第406話:大盛り上がり
「うおおおおーっ! ノア、やったあああ!! かっこよかったぞーっ!!」
ブンブンと腕を振り回しながらノアの名を叫ぶナマリを見て、ノアは凶悪な笑みを浮かべながらナマリに向かって右腕を高々と掲げた。
(ふうっ。ちとやりすぎたかと心配したが、どうやらナマリは気にしてねえようだな)
幾度もノアに拳を叩き込まれたパイヴォの顔面は見るも無惨な状態になっていた。これでよく生きているものだと感心するくらいである。
「ふん。若造が、俺とやり合うのは十年早かったな」
嫌味ではない。ある意味で称賛である。
二十でCランクになるほどの才能、その才能に慢心せずにさらなる上を目指す向上心。ノアの言うとおり十年の歳月を研鑽に努めれば、ここまで一方的な戦いにはなっていなかっただろう。
その後も試合は順調に消化されていく。
確かな実力を持つ者同士の戦いである。派手な技や魔法が放たれる度に観客たちから歓声が沸き上がった。
当然、勝った側も負けた側もタダでは済まない。
冒険者ギルド長モーフィスより死者は出さぬようにと、治療を担当する者たちへお達しが出されているのだが、限度というものがある。
「これっ……こんな怪我、どうしろっていうんだ!?」
「泣き言を言うな!」
胸部が抉れ、内部の臓器が剥き出しになっている負傷者を前に、治療班の手が止まる。
「はい、はい。そこ退いてくださいね」
「プ、プリリ殿っ」
プリリが負傷者の胸部へ手を突っ込むと、怪しげな薬品を投入しつつ、半ば潰れた臓器を治しながら正しい位置へ戻していく。その手際の良さに治療班は歯噛みする。
冒険者ギルドが用意した治療班からすれば、自分たちの手に負えない負傷者を、外部からねじ込まれたプリリが苦も無く治していく姿は素直に受け入れられないのだろう。
「私は解剖と実験が好きなのに、どうしてどこの誰とも知らない人たちの治療をしなくてはいけないのでしょうか」
「恐れながら、侯爵様の指示に異を唱えるのは如何なものかと」
「わかっていますよ。ムッス様の命令に、私が逆らうわけないじゃないですか」
抉れた胸部をパテでも埋めるかのように修復すると、プリリは「あとはお願いしますね」と、治療班へ任せる。まだまだ負傷者が控えているのだ。命の危機を脱した者はさっさと放り投げて、次の負傷者のもとへ向かわねばならなかった。
ブツクサと文句を言いながらも、プリリの腕は想像を絶するもので、今のところ試合による死者は0である。
※
「勝者ラリット・ネッツ」
エッダが勝者を告げると、観客たちから勝者を称える歓声が沸く。
「ぐへぇ……な、なんとか勝てたわ」
限界が近かったのだろう。ラリットはその場で崩れ落ちるようにへたり込んだ。
自分と同じCランクの斥候職、それも相手のほうがキャリアは上である。その難敵を相手に辛勝したラリットは、都市カマー冒険者ギルドの面目を保つことができた安堵から座り込むのも無理はないだろう。
しかし、功労者とも言えるラリットに待っていたのは――――
「立ちなさい」
「へ?」
「なんとも情けない勝ちかたとはいえ、勝者が無様な姿を晒すのをやめなさいと言っているの」
――――無慈悲なエッダからの苦言であった。
「あなたの実力なら、もっと楽に勝てた相手よ。普段から真面目に努力を重ねていれば、今頃はBランクの候補になっていてもおかしくないのに、あなたときたら――――」
こんな場所で説教をされるとは思っていなかったラリットはうんざりした様子である。
そもそもラリットは別に冒険者として怠けていたわけではないのだ。クランに所属せず、また特定の者たちとパーティーを組まないのも、ランクに相応しい振る舞いや役目を負わされるのが嫌で、気楽に一冒険者として自由に動きたいからなのだが。
(――――てことを言おうもんなら、どうなるかわからねえよな。ある意味でジョゼフの旦那と同じくらい恐ろしい人だからな。大体、この規模の結界を構築・維持しながら、なんでそんな平静を保ってられるんだか意味がわかんねえな)
