に答え合わせすするようにランダムに問題を解く人を指名している。私も先生から指名を受ける。私が指名を受けたところは、さっき先生に質問をしたその問題だった。そうすることで内部性にプレッシャーを与えるためだと気が付いた私は苦笑するしかない。

「ちいちゃん分からないの?」

「いいえ。山崎先生ってそういう人なのね」

隣の席にいるまなちゃんが不安そうに私を見ている。

「そういう人?」

「そのうち分かるわよ。終わらないと宿題になっちゃうわよ」

「そうだった。これ以上の宿題は増やしたくないもの」

指名された人は、その問題を解くことに集中しているようだ。私も残りのわずかな時間を補習プリントを解くことに専念することにした。

数学の時間が残り五分になったところで、田中君が先生を呼んだ。

「先生、佐倉さんが解いている補習のプリントは貰えないんですか?」

「田中は、一度学習しているだろう?佐倉はその時間がないからフォローアップの為に解いているんだぞ」

「そうだけど。俺、数学は苦手だから。彼女に見せてもらって俺殆ど分からなかったから」

「成程。その向上心を買うことにするか。ならば放課後に取りに来るように。分からないところは佐倉に聞くように。佐倉はそうすれば復習になるからちゃんと定着するだろう?」

「分かりました。理解して貰えるように頑張ります」

「先生、私も欲しい」

みちもすかさず手を挙げた。結局、先生が希望者を募ったらクラスのほとんどが手を挙げたようだ。一番前にいる私は後ろを振り返ることはしなかったけど、物音からしてそんな気がした。

「補習プリントはホームルームの間に印刷しておくから各自取りに来るのではなく、何人かグループを作って代表者が取りに来るように。そうじゃないと職員室の中で大変なことになるからな」

高校の職員室はかなりコンパクトな設計になっている。各教科の先生は通常なら各科目の教員室にいることが多いのだろう。山崎先生も普段は教員室にいる時間の方が多いようだった。

「プリントを解いた人のやる気はちゃんと成績に反映させるつもりだ。もちろん佐倉もな」

山崎先生が更に皆を煽る一言を告げる。いつもは静かなクラスがざわついたまま授業が終わった。


「ごめん、ちいちゃん」

「何が?」

「俺が補習プリントを欲しいって言ったから」

「いいんじゃない?苦手なものを克服するのって凄く勇気がいることだと思うよ」

「そうかな?」

「そうよ」

私はにっこりとほほ笑む。

「でも、田中君。英語もプリントをやるんじゃなかった?」

「それはそれってことで。俺さ、国立に行きたいんだ」

大半の国立大学は数学と理科も試験科目に入っている。

「じゃあ、田中君のライバルは田中君だね」

「えっ?」

「だって……楽をしたいと思う田中君には負けないってことよね。頑張って」

「ああ。分からない時にはよろしく」

「教えられるかな?自信はないんだけど」

「大丈夫。お手柔らかにお願いします」

私たちは三組の教室に戻る。戻ると博子ちゃんと加瀬君から大丈夫か?と聞かれた。二人にもかなり迷惑をかけちゃったのかもしれない。

「今は大丈夫。広瀬先輩とよっちゃんが大事にしたのよ」

「とにかく無茶はしないでよ」

「その通り、内の事は俺達から説明しておいたから。兄弟のようなはとこだろ?」

「うん。何も言わなくても分かってくれる存在だね」

「一人でいて倒れるよりはいいんじゃないか

「そうだよ。私達とは使っている駅が違うんだから」

「そうだね。二人が使っている駅だと、自転車乗る時間が倍になっちゃうかもしれないね」

私たちが住んでいる学区はとても広い。その為、使う駅が別れてしまうのだ。更にいつ開業になるのか分からないが私鉄が新線を作る計画もあったりもしている。

「あっちは大和田とかもいるんだろう」

「きっとね。今は時間が合わなくて夕方しか会えていないんだけど」

「そうなんだ」

創君たちとは入学式後は放課後に会う時もあるけれども、一番多いのは日曜日に勉強会であっている位だ。

「佐倉さん。これ英語のノートとプリント。今日の補習は中止だって」

綾瀬君が私に英語のノートを渡してくれた。補習が中止になった理由はお昼休みに聞いているから知っている。

「ありがとう。補習が中止の理由はみちから聞いているよ」

「そういう訳なんだ。俺と佐倉さんは次のプリントを解いていいって」

「でも、そうなると他の皆とペースが合わなくなるんじゃないの?」

私と綾瀬君が先に進んでしまってもいいのだろうか?

「英語科の他の先生に手伝ってもらうからいいらしいよ」

補習の中でも競わせるつもりなのか。全く……先生達の梳けた目的が分かってしまってどうしたものかなと困惑してしまうのだった。


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