表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/54

異変は突然に

 その次の日にはミオの熱も下がり、完全復調を果たした。

「ミオ、よかった。本当によかったよ」

 なぜかアリシアに抱き着かれ、異様なまでに心配されて少し困惑気味である。

「いっとき好きにさせてやれ。ただの風邪だってのに、そうとう心配してたんだからな」

 ミオは誰かに心配されるというのは初めての経験だった。帝国にいたころはみんな生きることに精いっぱいで、他の誰かに気を回す余裕なんてなかった。

「ありがと……あ、アリシア」

 感謝を伝えるためにも初めてアリシアの名前を口にしたが、これはかなり恥ずかしくプイっと顔を背けてしまう。

「え……ミオ、私の名前……」

 アリシアは感極まったように、泣きながらさらにミオの体を抱きしめてくる。そんなにも名前を呼ばれることがアリシアにとって、うれしいことだと思っていなかったミオからすれば驚きの反応である。

「じゃあ今日は私が朝ごはん作ってあげる」

 語尾に音符がついていそうなほど甘ったるい声でアリシアが宣言するが、リズは大いに慌てた。

「おい待てアリシア、思い直せ! お前の料理は病み上がりに食わせるには刺激が強すぎる‼ 」

「大丈夫、今日はちゃんと美味しく作れそうな気がする」

「それは大丈夫とは言わねぇえええええ!」

 なぜリズがアリシアの料理を阻止しようとしているのかミオには分からないが、その温かく楽し気な二人にクスリと笑った。

 しかし、そんな暖かな雰囲気は一本の電話で崩れ去った。

「補修、か」

「すっかり忘れてたわね」

 二人が遠い目をしている。

 この二人は戦争に協力することを高校側が考慮して、受けられなかった授業分の補修が組まれていたのだ。それを忘れていたらしい。

「でも学校に行くのはいいけど、こいつはどうすんだ?」

「……連れて行っちゃう?」

「いや、ダメだろ。部外者を許可もなしに敷地内にいれるのは」

「じゃ、ルプスさん経由で許可とってもらお」

 そう言うとミオはそそくさとスマホを取り出し、リズが止める間もなく電話をかけた。

「許可とってくれるって。あと、なんか情勢がきな臭いから身の回りを気をつけろってさ」

「なんだそれ? 不審者でも出没してんのか?」

 何はともあれミオもいっしょに学校に行けることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