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推し似に迫られて困ってます!〜私、推しは遠くから見ていたい派なので!〜  作者: 媛乃 暁姫


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「ふんふ〜ん♪」

 出来上がったボールチェーンを早速マスコットに通し、アンナはご満悦だった。

「推し活の第一歩って感じね」

 ヲタ部屋への改造計画で、頭の中はお花畑である。

「作りたいものがあり過ぎて困っちゃうわ〜」

 全くもって困ってない表情で、アンナは人形の服作りを再開する。

 前の世界のように便利な物がないので、服一つ作るにしても工夫しなければならない。

 ボタンだって穴を通すタイプしかないし、マジックテープなんて考えもつかないだろう。

 更にはゴムさえないのだ。

 そんな中で、いかにして前世のような服を作るかが課題だ。

「基本的に貴族は一人で服を着ないのよね」

 唯一自分で出来る着替えは、ネグリジェのようなパジャマだ。

「作りたい物作ったら、今度は自分の服に挑戦してみようかな⋯⋯」

 着替えくらい一人で出来るようになりたい。

 侍女に嫌がらせをされていたせいか、余計にそう思う。

 お風呂でだって、髪はグイグイ引っ張るわ、肌が真っ赤になる位に擦られるわで、散々だったのだ。

 ーー水ぶっかけてやったけどね。

 それからは一人で入浴している。

 というか、侍女に洗われていた時よりも、髪に艶も出てきている。

 これはアンナがトリートメント代わりに、ハチミツとオイルを塗ったせいなのだが、周囲は侍女が手抜きしていたとしか見ない。

 それをいい事にサクッと退場を願ったりした。

 侍従や侍女の雇用は家令の役目だ。

 こう何度も解雇者が出れば、家令だって解雇されかねない。使えない者を見抜くのだって、家令の役目なのだから。

 侍女を采配するのは侍女長の役目だが、この侍女長もまぁ使えなかった。

 我が家に対する忠義もなく、大した仕事もせずに食っちゃ寝、下っ端侍女に嫌がらせばかりか、女主人気取り。まぁ、それを仕切る筈の女主人が留守ばかりなのだから、当然といえば当然なのだが⋯⋯。

 近い内にこのクズ侍女長も追い出そうと目論んでいる。

 本当にこの屋敷は歪みまくっている。

 アンナにとって、料理人はマトモだっただけ有り難い。出来上がった料理を運ぶヤツはマトモじゃなかったけれど⋯⋯。

 本音はこの家丸ごと教育的指導したいが、最近はアンナが目を光らせているせいか、真面目に仕事する者も増えてきている。

「それとなく寄り子貴族に噂を流そうかな⋯⋯」

 上級貴族家で働く者は下級貴族が多い。

 家令や執事、侍女長などは、長年仕えていた下級貴族から選ばれる。

 主筋に子供が出来れば、家令や侍女長の子供が専属で仕え、それがまた次の家令や侍女長になるのだ。

 今の家令に子供はいるが、男子だけなので、将来は兄に仕えるのだろう。

 因みに侍女長は未婚だ。

 普通は家令や執事と侍女長が夫婦になることが多いのだが、彼らが全力で回避したらしい。

 まぁ、侍女長の性格の見目もよろしくないのだから、本人の自業自得なのだが⋯⋯。

 とはいえ、いつかは専属侍女は決めなくてはならない。

 貴族女子の専属侍女は嫁入りにも付いて行くため、なかなかなり手になる者はいない。

「これはまだ先でもいいかな〜、時間もあるし」

 お金や時間に余裕があるのは嬉しいが、貴族として考えることは山積みである。

「めんどくさ⋯⋯」

 アンナの呟きは広い部屋の中で霧散した。




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