テレサの提案③
テレサがやりたいことってのは、つまりビッグホーンの角を納品してクエストクリアするのではなく、プレイヤーに直接販売して利益を得ようとしている。ということだろう。
「やりたい事は理解した。けどうまくいけるのか?」
「やってみなければ分からないじゃない。まだ競合相手が居ない。今はチャンスなのよ!」
「そうかもしれんが……。けどなぁ。集めるのも一苦労すると思うぞ。ドロップ率自体は低くはないが高いわけでもない。時間が掛かるだろうし、売れるほど集まらないと思うんだけど……」
「ふっふっふ。そこであの武器が役に立つのよ!」
「あの武器?」
「詐欺師から手に入れたラッキーダガーのことよ!」
そういやそんな武器あったな。
詐欺師ってのは確かバンバとか名乗ってた奴のことだ。そいつから買おうとして騙されたんだっけか。
「それがどうかしたのか? あれは確かレアドロップ率を上げる武器なんだろ?」
「そのことなんだけどね。実は少し違うのよ」
「違う?」
はて。何か隠された仕様でもあるんだろうか。
「正確に言うなら、ドロップ率そのものを引き上げる効果があるのよ。これは説明文が不親切なのよね。でも効果自体は間違ってないから騙されてるってわけじゃないんだけどね……」
「へぇ。そんなに便利な武器だったのか」
なるほどな。
ドロップ率そのものを底上げさせるから、結果的にレアアイテムもドロップしやすくなると。そういう仕様になっているわけか。
思った以上に有用な武器なんだな。テレサが欲しがる気持ちも分かる。
「ビッグホーンと直接戦うのはサクっちなんだよね?」
「う、うん」
「ならサクっちにラッキーダガーを貸すわ。それを使ってどんどん倒してほしいの!」
「え、えええ!? 私に!? いいの!? よく分からないけどすごい武器なんじゃないの?」
「いいのいいの。あたしだとうまく戦えないと思うしね。ビッグホーンは苦手なのよ」
「でも……」
サクラは顔を俺に向けてきた。
いきなりこんなこと言われたらさすがに困惑するか。
「一時的に借りるだけならいいんじゃないのか。テレサがああ言ってるんだ。どうせクエストクリアのために倒しに行くんだし。ならついでに借りていけば効率もよくなる。ここは有難く厚意に甘えてもいいんじゃないかな」
「そ、そうだね。なら少し借りておくね。ありがとう!」
「遠慮なくどんどん使っていいからね!」
こういったネトゲ内での貸し借りは難しい問題だけど、テレサは躊躇することなく貸せるのは大胆だと思う。
テレサがそれだけ寛大な心を持っているのか、それともサクラのことを気に入って信用しているのか。
まぁどちらにせよ悪い気はしない。
「それじゃあ頼んだわよ! 一気に集めるんじゃなくて、ある程度溜まったらあたしの所に持ってきてくれると助かるわ。そうすればあたしが販売している間に狩りにいけるし」
「ん? テレサは行かないのか?」
「あたしが行ったところで役に立ちそうにないしね。ビッグホーンは苦手なのよ……」
「なるほど……」
「だから頼んだわよ! ガイっちにサクっち!」
「おう」
「うん!」
こうして俺とサクラはクエストを受注し、ビッグホーンが居る北方面へと移動することになった。




