表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不人気と言われようともデバッファーを極める ~攻撃スキルが無くても戦えます~  作者: 功刀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/99

黄金蝶探し②

 森の木々をかき分け、俺たちは道無き道をひたすらに進んでいた。


「せいやっ!」


 サクラが一閃し、飛びかかってきたフォレストウルフを両断する。

 俺も杖を振るい、横合いから現れたゴブリンに《スリープ》をかけて無力化する。


「もーっ! また雑魚ばっかり! 黄金蝶はいったいどこにいるのよ!」


 イベント開始からもうすぐ一時間が経過しようとしている。だが、俺たちの成果は未だにゼロだ。黄金蝶どころか、それらしい光すら見ていない。


「……さすがに、おかしいな」


 この島は広いとはいえ、数千人規模のプレイヤーが参加しているはずだ。それなのに、未だに「見つけた!」という歓声すら聞こえてこない。


 この遭遇率の低さ……

 ひょっとして、黄金蝶は俺たちが思っている以上に、希少な存在なんじゃないか?


「なあ、テレサ」

「なによ?」

「この一時間、これだけ歩き回って0匹だ。つまり、1匹見つけるだけでも相当な困難ってことだ。そう考えると……人数不足によるボーナスポイントって、俺たちが思っている以上にデカいんじゃないか?」


 俺の指摘に、テレサもハッとした顔をする。

 俺たち3人パーティは、規定の5人より2人少ないため、最終スコアに「黄金蝶2匹分」が加算される。

 開始前は「たった2匹か」と思っていたが、この遭遇率の低さを体感した後だと、その価値は跳ね上がる。

 0匹のままゴールしても、俺たちは「2匹捕まえた」扱いになるのだから。


「……確かにそうね。今の苦労を考えると、2匹分のリードってとんでもないアドバンテージだわ」


 テレサは顎に手を当てさらに思考を巡らせる。

 そして冗談めかして言った。


「ねえ、ガイっち。これならさ、いっそのこと5人パーティ組むより、ソロで参加した方が1位になりやすいんじゃない? 1人なら4人不足してるわけだし、最初から4匹分のボーナス持ちよ?」

「……ああ。ありえる話だ」


 テレサの言葉は冗談半分だったようだが、システムを紐解けば、それは恐ろしいほど理に適っている戦術だ。


「いいか? よく考えてみろ。このボーナスは『最終スコアに加算』されるんだ。つまり、黄金蝶の現物を持っているわけじゃない」

「えっ、それって……」

「そう。所持していないんだから、PKされても『落とさない』し、『奪われない』んだよ」


 俺の言葉に、二人が息を呑む。

 通常のプレイヤーは、必死に黄金蝶を探し、見つけたとしても、PKされて奪われるリスクに怯えながらゴールを目指さなければならない。死んでしまえばマイナス1だ。

 だがソロプレイヤーの持つ「4ポイント」は、システムによって保証された、絶対に減ることのない聖域の数字なのだ。


「極端な話、ソロで参加して、7時間ずっと茂みに隠れてやり過ごす。そして終了間際に、運良く1匹でも捕まえれば、それだけで合計5ポイント。PKのリスクゼロで、上位に食い込める可能性が高い」

「うわ……何それ。なんか、ズルくない?」


 ゲームの趣旨からは外れているかもしれないが、ルール上はもっとも「賢い」戦い方だと言えるだろう。


「このイベント、真面目に探してる奴ほど損をする仕組みかもしれないな……」


 俺とテレサがそんなゲーマー特有のシビアな視点で盛り上がり、空気が少しどんよりとし始めた時だった。


「もう! 二人とも! 悪い顔になってるよ!」


 サクラが、パン! と両手を叩いて俺たちの間に割って入った。


「1人の方が有利とか、隠れてた方がいいとか、そんなのつまんないよ! 私たちは『トライ・ジョーカー』なんだから、3人で力を合わせて、正々堂々と見つけて、1位にならなきゃ意味がないんだよ!」


 サクラは腰に手を当て、ビシッと俺たちを指差す。


「それにね。システム上の数字なんかより、3人で冒険してる今の方が、ずっと価値があると思うの! だからそんな暗い計算ばっかりしてないで、もっとワクワクしながら探そうよ!」


 その純粋で、力強い言葉。

 それは、効率やシステム論に凝り固まっていた俺たちの頭を、ガツンと殴るような一撃だった。


「……ははっ。参ったな」


 俺は苦笑して、頭をかいた。

 サクラの言う通りだ。

 俺たちは効率を求めてここに来たんじゃない。この3人で、頂点を目指すために来たんだ。


「そうね! その通りだわ、サクっち! せっかくのイベントなんだもん、楽しまなきゃ損よね!」


 テレサも憑き物が落ちたような笑顔を見せる。


「ああ。悪かったな、サクラ。システムにビビって弱気になってたみたいだ」

「えへへ、分かってくれればいいの!」


 サクラが満面の笑みで頷く。

 その笑顔が、俺たちの士気を再び燃え上がらせた。


「よし、探すぞ! 4ポイント持ってるソロプレイヤーがもし居たとしても、そいつが腰を抜かすくらい大量に捕まえてやればいいだけの話だ!」

「その意気よ! さあ、森の奥へ進むわよ!」


 俺たちは顔を見合わせ、再び鬱蒼としたジャングルへと足を踏み入れた。

 足取りは先ほどよりもずっと軽い。

 見つからないなら、見つかるまで探せばいい。

 単純明快な答えを胸に、俺たち『トライ・ジョーカー』の探索が再開された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