「ラリット、私の話をちゃんと聞いているのかしら?」
「は、はひっ。へ、へへっ。そらもう十分に聞いていますよ。では、試合も押しているみたいなんで、俺はこの辺で……」
露骨な作り笑いを浮かべながら、ラリットはそそくさとその場をあとにする。
「困った子だわ」
三十路のラリットも、エッダから見ればまだまだ子供扱いであった。
※
「お、おい。またカマー側が勝ちやがったぞ。不正か? それともカマー側が、実力の釣り合っていない組み合わせで自分のところを勝たせてるのか?」
立ち見をしている他領から来た冒険者の一人が、都市カマー冒険者ギルドの不正を疑う。
この男はオッズを見ながら賭けているのだが、すでに結構な額を負けていた。
「そんなわけねえだろうが」
「でもよ」
「今の試合を見てなかったのか? 相手のほうが終始押してただろうが」
「じゃあ、なんで負けたんだよ」
「ありゃラリットとかいう奴の試合運びが上手かったんだよ。一瞬の隙を突いて、勝利をもぎ取りやがった」
「へっへ~。俺はあのラリットとかいう奴が、カマーでちったあ名が知れてるって聞いてたからよ。金貨二枚も賭けてたんだ」
「なにっ!? い、いくら儲けやがった!」
「なんと最終的にはオッズは五倍になって、金貨十枚になって返ってきやがった」
「五倍っ!? ち、ちきしょ~っ! 少し寄越しやがれ!!」
「誰がやるかっ! ば~か」
「てめえ、こっちに来い!!」
「こんな狭え場所で喧嘩すんじゃねえよ」
諍いを起こせば一発で退場とわかっているのか。取っ組み合いの喧嘩にまでは発展はしなかったのだが、負けが込んでる男は次こそは当ててみせると意気込む。
そして賭け事に一喜一憂しているのは、なにも一般人だけではない。
「なにをやっておる! 貴様にいったいいくら賭けたと思っているのだ!」
「おやおや。そのように取り乱しては、下々の者に示しがつきませんぞ」
「私たちまで同類と見られるではありませんか」
「ぐっ。わかっておるわ」
貴人エリアで立ち上がって怒声を飛ばしていた貴族の一人が、近くにいた貴族たちからやんわりと注意を受ける。
「余裕のない方には困ったものですね」
騒ぎ立てる貴族の姿を扇で遮りながら、顔見知りの貴族が嘆く。
「親が悪いのであろう」
老貴族が同意するように頷く。
「あの方はあれでも当主ですよ」
「なら、なお親が悪い。あのような振る舞いを矯正せぬまま、当主の座を譲ったのだからな」
顔見知りの貴族は、それ以上はなにも言わなかった。よその貴族がどのような教育をしているかなど、それほど興味はなかったのだ。それに当主が無能であれば、それは当主だけでなく一族や仕えている家臣まで衰退をもたらす。だからこそ貴族は後継者に厳しい教育を施すのだが、どこの世界にも勘違いして増長する者はいるものだ。
「ところで、随分と稼いでいるようだな」
賭けをするのはなにも平民だけではない。むしろ富裕層のほうが賭け事は一般的であり、その賭ける金額も桁が違う。当然、賭けの胴元も平民を相手にするよりも儲けが多いので、力の入れ具合が違う。胴元の後ろ盾になっているのも、貴族――――それも高位の貴族である。でなければ、貴族と揉めた際に権力を立てに押し切られてしまうからだ。
「私のような家が細く、領土も小さな貴族は、このような機会を利用して稼がねば、やっていけないのですよ」
「ふむ」
半分は本音だろうなと、老貴族は静かに頷く。周囲の貴族へ視線を向ければ、それぞれの家臣や配下たちが慌ただしく動いていた。ほとんどが富裕層を相手にしている賭けの胴元のもとへ向かっているのだろう。
「ここまでカマー側が優勢のようだが」
「最終的に勝率は七割ほどで落ち着くと見ています」
