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異変は突然に

 夕方になる少し前くらいにアリシアたちの補修は終わった。しかし溜まっていた補修は今日一日だけで終わるほど少なくはなく、あと数日はかかる見通しだった。

「はあ、明日からの補修のとき、あいつをどうするかだな」

 補修を受けに来るたびにいちいちミオの入場許可を取るわけにもいかないし、また例えとれたとしても今日のように他の生徒に面倒を見てもらうわけにもいかない。

「それは……ルプスさんに相談しないと、ね」

 一番手っ取り早いのは他の監視をつけることだが、アリシアはどうしてもミオのことを手放したくはない。それにミオが新しい監視役と打ち解けられるかという問題もある。

 とはいえ、ここであれこれ考えてもどうしようもない。ルプスさんの判断を仰ぐしかない。

「ミオを迎えに来まし……た?」

 吹奏楽部や軽音楽部よりもうるさいと有名な文芸部が静まり返っていた。しかも珍しく文芸部が本を読んでおり、来意を告げれば人差し指を唇に当て「シーッ」とされた。

「ん、どうしたんだ?」

 これにはアリシアもミオも頭の上にはてなを浮かべる。

 しかし部室の中に入ればその理由は一目瞭然であった。

「……スゥ……スゥ……」

 ミオがソファの上で丸くなり、眠っている。最近はかすかに表情の変化をみせるようになったが、未だに硬い表情金は眠っているときは程よく力が抜け、見た目相応のあどけない寝顔を見せている。

 これは部活名詐欺とまで言われている文芸部が、文芸部になるわけである。

「ねえリズ……これ起こさないとだめ?」

「お前が背負って帰るなら」

 しかし今から帰る以上起こさなくてはいけない。しかし気持ちよさそうに寝ているのを起こすのは、とてつもなく精神的な難易度が高い。

 できるかできないかで言われればできる。しかしこのかわいい寝顔を永遠に見ていたい。

 だが明日が建国記念日ということもあり、いつもより早い下校時間になっている。このままでは文芸部にも迷惑をかけることになるため、意を決してスマホで写真を撮りミオを起こした。

「おはよう、ミオ」

「あり……しあ……?」

 ミオは体こそ起こしたものの未だ頭が完全に起きていないのか、眠たげに目をこすりフラフラとしている。そしてアリシアの姿を見つけると、そのままボフッとアリシアの胸に倒れこみ再び寝息を立て始めた。

「ね、ねえこれ本当に起こさないとダメ⁉ 」

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