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推し似に迫られて困ってます!〜私、推しは遠くから見ていたい派なので!〜  作者: 媛乃 暁姫


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「ん〜!美味し〜い!」

「何これ凄〜い!」

 侍女見習い達は、作ったポテトグラタンに可愛らしく顔を緩めて身悶えていた。

「はふっあっふぃけろ〜ほいひ〜」

「火傷に気を付けなければいけないけど、これはもの凄く美味しいですね」

「そうなのよね。とても美味しいのよグラタンって⋯⋯」

 アンナは悩ましげに首を傾げた。

「美味しいのに何か問題でも?」

「うーん、私はいいのよ私は。ほら、まだ五歳と若いし?」

「えーと、お嬢様?」

「グラタンってカロリー高いのよ」

「カロリー?」

「あぁ、凄く太りやすいの」

 その瞬間、女子達の顔に衝撃が走った。

「⋯⋯え?」

「このグラタン一皿で、大体このパン三個くらい食べた計算ね」

 籠に入ったブールはスライスされて盛られている。

「スライス三個分ですか?」

「違うわ、丸ごとよ」

 一瞬にしてフリーズする年頃女子達。

「まぁ⋯⋯皆まだ若いから、食べた分だけ動けば大丈夫よ!」

 お嬢様、微妙に慰めになってません⋯⋯。

「美味しいものって、どうしても太りやすくなるのよね〜」

 前世でのジャンクフードがいい例である。

 でも食べたいものはいっぱいあるのだ。

 ピザにカレー、菓子パン、ハンバーガー、ラーメン、カツ丼、唐揚げとか!

 でも醤油や味噌、ソース、マヨ、ケチャップなんかも作りたい!

 他にはやっぱり⋯⋯。

「美味しくて可愛いスイーツも作りたいなぁ〜」

「お嬢様⋯⋯」

 太りやすい食べ物の話とか、美味しい食べ物の事なんて聞きたくなかった。

 侍女見習い達は、心中で泣きながら半ばヤケになってグラタンを食べきった。

 美味しさは罪でも、美味しいから止まらないのだから仕方ない。



 次の日からは、各場所に振り分けての見習い仕事になる。

 ハウスメイド、キッチンメイド、ランドリーメイドなど、家が広いほどやる事は多岐に渡る。

 上級貴族に仕える者として、貴族の常識や知識、言動や所作なども覚えなくてはならないので、マナー講座の時間も取らなければいけない。

 なにせ使用人にも階級がある事さえ知らない娘達なのだ。

 時間はいくらあっても足りない。

 取り敢えず最初は、所作の綺麗な二人を側に残した。

 栗色の髪の娘ドリーと、麦藁色の髪の娘ベッキーだ。

「二人は私の手伝いをしてちょうだい」

 アンナのやる事は決まっている。

 ドレスの仕上げだ。

 沢山作ったレースやフリル、リボンを縫い付け、ボタンを付けたら完成である。

 三人でやっても、細かい作業はなかなか終わらない。一人だったら気が遠くなるような仕事だ。

「本当はオーガンジーとか使いたいのよね⋯⋯」

「オーガンジーですか?」

「薄くて軽くて柔らかい布なの」

「ガーゼみたいですね」

「あ、ガーゼはあるんだ⋯⋯そうね、ガーゼよりもしっかりしてる布って感じかも」

「成る程」

「お嬢様は物知りですね」

「色々と知っておかないと後々大変なのよ」

 前世とのすり合わせもあるし⋯⋯と、後半は声に出さずに溜め息をついた。

「やっぱり貴族って大変なんですね⋯⋯」

「少し前まで、貴族は楽な暮らししてるかと思ってましたよ」

 この家の現状や、アンナの暮らしを少しづつ理解して、彼女らなりに思うことはあったらしい。

「仕方ないわ、生まれは選べないのだし」

「まぁ、そうですけど」

「でもね、生き方は誰でも選べると思うからね、だから色々頑張るの」

「応援しますお嬢様!」

「わたしもです!」

 二人の言葉に、アンナは子供らしく笑った。

「ありがとう」




 


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