主催者の都市カマー冒険者ギルドとしては全勝をしたいところなのだろうが、それでは遠方よりきた有力者たちも興ざめである。冒険者ギルドの力を示しつつ、適度に観客を楽しませるためにも、顔見知りの貴族が言ったように七割という勝率予想は妥当と言えた。
「次の試合はどちらにお賭けに?」
「トロピ・トンに賭けた」
少し間を置いてから、老貴族は問いかけに答える。別に隠すようなことではないのだからと。
「対戦相手をご存知ないのですか?」
「都市マンドレイム冒険者ギルド所属のヤルシュカであったな」
「まさかGランクだからと?」
「ふははっ。それほど耄碌はしておらんよ。ヤルシュカはこの試合に参加するために急遽冒険者登録をしただけで、本来は傭兵ギルド所属の――――それもBランクの猛者よ」
顔見知りの貴族は、老貴族がそこまで知っておいて、なぜヤルシュカに賭けなかったのかを思案する。
「――――失礼」
そういうと、顔見知りの貴族は少し席を離れ、家臣へ指示を出す。
「私もヤルシュカからトロピへ変更します」
「よいのか?」
「時には情報より直感を信じてみるのも一興でしょう」
二人の会話を盗み聞き――――いや、堂々と聞き耳を立てていた貴族たちは、どちらに賭ければいいのかと悩むことになる。
そうこうしているうちに、モフによる選手入場と紹介がすむ。
※
「あんた、ここがどういう場所かわかってんのかい?」
エッダのルール説明を聞き流しながら、ヤルシュカがトロピへ話しかける。
「ボク、わかんなーい」
ヤルシュカは巨人族の女性で、身長は約270センチで体重は380キロを超える。対するトロピは身長は130センチもなく、体重は30キロを少し超えた程度である。これでトロピに賭ける者など、普通であれば頭を疑うだろう。だが、どこの胴元も賭けが成立していた。つまり――――賭けが成立するほど、双方に金が積まれているのだ。
「可哀想に」
「ええ~。どういう意味かなぁ?」
見下ろしながら、ヤルシュカはトロピを憐れむ。
「私語は慎みなさい」
「はいはい。あんたも大変だな」
エッダの注意に対して、ヤルシュカは煙でも払うかのように手をヒラヒラさせる。
「それでは開始線まで下がりなさい」
「あいよ」
「はーい」
これから戦うというのに、あまりに温い態度のトロピの様子に、ヤルシュカは気が抜けそうになる自分に気合を入れるように頬を叩き、顔全体を覆うアーメットヘルムを被る。ヤルシュカの防具はこれだけだ。あとは自分の得物である戦斧と自慢の肉体があれば、誰が相手だろうが十分であった。
(こんな雑魚を倒すだけで、傭兵ギルドと貴族からそれぞれ金貨二百枚か)
互いに背を向けて下がりながら、ヤルシュカはヘルムの下で笑みを浮かべた。
すでに報酬を手にしたかのように喜色満面になるヤルシュカであったのだが、トロピも同じように嗤っていた。
(ごめんねー。ボクもエッダさんが見ている前で、手を抜くわけにはいかないから)
よそからカマーへ訪れた観客の多くは、カマー側の捨て試合だと思っていた――――いや、決めつけていた。ここまでカマー側が勝ち過ぎているし、相手のヤルシュカは都市マンドレイムに伝手がある者や、傭兵に知り合いがいればどのような者であるのかはすぐに知ることができるからだ。
都市マンドレイムの傭兵ギルド所属『重鋭』のヤルシュカ、単独で仕事をこなす猛者として他領にまで名の知れたBランクの傭兵である。
対するトロピは歴史あるクラン『赤き流星』の盟主で、Bランクの冒険者であることは観客も承知しているのだが、如何せん副盟主のデリッド・バグのほうが遥かに名が知れていたのだ。そのため、どうしてもトロピの名はデリッドの影に隠れてしまっていた。
それにトロピとヤルシュカの体格差が問題であったのだ。あまりにも体格が違いすぎる。そのうえ、トロピは武器も防具も身につけていない。小柄なドワーフの女が徒手空拳で巨人族のヤルシュカと戦うのかと、観客たちが捨て試合と決めつけるのも無理はないだろう。
