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星に願いを

 ボロボロの服が光にほどけ、霊装を形作る。

 その姿は三〇時代に着ていた軍服のような、しかしミオになってからアリシアに着させられたゴスロリドレスのような、二つのミオを象徴するデザインである。

 軍服風ワンピースとでもその衣装の腰には、豪奢な拵えに変わった立派な刀を帯び、それを吊り下げるための、肩から斜め掛けされたストラップを持つサムブラウンベルトが旨を横断する。

「急がなきゃ」

 アリシアとリズが魔力の練り上げを終わらせ、詠唱に入っている。

 しかしここからどれだけ急ごうと、距離的な問題で発動までギリギリ間に合わないくらいには離れている。

 距離が障害として、ミオの道をふさいでいる。

「万物が積みあがろうと、我が道を塞ぐことは叶わず《空間斬り(ショートカット)》」

 距離が立ちふさがるなら、それを斬り道を開くのみ。

 何もない目の前の空間に刀を振り下ろす。刀の軌跡に沿って空間が裂かれ、距離という障害を斬り伏せる。



 本来なら間に合うはずのない距離を魔法で開けた穴を通ることで、テレポートのように一瞬で移動した。

「だめ」

 二人に三七を殺させないために、二人の前に立ちはだから。もし魔法が止められなかったら、なんてことは考えていない。アリシアとリズなら大丈夫だと信じていた。

 アリシアもリズも突然現れたミオに驚きこそしていたが、当たらないように急ブレーキをかけ魔法を霧散させた。

「ミオ、危ないから離れて!」

 三七のことを庇うようなことをして無力化するチャンスを棒に振らせたミオに対してアリシアはミオの身の心配をしてくれる。

 そのやさしさを噛みしめながら、ミオは三七の方へと向きを変える。

「三〇、信じてたよ。さ、帝国に帰ろ!」

「ちょっと待ってて」

「うん、わかった」

 待っててとしか言っていないのに、三七は嬉しそうに頷いてくれた。おそらくミオが帝国に帰る気になったと勘違いしていそうだが、今はその勘違いがちょうどいいためそのままにしておく。

 ミオは二人の元へ歩いていく。

「ミオ、大丈夫? それにその服、霊装だよね? 何があったの?」

「そんなに一気に聞かれても困る」

「あ、ごめん」

 アリシアの過保護は別にいいのだが、今は時間が惜しい。三七と同じようにブーストはかかっているが、使い慣れていない魔法がどこまで持つか分からない。

「三七のことは任せてほしい」

 だから手短に結論だけを言った。

「ダメだ。あいつはお前を狙ってる。それなのにお前ひとりに任せるなんて、カモが葱を背負っていくようなものだぞ」

 予想通り否定された。でもここで引き下がれない。

「あの子はわたしと同じなの。兵器であることしか知らない。だからわたしに三七を説得させてほしい。三七はわたしの大切な仲間なの!」

「できるの?」

「分からない。でも三七のことを見捨てたくない」

 アリシアとリズはどうするかと顔を見合わせる。ここまで言ってもダメと言われるなら、やりたくはないが仕方がないが強硬策に出るしかなくなる。

「そこまで言うのならやってみろ」

「でも危なくなったら介入するからね」

 もう少しひと悶着あるかと思い身構えていたが、あっさりと許してくれた。そのことに気が抜けるようだが、ここからが本番だ。

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