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推し似に迫られて困ってます!〜私、推しは遠くから見ていたい派なので!〜  作者: 媛乃 暁姫


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「で〜き〜た〜♡」

 最後のマスコットを作り終え、アンナは満面の笑みで五つを並べた。

「うふふ〜壮観ね♪」

 前世では時間に余裕がなくて出来なかったけれど、五体並ぶとやはり嬉しい。

 葵衣人形を抱きしめ、マスコットを見せる。

「見て葵衣。かなりいい感じじゃない?」

 青、赤、白、緑、紫とそれぞれの衣装を身に纏ったマスコットは、それだけでも異彩を放っている。

「あとは、ボールチェーンが出来るのを待つしかないか〜」

 チェーンがないとマスコットの意味がない。

「それまでに葵衣の服も作ろっと」

 型紙は取ってあるので、先ずは布を選んでいく。

「やっぱり赤を基本に黒と白を合わせた甘辛風よね」

 鼻歌を歌いながら、デザインした服の通りに布を選ぶ。

 型紙に沿って布を裁断したところで、侍女が来客を告げにくる。

「小物屋が、お嬢様からの注文品の試作が出来たと訪ねて参りましたが⋯⋯」

 その言葉にガバリと顔を上げる。

「すぐにお通ししてちょうだい。それから、お茶の準備を」

 慌てて片付けて、紙とペンを持ち、鏡を覗いてからいそいそと部屋を出た。


「これがお嬢様の仰っていた物の試作品です」

 貴族の屋敷に気後れしている小物屋夫婦が、緊張しながら小さな袋からチェーンを数本取り出す。

 差し出されたそれをアンナが手に取ると、何とも馴染み深い。

「凄いわ、ちゃんとボールチェーンだ」

 感心していると、目の前の夫婦は明らかにホッとした。

「お嬢様が説明してくれたように使用してみましたら、本当に簡単に色々な所に飾れて、とても面白かったです」

「そうでしょう?」

 前世ではバッグのブランドタグに使っていたり、傘の目印チャームなんかにも使われていた。

 手軽にマスコットを付けたり出来るのは、これのおかげと言ってもいいくらいだ。

「これはね、小さなぬいぐるみを付けたい時にいいのよ」

「小さなぬいぐるみですか⋯⋯?」

「小さめのぬいぐるみがバッグに付いていたら、とっても可愛いと思わない?」

「そうですね⋯⋯思います」

「付ける場所も物も人それぞれだし、用途によってはとても便利なのよ」

 アンナは紙とペンを出し、さらさらとクマのぬいぐるみを描き、その頭の天辺にボールチェーンを付けた。

「こんな風に売っていれば、若いお嬢さんは買うと思うわ」

 アンナの絵を見た夫婦は、感心したように何度も頷いた。

「これに鍵なんか通してもいいのよね」

「そうか、ベルトに付けたりも出来るのか」

 旦那の方がポンっと手を打った。

「チェーンの長さによって首にかけたり出来るし、用途は無限よ」

 感嘆の息を吐き出し、夫婦は顔を見合わせると大きく頷き、ガバリと頭を下げた。

「これを是非私共の店で売らせて下さい!」

「もちろん構わないわ。私が欲しい時に優先的に買わせてくれたら、好きにしていいわよ」

「いえ、これはお嬢様が考えた物ですから、そういう訳にはいきません」

 小物屋夫婦は商品登録と、売り上げの3割をアンナに提示した。

 それに了承すると、夫婦は喜び勇んで帰って行った。 




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