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フライドポテトを食べ終わると、夕食までの時間を推しぬい作りに充てることにする。
葵衣人形のサイズを参考に型紙を作る。
「やっぱボーイフレンド(笑)は背が高い方がいいもんね」
なるべく実際の身長差を考慮して作りたい。
高身長のグループの中でジョーは一番背が低い。
といっても、180センチはあったのだから、他のメンバーの高さが伺える。
メンバー全員180超えとか、ホント神様に愛されまくりなグループだったわ〜。
長身を活かしたダンスは圧巻で、いつも見惚れていた。
「足が長いから、足を上げる振り付けはすっごく映えたんだよね〜」
そのままワタシを蹴って〜なんてファンもいた。
「人形つーか、ぬいぐるみに近い感じにするから、多少デフォルメしないとな〜」
フェルト生地があれば、ミニサイズとか作るのになぁ⋯⋯。
今日行った布の店にはなかったのだ。
明日の雑貨屋さんにあればいいけど⋯⋯。
「頑張れ、私!」
軽く頬を叩いて気合いを入れる。
ーー因みに、その日の夕食も一人だったのだが、付け合わせにフライドポテトが乗っていたのを見て、ちょっと笑ってしまった。
ーーその日の兄。
「これ、何?」
メインの鳥のソテーの脇に添えられた細長いもの。
「フライドポテトだそうですよ」
「フライドポテト?」
「何でもお嬢様が作ったとか⋯⋯」
フォークでぷすりと刺し、何度も眺めてから口へ入れる。
「ーーっ!?」
カリカリとした食感の後に来るホクホク感。
「ジャガイモ?こっちの黄色のはサツマイモか」
塩気が芋の甘味を引き出し、大変クセになる味だ。
「美味しいなこれ⋯⋯」
「それはようございました。お嬢様にお伝えしておきますね」
アドニアスは静かに笑って次期辺境伯を見ていた。
小物屋の店主は困惑気味に小さな客の話を聞いている。
「こんな感じで、この位のサイズのチェーンが欲しいんです」
アンナが欲しいのは鎖型ではなく、前世で良くあったボールチェーンだ。
「宝飾品店ではなく?」
「宝飾品店だと本物を使うじゃないですか、普通の飾り品なので、軽い鉄製でいいんです。玩具みたいなものですね」
「⋯⋯はぁ」
「注文出来ないのならいいんです。他を当たりますから」
構造を描いた紙をしまい、アンナは踵を返した。
宝飾品店に無理言って、鉄製で作ってもらうかな〜。などと考え、店を出ようとした時、店の奥から人が出て来た。
「いいじゃないの、作っておやりよ」
その声にアンナは振り向く。
その女性はニコリと快活な笑みを浮かべ、アンナの前で腰を折る。
「アタシにも見せておくれよ」
アンナが紙を差し出すと、女性は口元に手を充てて暫し考え込んだ。
「思ったより簡単そうだけど、こりゃ細かい仕事だねぇ⋯⋯」