(伝統あるクランの盟主らしいね。だけど『リトルデビル』なんて可愛らしい二つ名はカマーに来るまで聞いたこともなかったよ)
開始線に移動し、互いに向き合ってもまだヤルシュカは笑ったままである。
(あたいと同じBランクらしいが、教えてやるよ。傭兵と冒険者との格の違いってやつをね)
近年、護衛や魔物討伐などの依頼は、傭兵ギルドより冒険者ギルドに持ち込まれることが多くなっていた。これに危機感をもったのは、当然だが傭兵ギルドである。
戦争が常に起こっていれば食いっぱぐれることはないのだが、そう都合よく戦争が起きるはずもない。また、そうなれば日頃の飯の種である討伐関連の依頼が、冒険者ギルドと被っていたのだ。戦闘であれば負けることはないと傭兵ギルドや傭兵も自負しているのだが、残念ながら世間の目は傭兵より多種多様な人材が集う冒険者のほうが優れていると見ていた。
この機会に傭兵の強さを、有用さを知らしめたいと考えて送り込まれたのがヤルシュカであったのだ。
「それでは第九試合始めっ!」
試合開始の合図とともに動き出したのはトロピである。しかし、その動きはとても戦いを生業にしている者の動きではなかった。まるで小さな子供がトテトテと走るような緩慢な動きである。
「あんた……あたいを舐め――――」
眼前まで来たトロピを前に、先ほどまで笑みを浮かべていたヤルシュカは、今や憤怒の表情である。そのヤルシュカの左太腿に、トロピの蹴りが炸裂する。
「えいっ!」
パンッ、となにかが破裂したような音が修練場内に響いた。同時にトロピを捕まえようとしていたヤルシュカの右手は空を切り、片膝をつく。
観客たちから一斉にどよめきが起こる。大人と子供どころではない体格差の二人が、まさか小さなトロピが放ったたった一発の蹴りでヤルシュカの膝をつかせるとは、己が眼で見ていても信じられなかったのだ。
「ごめんねー。ボク、巨人族がちょーとだけ嫌いなんだ」
「こ……この女っ!!」
信じられないことにヤルシュカの丸太のような太腿の大腿骨が砕けていた。
「どうする?」
首を傾げながらトロピが尋ねる。
「どうする、だとっ?」
「あれー。降参しないのかなー」
「舐め腐りやがってええええーっ!!」
ヤルシュカが装備しているヘルムのスキルと巨人族の回復力を以てしても、砕けた骨をすぐさまに治すことはできなかった。だが、怒りが身体を突き動かす。片膝をついている状態から巨大な戦斧を片手で横薙ぎに振り抜いたのだ。
唸りを上げて迫る戦斧をトロピは軽やかな跳躍で躱す。その高さは十メートルにも達していた。いくら武具を身に着けていないとはいえ、常識外れの跳躍力である。
「じょっ…………冗談じゃないよっ」
天を仰ぎながらヤルシュカは呟いた。
上空でトロピがいつの間にか鎧を纏っていたのだ。トロピのジョブの一つ、土精術士による土の精霊魔法を使用して武具を生成したのだ。全身を覆う甲冑はまだいい。ヤルシュカの理解の範疇であった。ただ、全長八メートルは優に超える戦斧の生成は理解ができなかったのだ。
ヤルシュカの戦斧は全長二メートルほどの業物である。八メートルの戦斧と打ち合えるかと問われれば――――。
「クソがっ!!」
超重量物である戦斧が振り下ろされると、ヤルシュカは前に転がり躱す。後方から凄まじい衝突音が聞こえるが、確認している余裕はなかった。
「得物はでかけりゃいいってもんじゃないよ!!」
あれだけの衝撃があったにもかかわらず、試合場の石畳にヒビ一つないことにヤルシュカは驚くが、今はそれよりこの機会を逃すわけにはいかないとトロピの懐まで距離を詰める。
「この距離じゃ、戦斧を振り回すこともできないねえっ!!」
まだ万全とは言い難い状態だが、痛みに耐えながらヤルシュカはトロピの腹部に蹴りを叩き込む。面白いように、トロピが石畳の上を跳ねながら吹き飛んでいく。
(手応えあり!)
