異変は突然に
ミオは悪夢を見ていた。昔の自分……帝国の魔法少女であった三〇が目の前に現れ、今の自分……ミオから大切な何かを奪い取っていく最悪な夢だった。
不安になってしまった。
だからだろうか。ミオを心配そうに見ているアリシアの姿を見つけると、衝動的に抱き着いてしまった。
「ふぇえ⁉ ミオどうしたの?」
アリシアの胸元に顔をうずめる。鼻孔にアリシアの安心するような香りが広がり、さらに戸惑いながらも背中をなでてくれるアリシアの手に、安堵を覚える。
「ううん……なんでも、ない。ただ怖い夢、見ただけ」
「そう? なら、いいんだけえど……」
ようやく心が落ち着いたミオは、アリシアからいったん離れてベッドから降りる。しかし足元が安定せず、フラフラとしてしまう。
(なんだか、体が重たい)
心なしか体が火照っているようにも感じられる。
しかしそれだけで、少し我慢をすれば活動できないほどではない。だからミオはそれら体の異変をすべて無視する。
「それじゃ、着替える前に汗を拭こっか」
アリシアはそう言うと部屋から出ていってしまう。
「あ……」
追いかけようと足を前に出そうとするが、思うように体が動いてくれない。それにだんだんと体の火照りも強くなり、呼吸が苦しくなる。汗が滝のように流れ落ち、そのせいでパジャマが素肌に張り付き気持ちが悪い。
それを嫌いボタンを開けパジャマを脱ごうとするが、細かい作業をしようとすると景色がぐるぐると回って指がままならない。
ついには立っていることすらも辛くなってくる。
(あつい、きもちわるい)
ミオは崩れ落ちるようにして、倒れてしまった。




