廃坑ダンジョン⑧
サクラが剣を構えて前進した。
「じゃあ行くよ!」
「お願いね!」
そしてサクラはミスリルゴーレムの元へと駆け出す。相手もサクラに気が付いたのか、視線がサクラを追っている。
サクラは動じずにミスリルゴーレムに近づいていく。
「えいっ!」
そして射程内に入ると同時に斬り付けた。
だが……
「~~~ッ!! か、かたーい!」
カンッ!と鋼鉄を殴ったかのような音が響き渡った。
「ど、どうしよう!? 全然効いてないみたい!」
「いや十分だ。ヘイトはサクラに向いている。それより気をつけろ! 攻撃してくるぞ!」
「!」
ミスリルゴーレムは片手を振りかぶってサクラを狙いを定めている。
サクラもそれに気が付いたのかすぐにその場から引いた。
「ッ!」
そしてサクラが後ろに下がった瞬間、ミスリルゴーレムの拳が振り下ろされて地面にめり込んだ。
「サクっち大丈夫!?」
「う、うん! 平気! 当たってないよ!」
サクラが1秒前に居た場所にはミスリルゴーレムの拳が地面にめり込んでいて、威力のすごさを物語っていた。
ここの地面は固そうで簡単にはめり込まないはずなんだけどな。だけどたった1発で地面を変形させやがった。相当威力が高いんだろうな。
「あんなの食らったら間違いなく即死するだろうな……」
「防御力だけじゃなくて攻撃力も高いみたいだしね……。今のあたし達では勝てっこないよ……」
だが既に相手はこっちに気が付いている。
ここまで来たら止めるわけにはいかない。
「サクラ! その場所からミスリルゴーレムを遠ざけてくれ!」
「こ、こっちに付いてきてー!」
サクラがその場から逃げるように移動すると、ミスリルゴーレムもそれに続いて歩き出した。
「! 来た!」
動きはあまり早くないが、歩幅が大きいせいでサクラには容易に追いつけるようだ。
サクラもそれに気が付いたのかスピードを上げ始めた。
「これならいける! サクっち頼んだよ!」
十分離れたのを確認してからテレサが動き出した。
そして採掘ポイントらしき場所に立ち止まり、ツルハシを取り出した。
「よぉーし! 全力で採掘するわよ! サクっちのためにもいい素材手に入れないと!」
そういってすぐに採掘を始めた。
サクラは採掘ポイントからミスリルゴーレムを離すべくどんどん遠くへと進んでいく。それを追いかけるミスリルゴーレム。
囮作戦は順調のようだけど、これはマズいかもしれん。
「サクラ! あまり離れないようにしてくれ! もしかしたら定位置から離れすぎると元の場所に戻る仕様かもしれない!」
「! う、うん! 分かった!」
これはMMOでよくある仕様だ。
中には出現位置からある程度離れると元の位置に戻ろうとするタイプのゲームもある。
ミスリルゴーレムがそういう仕様じゃないかもしれないけど、一応は警戒したほうがいいだろう。
「ここならいいかな……」
サクラは立ち止まって近づいてくるミスリルゴーレムに剣を向けた。
そしてミスリルゴーレムがサクラのすぐ近くまで来た時、サクラが動き出した。
「やぁぁ!」
サクラはミスリルゴーレムの足元を斬り付けるが……
「~~ッ! や、やっぱり斬れない! 固すぎて攻撃が通らないよぉ……」
「ならこれでどうだ! 《アーマーダウン》! 防御力下げたから少しはダメージが通るはず!」
「あ、ありがと! やぁぁ!」
サクラはさっきの同じように斬り付けるが、効いた様子は無かった。
「だ、ダメみたい! 全然変わらない!」
防御力が高すぎるせいで少し下げた程度では焼け石に水か……
予想はしていたけど、今の俺達では倒すのは不可能だろう。
「ダメージは無くてもいい! 攻撃し続けてヘイトを稼ぐんだ!」
「わ、分かった!」
それからサクラはひたすら攻撃し続けた。
ミスリルゴーレムの攻撃は思っていたよりは遅く、しっかり動きを見ていれば避けること自体はそこまで難しくないだろう。
だが一発でも食らえば即死は免れないだろう。そんなプレッシャーの中で避け続けるのは精神的に負担になるはずだ。
この状況で今の俺にできることは…………そうだ!
「それならこいつはどうだ! 《アースバインド》!」
スキルが発動すると、ミスリルゴーレムの足はピタリと止まってその場から動かなくなった。
「お! 効いたか! 今のうちにサクラは離れて休憩するんだ!」
「あ、ありがとぉ!」
サクラはミスリルゴーレムの射程範囲外まで離れて一息ついた。
「ガイ君すごいね! こんな大きい相手でも動けなくしちゃうなんて!」
「まぁ効くかどうかは賭けだったけどな」
防御力は高くてもデバフ耐性はそこまで高くなかったみたいだな。
これならかなり時間が稼げそうだ。
「それより気を付けて。アースバインドの効果が切れたらまだ動き出すだろうから」
「うん。ちゃんと見張ってるから――」
サクラが言い終わると同時にミスリルゴーレムがその場で屈んで膝をついた。
そして地面に手を置くと、地面の一部を削り取って握りしめた。
「なにやってるんだアレ……」
どうして地面をえぐりとったんだ?
ここの地面は石みたいに固いはず……
嫌な予感がする……
まさか……
「! サクラ逃げろ!!」
「え――」
そしてミスリルゴーレムは大きく振りかぶり、サクラに向かって手に持っていた物を投げつけた。
「!! きゃああ!」
「は、はぁ!? 投石!? そんなことするのか!?」
あ、あぶねぇ!
サクラはギリギリ避けられたけど、あんなの直撃したら即死に違いない。
「でも何であんな行動を……いやまさか……」
これはひょっとして俺のせいか?
もしかしてアースバインドみたいな動きを止めるスキルを使うと、行動パターンが変化するってのか!?
マズい……!!
「サ、サクラ! 近づいて攻撃してくれ! テレサを標的にされたらやばい!」
「わ、分かった!」
サクラはすぐに近づいて攻撃を再開した。
しかしこれは予想外だった。恐らく移動を封じるような状態になると、遠距離攻撃モードに切り替わる仕様になっているんだろう。
つまりはこういった囮作戦は対策されていたわけか。道理で簡単にデバフが効くはずだよ。
となると、もしかしたら他のデバフも使わないほうがいいかもしれない。
下手に状態異常にさせようものなら、また新たな行動パターンに変化する可能性もある。
自爆とかされかねないからな。ここは余計なことをせずに待つのがいいだろう。
サクラを信じてミスらないように祈るしかないか……
とりあえず現状はうまく戦えているようだし。
このまま採掘終えるまでいけるか……?
そんなことを考えている時だった。
「あ、あれ?」
サクラと対峙していたミスリルゴーレムが突如振り向いて違う方向に向きを変えたのだ。
そしてサクラを背にして違う方向へと歩き出した。
「ま、待ってー! そっち行ったらダメぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「! しまったランタゲか!」
ミスリルゴーレムはサクラと離れとある方向へと進んでいく。
その方向には――
「テレサちゃん逃げてぇぇぇ!!」
「へ?」
採掘中のテレサが居た。
「え、え、え!? こ、こっちに来てるぅぅぅ!?」
テレサが振り向くと、もう既にミスリルゴーレムは射程圏内に入っていた。
「た、タンマ! 採掘は急には終われなくて――」
ミスリルゴーレムはテレサを見下ろしながら拳を振り上げる。
「テレサ!!」
そしてテレサに向かって拳は振り下ろされた。




