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神逆のクラウン~運命を狂わせた神をぶっ殺す!~  作者: 夜月紅輝
第10章 決戦

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第223話 会議

読んでくださりありがとうございます(≧∇≦)

「さて、ここからが本題よね。クラウンがどうなっているかわからない今、予想できる範囲で対策を考えなくちゃいけない」


「それもそうね。闇雲に突っ込んでは相手の思うつぼだし、それに全滅なんてこともあり得る」


「考えるにしたってまずゴリ押しは無理だろうな~。最終手段として残して置くことすら厳しいかもしれない」


「なら、まずは現状を整理するです。過去の主様の言動を思い出して違和感のある所をもう一度拾い上げるです。そこから始めるのが一番だと思うです」


 リリス達は再び客間の一室で机を囲むとクラウン救出作戦についての内容について考え始めた。この作戦に関しては前から少しずつ考えていたのだが、本格的に考えるのは今回が初めてだ。


 そして、その内容に触れる前にこれまでのクラウンの不審な行動についてを振り返ろうということになり、その議題にまずリリスが手を挙げた。


「まずは私からね。この中で恐らく私が今のクラウンと一番付き合いが長いから思うのだけど、単純なところから言えばクラウンの態度や考え方が大きく変わったということかしら? まあ、それは私達は()()してくれるようになったからだと思うけど」


「主様が私に会う前に少なからずの変化はなかったです?」


「そうね.......自分の目的なら人は道具ですらあるみたいな考え方に近かったわね。自分に被害が及ばないようにしながら、相手の利用できるところを利用していく。私がベルと会う前に切り捨てられなかったのは同盟という形で対等な立場にして必要最低限な情報しか与えられないようにしていたからかしら」


「でも、そう言う風な態度を取られれば無理くり情報を吐き出させようとする人もいるわ。今更言うことじゃないかもしれないけど、それはかなり危険な賭けだったわよ?」


「けど、結果的にそう言う風になったなら仁にも少なからずの良心があったのかもしれないね。それを本人が自覚しているかわからないけど」


「海堂君はあの裏切られた日のことをかなり根強く恨み意識を持っていたから。その時はリリス達を信用していたとしても、心のどこかは信用しきれてなかった可能性はあるね」


「他には何かないのか?」


 カムイにそう聞かれたリリスは思わず唇に手を押し当てて考えるようなポーズを取る。そして、「やはりあれしかないよね」と呟くと全員に聞こえるように告げた。


「私達はカムイに会う前に一人の人物と旅をしていたの。その人は人族で、同時にベルの祖父にあたる強い人であったわ」


「それってもしかしてクラウンに『ジジイ』って言われてた人のことか?」


「そういえば、帰ってきた時もミス・ベルはミス・リリスを説得する際に『命を張ってくれたじいじ』という言葉を言っていましたね。その人が現在こうしていないということはもしかして――――――」


「そうよ。その人は私達全員を救う代わりに死んでしまったのよ......ラズリの手によって」


「「「「「.......」」」」」


「でも、悲観することはしないわ。それは私達のために命を張ってくれたあの人への冒涜になるからね。今ある命は私達の意志のために使わなければいけない。その人もきっとそう願っているからね」


「私もそう思うです。私とじいじの思い出はあまりないですが、それでも確かな旅をしたことは事実です。そして、じいじは主様のことをとにかく気にかけていたです。それはじいじがその時から何かを感じ取っていたからと思うです」


「そうね。そして、その何かは旦那様がその御仁の死をしっかりと認識してから起こしてしまったようね。リリス、そうでしょ?」


「ええ、そうね.......」


 リリスはそう言うと思わずスカートの裾をキュッと握る。その表情は悲しみと同時に後悔の念も含まれているようであった。


「クラウンはあの時確かにおかしくなったわ。一瞬だけどね。まるで内なる何かと戦っているようであったわ。そして、私が思わず一人森に向かっていく歩いて行くクラウンを追いかけた時、見たのよ。まるでに二人のクラウンが同時に顔に現れたみたいな顔をね」


「二人のクラウン......?」


「顔半分は泣いていた。しっかりとした良心を持った男の子が大切な仲間の死に涙している感じであった。けど、もう反面は全くの別物。真反対の感情と言ってもいいかもね。私を殺すかのように睨んでいたわ」


「それでその後は結局どうなったの?」


「私が思いっきしビンタしてやったわ。あんまりにもふざけた顔だったからね」


「「「「「うわぁ」」」」」」


 全員から思わず声が漏れた。普通そのような異常事態になったなら驚いたり、仲間を呼ぶのが普通であろ。それをすぐさまビンタに移行できるとは......中々の胆力の持ち主である。


 その反応にリリスは思わず恥ずかしそうに咳払いすると続ける。


「仕方ないじゃない。片方泣いてて、片方睨んでいるのよ? そんな気持ち悪いのクラウンらしくないと思うじゃない。だから、すぐにビンタしてやったわけよ。それでその睨んでいた方の顔は消えて、その片方からも涙が出始めてたわね。ということは、あっちが本物の感情。その時からクラウンはすでに人の良心を取り戻し始めてたのかもしれないわ」


