決着
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おめでとうございます。
相手のパーティに勝利しましたので、お互いに提示されたアイテムを全て獲得する権利を得ました。
決闘モードを終了します。
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そんなシステムメッセージが表示されると同時に決闘モードが解除された。
「ふふん。大勝利っ! ぶいっ!」
満面の笑みでピースサインを向けてくるテレサ。
本当に嬉しそうだな。子供みたいに喜んでやがる。
「…………アホな……ワイが……負けたやと……?」
そんなテレサを気にする余裕が無いのか、バンバは地面に倒れたまま落ち込んでいるようだ。
「防御力を少し削って攻撃力に優先したのが原因か……? いやそんなアホな……それでも一撃でHP0にするのは不可能や……。ワイだってそんな芸当できへん……」
何やらブツブツ言っているようだが、負けたことがまだ信じられないみたいだな。余程自信があったとみえる。
テレサはそんな状態のバンバに近づき、見下ろして指差しながら叫ぶ。
「あたしの勝ちよ! アンタがどれだけ卑怯な手を使おうとも、最後には正義が勝つのよ! 少しは反省しなさい!」
「……………………」
「ちょっと! 何か言ったらどうなのよ!?」
「…………ワイらの負けや。それは認めたる。あんな隠し玉を持ってるとは予想外だったわ……」
「ふ、ふん! 分かればいいのよ!」
へぇ。意外と素直に負けを認めるんだな。
最初はあれだけ卑怯な手を使ってた癖に、やけにあっさり認めたな。
テレサも同じことを思っているようで、少し困惑気味だった。
「これに懲りたら二度と詐欺なんてマネしないことね! 今度同じことしたら絶対に許さないんだから!」
「……それはそっちにも非があるやろ。トレードシステムを過信しすぎやで」
「なっ……」
「現実だってどれだけ不正防止システムを作ろうが、結局は人間が確認を怠ったら無意味やろ。ヒューマンエラーってのは完全には無くならんのや」
「な、なによ! あたしが悪いっての!?」
「せやから最初からそう言うとるやろ」
負けは認めたってのに、こういうところは納得してないみたいだな。これはまた言い争いになりそうだ。
仕方ない。俺が止めるか。
「おいバンバ。確かにテレサにも落ち度はある。しっかり確認していればこんなこと起きなかったしな」
「ちょ、ちょっと! ガイっちまでこいつの味方するの!?」
「落ち着け。最後まで聞け」
テレサが膨れ顔で睨んでくるが無視して続ける。
「だがな。いくら被害者が無防備だからって、それに付け込んで悪事を働いていい道理は無いだろ。どれだけいっても悪いのは加害者なんだよ。責任転換するのもいい加減にしろ」
「………………」
「ガイっち……」
この手の問題は無くすのは不可能だろうな。世の中に犯罪が無くならないのと一緒で、詐欺行為も完全に防ぐのは難しいだろう。
だからこそプレイヤー個人のマナーが問われる。
「フンッ……。ワイなんてまだ優しい方やで。ホンマモンの詐欺師は事が済んだらすぐに姿をくらますからな。ご丁寧に相手してるワイらが変わりモンなんや」
「自慢できることじゃねーだろ。詐欺師に優しいもクソもあるかっての」
「これからは気ぃつけるこった。人間全員が善人だとは思わんほうがええで。少しは警戒するんやな」
「アンタに言われたくないわよ!」
そりゃそうだ。
詐欺師が言うセリフじゃないな。
「まぁええ。敗者は大人しく引き下がることにするわ。もう二度と関わらんから安心せぇ」
「こっちだって会いたくないわよ!」
「フンッ。ほらテメェらさっさと帰るぞ」
「お、おう……」
「ああ……」
バンバは倒れていた仲間2人を起き上がらせ、早々に立ち去って離れていった。
「…………あっ!」
「ん? どうした?」
「結局あいつ謝ってないじゃない! ずっとムカつく言い訳ばかりしてたから忘れてたわ!」
「もうほっとけ。向こうも二度と関わらないって言ってたんだから、今さらそんなこと要求しても面倒になるだけだ」
「むぅ~……。スッキリしない……」
バンバが去っていった方向を見つめたまま、しばらく不満げな表情で睨んでいたテレサだった。




