異変は突然に
ミオがアリシアの元に来て、早くも一週間が経とうとしていた。
「今のところは……順調かな。でも、大変なのはこれから」
アリシアは隣で眠っているミオのの寝顔を眺めながら、誰も聞いていないことを確認して独り言ちる。
順調とは言っているが、いくつかアリシアにとっても誤算はあった。昨日のミオである。アリシアの知っているミオはそう簡単には心のうちを吐き出してはくれない。ましてや弱音を吐くなどもっとあり得ない。
しかしこれはどちらかと言うと嬉しい誤算と言えるだろう。アリシアはミオが心を開くまで数週間はかかるだろうと考えていた。それがたった数日で弱音を漏らしてくれるまで、信頼してくれたのだ。こんなにもうれしいことはない。
「このルートでなら救えるよね?」
しかしアリシアには確信が持てなかった。
失敗を山のように積み上げた。そのうちに失敗することが当たり前になってしまった。
弱い自分が鎌首をもたげ始める。
「ああ、ダメダメ。もう二度と手を離したりはしないって決めたんだから」
それを振り払うように頬を叩き、弱い自分を追い払う。そしてベッドから起き上がり朝の支度を始める。
しかしすぐに中断せざるを得なかった。
「あ、いや……かえして……いやぁ……」
ミオが突然うなされ始めたのだ。しかもヒューッヒューッと呼吸が荒く、汗も尋常ではないほどあふれ出ている。
「ミオ、どうしたの⁉ 」
アリシアは血の気が引く思いであった。
さっきまで穏やかな寝息を立てていたというのに、いったいアリシアが離れた短時間の間に何があったというのか。
「ミオ……ミオぉ‼ 」
とりあえずこのままにしておくことはできない。
ミオの体をゆすり、意識の覚醒を促す。詳しいことはミオが起きてから判断すればいい。
ミオの瞳が薄く開かれる。




