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星に願いを

 帝国の中枢、黒鉄城とも呼ばれる首都にそびえる王城にてハクメンは高笑いを上げていた。

「まさか、まさか壊されるとは、な」

 しかし周囲の者たちからすれば、突然笑い出した宰相に怪訝な目を向けはするが、何も言えない。

 ただ一人を除いては。

「どうしたハクメン?」

 豪奢な飾りつけをされた玉座に坐する皇帝に声をかけられ、ハクメンは口元を押さえて堪えようとする。

 たとえ玉座に座っているのが、先代が急病で亡くなったために即位させられた、年少の皇帝とは言え、無礼なことには変わりない。

「なんでも……ただ共和国に放っていた手の者が愉快なことになったようでして」

「それは、災難だな?」

「いえ、それでは続きをしましょう」

 ハクメンのせいで逸れてしまったが、皇帝を本題に戻るように促す。

 目線を前に戻せば段の下がった場所に、向かって左側に武官、右側に文官の高官たちが勢ぞろいしている。

 今は御前会議の最中だったのだ。しかしハクメンのせいで止まってしまったというのに、誰も非難することはない。

「それでは沙汰を言い渡す」

 皇帝の声が謁見の間に響き渡る。皇帝の目の前には一人の武官が拘束されていた。

「御考え直し下さい。このままでは帝国の民は飢えてしまいます。ここは戦争を一度取りやめ消耗してしまった国力を回復する時期です」

 彼は共和国侵攻に反対し、その名誉回復のために前線の指揮へと送られたというのに何の成果もあげられなかった無能者である。

 それが喚く見苦しい言い訳にハクメンは顔をしかめる。

「……陛下」

「ん? ああ、わかった。お主、不敬罪である。即刻捕らえ首をはねよ」

 皇帝はハクメンの意向を受けて、本来の処罰から変更し、処刑とした。

 帝国の皇帝はカイラ・フルルギス一八代皇帝である。しかし実権を握っているのはハクメンである。

 ゆえに誰もハクメンに逆らえるものはいない。

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