帝国の魔法少女
合流地点にはもうすでに何人かの娘たちがたどりついており、物資輸送用のトラックに詰め込まれていた。
全員疲弊していた。
誰一人として話す余裕などなく、膝を抱えて蹲っている。
「あー、えーっと? これで全員だったか?」
でっぷりと太った男が面倒くさそうにつぶやく。
「…………」
彼は返答を求めて口にしたわけではない。
それが分かっているからこそ誰も何も言わない。
それが例え今朝と比べ何人か少なかったとしても。
「軍曹、五人程度少ないように思います」
「"あ"あ? その程度誤差の範囲だ。それに合図を出してやったのに戻ってこないゴミは捨て置け。それとも何かねクロノ伍長、我々栄えある帝国軍人が、たかが道具を探しに行かねばならんのか?」
「いえ、ただ私は事実を述べただけで……」
クロノと呼ばれた青年が軍曹に怒鳴られ追い返され、元の作業に戻っていった。
――その直後
「助けてください」
合流が遅れていた魔法少女が到着したのだろう。
しかしその声に前線から離れられた安堵などは込められてはいなかった。
「お願いです、七六を助けてください!」
聞き覚えのある番号が耳に入り、三〇はそちらに目を向けた。
七六は少女に背負われているようで、よくは見えないが少女の足元に血だまりができている。
「どうしたのミオ?」
当然のように隣に座っていた三七も、三〇が見ているものに興味持ったようだ。
「あぁ、あの子はもうダメだね」
それに関しては三〇も同感である。
あの量の出血をするような怪我ではもう戦えない。
「どうしてこんなゴミを持ってきた?」
「ご……み……? え、だってまだ生きて……」
「それなら俺によく見えるようにしろ」
少女は軍曹の言葉を受け、慌てて七六を背中から降ろし地面へと横たわらせる。
その姿は悲惨というほかないだろう。
手足は曲がってはいけない方に曲がってしまっており、ところどころ折れた骨が皮膚を突き破って出てきている。さらに折れた骨が肺に刺さったのか口から赤い泡を吹き出している。
魔法少女の防壁は銃弾程度なら痛いだけで済む。それが例え重機関銃であったとしても、狙撃銃であったとしても無傷である。
だが重砲のような大口径の砲弾の直撃に関してはその限りではない。
めったに直撃することはないが、万が一にでも自身に着弾すれば七六のような大けがを負ってしまう。そして大けがなんかを負ってしまった暁には――
「ふむ、どこからどう見てもゴミだな。こいつは処分だ」
「待って……待ってください。治療したらまだ戦えます。だから――」
「あー、うるさいな。よし、お前も処分だ」
「……………………………………え?」




