策略
「ふむ。ここだと少し狭いな」
「そうね。街の目の前だしね」
「せや! だったら少し離れた所に移動しよか! 文句はないな?」
「いいわよ。広い方が戦いやすいもん」
「決まりや。付いてこい」
2人は街からから離れるように移動し始めた。
俺もその後についていくことにした。
そしてある程度離れた所の木の側でバンバが立ち止まった。
「この辺でええやろ。ほな決闘モードにするで」
「いいわよ」
2人はメニュー画面を操作して決闘モードになるための準備をし始めたようだ。
しかし始めようかと思っていた時、バンバが待ったをかけた。
「ちょい待ち。準備をするから少し時間もらうで」
「? 何よ。今からやるんだから準備なんて必要ないじゃない。装備でも変えたいの?」
「いやそうやない。メンバーが揃ってから始めたいだけや」
「え? メンバー? 何のこと?」
「出てきてええで! こっちきいや!」
そう叫んだ後、近くの茂みから2人の男が姿を現した。
「え? え? だ、誰?」
「ワイの仲間や。こいつらもPTメンバーに加えさせてもらうで」
「え……えええええええええ!?」
おいおい。他にも仲間居たのかよ。
「またアホが釣れたようだな。悪く思うなよ。騙された方が悪いんだから」
「待ちくたびれたぞ。出番無いかと思ってたから安心したぜ」
2人ともテレサを見ながらニヤニヤしながらバンバの元に近寄る。
「カンニンしてや。このアホ女が喚くから時間かかってしもうたんや。これで全員揃ったな」
「ちょ……ちょ、ちょっと待ってよ! そいつら何よ!? なんでいきなり知らない人が出てくるのよ!?」
「何って、ワイの仲間だと言うたやんけ。今から決闘モードを利用するんだから集まっただけや。問題ないやろ?」
「ま、待ってよ……! まさかそっちは3人なの!? 3人同時に相手になるわけ!?」
「そらそうや。ワイ1人で戦うとは一言も言ってへんで。元からこのメンバーでやるつもりだったで。何か文句でもあるんか?」
さすがにテレサも驚きが隠せないようだ。
まぁ確かにバンバ1人で相手するとは言ってなかったしな。後から追加されても問題はないんだが……
「そ、そんなのズルいわよ! こっちはあたし1人なのよ!? 急に増やすなんて卑怯よ!!」
「何を言う。決闘モードはPT単位で登録することが可能なんやから、このくらい想定できるやろ。文句があるならそっちも仲間を呼べばええやんけ」
「で、でも……急にそんなこと言われたって……」
なるほどなぁ。バンバは最初からこうなることを想定して動いていたわけだ。
そういえば決闘モードの提案してきたのもバンバからだった。そして相手が提案を了承したら、仲間が待機しているこの場所まで連れてくる。これがバンバのやり方なんだろうな。
なんというか、詐欺師も色々考えるんだなぁ……
「はよせーや。こっちは貴重な時間を割いて相手してやるんや。誰も呼ばないならもう始めるで?」
「だ、だって……そんな急に来てくれる人なんて居ないよぉ……」
いきなり対人に協力してくれるフレなんてほぼ居ないだろう。
こうして急かすのも作戦の1つなんだろうな。
「ならこのままでええってことやな。ほないくで」
「う~…………あっ!」
テレサが俺を見て叫ぶ。
そして素早く近寄ってきた。
嫌な予感……
「ガイっち! 今のやり取り聞いてたよね!? お願い! 一緒に戦ってくれない!?」
「お、俺? 待ってくれよ。俺はこのゲーム始めたばかりなんだぞ。役に立たないと思うぞ?」
「でも居ないよりマシよ! このままだとあたし1人でやることになっちゃう!」
「で、でもさ……」
「お願い……!」
テレサが捨てられた子犬みたいな表情で懇願してくる。
…………仕方ない。
「……分かったよ。協力するよ。でも期待するなよ?」
「!! あ、ありがとぉぉぉ!」
「お、おう……」
表情の差が激しい人だな……
さっきまで泣きそうな顔してのにすごく嬉しそうだ。
「ハハハハハハ! まさか新規の人に泣きつくとはな! 恥も外聞も無いんやな! 惨めやのぉ!」
「う、うるさい! 卑怯者に言われたくないわよ! とにかく始めるわよ!」
「まぁええわ。言っとくがワイは新規だろうが容赦しないで。恨むならそこのアホ女を恨むことやな」
ニヤリと笑うバンバ。もう勝った気でいやがるな。
そんなバンバを無視し、テレサが俺に顔を覗かせてきた。
「ごめんね……こんなことに巻き込んじゃって……」
「別にいいよ。俺も暇してたし。でも本当に役に立てるとか限らないからな?」
「うん。気にしなくてもいいよ。最悪負けてもいいから……」
「ならどうしてこんな決闘を受けたんだ? 勝ち目がないなら諦めたらよかったのに」
「せめてあいつに……あの詐欺師の顔をぶん殴りたかったのよ……!」
そういうことか。せめて一矢報いたいと思ってたわけか。
まぁ詐欺さられたまま終わるのも癪だろうしな。
「じゃあPT組むね。後は決闘モードを了承するかどうかの確認画面が出てくるから、それを選ぶだけでいいわ」
「あいよ」
言われた通りテレサとPTを組むと、決闘モードの確認画面が表示された。
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【決闘モード】
パーティメンバーの テレサ さんが決闘モードを選択しました。
決闘モードを了承しますか?
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もちろん『はい』を選択。
これで準備完了だ。
「あとは賭けるアイテムを選ぶだけや。さっきの約束忘れてないよな?」
「20万Gでしょ。いいわよそれぐらいくれてやるわよ!」
「…………OKや。ならワイも選ぶで」
するとベットアイテム一覧にラッキーダガーが表示された。
「……! やっぱり持っていたんじゃない! この嘘つき!!」
「フンッ。今度こそちゃーんと確認することやな」
「言われなくても……!」
分かり切ってはいたけど、本当にすり替えていたんだな。
一応俺も確認しておこう。
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【武器】ラッキーダガー
ATK:50
・この武器で相手を倒した場合、レアアイテムのドロップ率が上昇する。
制作者:アル
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確かに本物のようだな。
これならテレサが欲しがるのも納得だ。
「ほな始めよか」
「いいわよ」
そして決闘モードの仕様に切り替わる。
この状態だと登録したプレイヤー以外からの影響は受けなくなる仕様のようだ。
「言っとくが後悔しても遅いでぇ? 対人の怖さを教えたる!」
不敵な笑みを浮かべるバンバがテレサを睨みつけた。