「仁は優しいからね。時におかしな言動する時もあったりするけど、誰よりも仲間思いで、人を信じていて――――――」


「雪姫、それ以上は言わない方がいいよ。朱里達はあの時裏切ったのは操られていたからとわかったけど、それでも雪姫は自分を責めちゃうからね。悪いと思う気持ちはいいけど、今はその時じゃない。それは海堂君と再会したときにしっかりと伝えてあげないと。そうしないと持たなくなっちゃうよ?」


「そうね。朱里の言う通りだわ。今振り返ってるのは反省するためじゃない。これからのためよ。だから、反省なんて、謝ることなんて後でクラウンにでも直接言いなさい。クラウンはそれぐらい簡単に受け止められるから」


「.......そうだね」


 雪姫は朱里とリリスの言葉にしっかりとうなづくと涙ぐんでいた目を袖で拭った。そして、「助ける」という意思の籠った強い瞳で俯きがちだった顔を上げる。するとここで、エキドナが一つ咳払い。


「コホン、それでは話を戻すけれど、確かその時からよね? 旦那様が過去の自分に降りかかった出来事を疑い始めたのは。これまで『全て裏切った奴らが悪い』って感じだったのに『本当にあいつらだったのか?』みたいに。言葉に直接出していた場面は少なかったけれど、顔で丸わかりだったわね」


「それでいうと俺も気になることがある。確か、この国で初めてレグリアに会った時のことだ。その時、あいつは確かクラウンに向かって『魔王の因子』って言ってなかったか?」


「確かそんなことを呟いていたわね。それにクラウンのことを『必要としている』とも言っていたわ。となると、今は何らかをされている可能性が高いわね」


「そういえばなんだけど、私ね、仁からラズリの攻撃を庇って受けて、それで仁に治療されながら別の場所に移動した時にうすれゆく意識の中で見たんだよ。仁が両腕に纏った黒い籠手のようなものを」


「それって主様がリル様討伐直後の時にその黒い腕をしてなかったです? 酷く禍々しく黒いものだったのでとても印象に覚えてるです」


「それってもしかしてこれのことですか?」


 そう言うとリルリアーゼは白い壁に向かって目からプロジェクターのように映像を映し始めた。その映像は動画のようになっていて、クラウンがリルリアーゼを倒した直後の映像が映し出されていた。


 その映像はクラウンの体が頭のすぐ近くにあったためか全体像は映らなかったが、右端の方に黒い籠手がしっかりと映っていた。


 そして、その黒い籠手はある時を境に突然粉々に砕け、空気中に姿を隠すように霧散していった。その光景を見て雪姫が思わず呟く。


「ねぇ、こんなものいつの間に持ってたの? というか、なんでそんなものを撮ってたの?」


 その顔は「ずるい」とでも言いそうな顔であった。それに「自分だったらもっと上手く撮れていたのに」と不満そうな顔でも。それの表情に気付いたのは朱里だけでその朱里は苦笑い気味の一方、リルリアーゼは事もなし気に言う。


「相手の戦力を分析するためですよ。リルは『破壊』を司っていますが、同時に神殿を任された守護者でもあります。まあ、今は神殿の守護は放棄していますが」


「ああ、うん.......」


 割と真面目な回答に雪姫は返す言葉が見つからない。それに、現状の話を脱線してしまったという意味でも言葉が見つからなかったので、とりあえず「ごめんさない」とだけ告げて主導権をリルリアーゼに渡した。


 すると、リルリアーゼはその映像を見ながら何やら考えに耽ったような顔をしている。そのことを疑問に思ったリリスはすぐに尋ねる。


「何か気づいたの?」


「気づいたというわけでもありませんが、その見た目からもわかるように何か異様な感じがしませんか? 恐らくそれがこれまでと繋がっていると思うんです」


「これまでってことは........クラウンの顔に現れた二つの表情とかレグリアが言っていた『魔王の因子』とかってこと? でも、言っておくけど人族は魔王にはなれないわよ? 魔王は『魔族の王』な訳でいくら強かろうと魔族が、特に有角族の魔族が許すわけないわ」


「けど、それがもし何らかの形で仕組まれていたことだったらどうでしょう? 私は現状もレグリアに一切の神に関する情報を制限されているので確定的なことは言えませんが、神の使いならばこの世界の誰も知らない魔法や呪いの類を使えると思っていた方が良いでしょう」


「ということは、リルちゃんは人族である旦那様が何らかの形で魔王になり得る可能性があるということが言いたいわけね?」


「言いたいと言いますか......私の演算能力から導き出した答えからするとその可能性が最も高いです。さらに言えば、直接何かされずに変化が起きているということは、呪いか精神魔法の類でありそれを解除するのは容易ではありません―――――この場で一人を除いては」


 そう言ってリルリアーゼが見つめた先は話の内容が若干追いきれずにキョトンとした顔をしているリリスであった。

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