共和国での生活
お風呂もアリシアが頭を抱えるほど結果となったが、ミオのお風呂嫌いが多少緩和されたと考えれば良かったのだろう。まあ、緩和とは言っても、水をかけられるのが平気になった程度で、結局アリシアとリズの二人がかりで入浴させられた。
だが次に浮上してきたのが、リズがどこで寝るかという問題である。いつも泊まりに来た時に提供していた部屋は、現在ミオが使用している。そして、この家には床に敷く布団は備えられていない。
普通に考えれば、友達であるアリシアと同じベッドで寝ればいいのだが、シングルベッドに二人寝るのはさすがに狭い。さらにはアリシアが現在の自室にリズが入ることを全力で嫌がったのだ。
三人による厳粛な話し合い(ミオはボーっと聞いているだけ)の結果、ミオの部屋をリズに提供して、ミオがアリシアといっしょに寝ることになった。
「ほんとは誰も入れたくないんだけど……」
と前置きしたうえで、アリシアは自分の部屋にミオを招き入れた。
扉の先に広がっていたのは、ピンク色の壁紙やカーテンで彩られ、棚とベッドには所せましと愛らしい見た目のぬいぐるみが並んでいる。またベッドには天蓋がついていて、昼間にミオが着せられたゴスロリドレスのようなフリルやレースで飾り立てられている。
アリシアの普段のイメージとはかけ離れた少女趣味な部屋である。
「ほら私ももう十六歳で高校生だし、こんな趣味を持ってるなんて、その恥ずかしいから友達には知られたくなかったからというか……」
アリシアは自室に誰も入れたがらなかった言い訳を早口でまくし立てる。
こちらの少女趣味な部屋の方がアリシアにとって趣味部屋兼本当の自室であり、ミオに提供した方の部屋は勉強部屋兼友人の目を欺くためのカモフラージュ用の部屋であった。
しかしミオは初めてこの部屋に入ったとき、なんかすごい部屋、という感想しか抱いておらず、恥ずかしいだのなんだのと言っているアリシアのことを不思議そうな表情で眺めていた。
やがてそんなミオに気付いたのか、アリシアは「そういえば、こういう感覚も分からないんだった」とつぶやいてベッドの方に移動した。
「ほら、おいで。いっしょに寝よ?」
促されるままミオはベッドにもぐりこむ。
「おやすみ」
そしてゆっくりと目を閉じた。




