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「人から聞いただけで形に出来るお嬢様凄いです!」
絶賛である。
というか、フレンチトーストなんて超簡単だと思うんだけど⋯⋯。
この世界の食事情が少し怖くなった。
何となく薄っすら覚えてる食事は、パン、サラダ、スープ、メイン、果物といった感じだった気がする。
アンナローズが余り食事に興味なかったせいか、アンナの記憶の中の食事情が曖昧なのだ。
「そういえば、作る時の手際も良かったですし」
「包丁使いも上手でしたよね」
そりゃ一人暮らし5年もやってればね。
推し活のために節約して自炊してたし。
使った皿を戻し、踏み台を片付けると、葵衣を持って厨房を出る。
後ろで料理人達がわちゃわちゃしてたけど、無視だ無視。
途中に会ったアドニアスにありったけの端切れ布とボタン、綿、裁縫道具を頼んで部屋へ戻る。
「葵衣の服作ろうかと思ったけど、葵衣といえばやっぱりジョーかなって」
二人の共通の趣味。
葵衣にも前ジョー人形を作ってあげたっけな〜。
私がナオ人形で、二人でお揃いにしてた。
「葵衣人形にボーイフレンド(笑)のジョー人形を作って差し上げましょう♪」
布が余ったらナオ人形も作ろう。
紙とペンを取り出し、ざっくりとした型紙を作る。
「缶バッチとか作れたらな〜」
こちらでも推し活を楽しもう。
グッズがなければ作ればいいのよ!!
材料とかの限界はあるだろうけど、やれるだけやってみよう!
だって、前は推しぬいもバッチも痛バも自作してたんだし!
そうと決まればナオのカラーを集めないと♪
「その前に葵衣のジョーを作らないとね」
ジョーのカラーは赤だ。
グループのムードメーカーで、いつも元気で賑やかがジョーだった。髪を赤くしていて、太陽みたいに笑うジョー。
そのせいか、葵衣の周辺は赤で纏められてるのが多かった。
「ま、私も人の事言えないけど⋯⋯」
ナオのカラーは青。クールで余り物事には動じないのがナオ。黒い髪と怜悧な顔立ちがカッコよくて、それ以上に歌声がホントに最高で!!
あの声でバラード歌ったら、もう涙が止まらなくなったのもいい思い出だ。
推しカラーって、つい手が伸びちゃうのよね。
おかげで私の周辺は青で纏められていた。
「この部屋もヲタ部屋にしてやろうかな⋯⋯」
広いし、やり甲斐ありそう。
流石にポスターやアクスタ、CD、Blu-rayなんかはないからなぁ⋯⋯。
でも祭壇は欲しい!
う〜ん、と唸っているとノックの音がした。
「どうぞー」
「お嬢様、先ほど仰っていた布とボタンと裁縫道具です」
「ありがとう、そこに置いといて」
「はぁ⋯⋯」
大量の布をテーブルの上に置き、困惑を滲ませながらアドニアスが出て行く。