ヤルシュカは体重四〇〇キロを超えるビッグボーを、蹴り一発で殺したこともある。そのときと同程度の手応えがあった。甲冑の上からとはいえ、無傷では済まない。内臓のいくつかは破裂していてもおかしくない手応えであったのだ。
「お客さんがいるからね」
首だけを起こして、トロピが呟いた。
「楽しませないと」
何事もなかったかのようにトロピは立ち上がる。
「上等だよっ……」
互いに申し合わせたかのように突っ込んでいく。激しい激突は力が拮抗しているのか。どちらも吹き飛ばずにその場に留まっていた。押し合いでは埒が明かないと、最初に動いたのはヤルシュカである。手の空いている左手で拳を叩き込み、続けざまに頭突きをトロピの顔面へ放つ。
「決まっ――――嘘だろっ」
一瞬、後方へ倒れそうになったトロピの目がカッ、と見開くと、凄まじい速度で飛び跳ねながら頭突きをヤルシュカの顔へ叩き込む。ヘルム内のヤルシュカの頭部が激しく揺らされ意識が遠のきそうになるのだが、気合で持ち直すと戦斧を縦に振るう。
「むんっ」
可愛らしい掛け声とともに、トロピは超重量の戦斧でヤルシュカの戦斧を受け止める。だが、同時にトロピの腹部へヤルシュカの蹴りが炸裂した。
「その程度じゃ、もう吹き飛んであげれないよ」
「どんな身体してるんだいっ」
女性同士ということで、そこまで期待していなかった観客たちは思わぬ激しい肉弾戦に大いに盛り上がる。
(ど、どうなってんだいっ。あたいがっ……このあたいが、こんなチビのドワーフを相手に……互角っ!? い、いや、打ち負けているっ!?)
互いに致命的な一撃は喰らわず防いでいるとはいえ、それでもダメージは蓄積していくのだ。ヤルシュカは何発も拳や蹴りを、それに戦斧でもダメージを与えている。それなのにトロピはお構いなしでガンガン前に出てくるのだ。
「ビビっちゃったね」
「まずっ――――」
思わず距離を開けたヤルシュカの視界外から、横薙ぎに振るわれたトロピの戦斧が頑強な巨人族の太い腕を斬り飛ばし、さらに胴体の半ばまでをも切断する。
「そこまで!」
それ以上は追撃する気もなかったトロピは、エッダの制止の声に手を止めた。戦斧を振り抜いていれば、ヤルシュカは即死していただろう。
半死半生のヤルシュカにエッダは駆け寄ると、最低限の治療を施してあとは職員に任す。
そして――――
「あいたっ」
観客に愛想を振りまくトロピの頭にげんこつを落とす。
「なんですか。今の戦いは」
「えー。エッダさん、知らないんですかー。魅せる戦いってやつですよ。ここにいるお客さんたちは有力者が多いから『赤き流星』盟主のボクとしては、ちゃーんとアピールしとかないと」
「戦いを舐めていると痛い目に遭うわよ」
「そういうのって古い人の――――」
「なんですって?」
微笑を浮かべたエッダがゆっくりと距離を詰め始めると。
「ボ、ボク、わかんなーいっ」
トロピは慌てて逃げ出していくのであった。




