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共和国での生活

 アリシアの家に来てから3日ほど経ったある日、ミオはかつてない窮地に陥っていた。

 どのくらいの時間、この壁と布で囲まれた狭い空間に軟禁されているのだろう。

 どうしてこんなことになってしまったのか、どうしてあの時何も考えずノコノコついていってしまったのか、今になって悔やまれる。

 だが今になって悔やんだところで、後の祭りである。

 もう、あの悪魔から逃れることはできない。

「次これ着て……あ、あとこれも!」

 かなり上機嫌なアリシアに次から次へと服を渡され、それを単純作業のように着替え続けるということをやり続けている。

 なぜこんなことになっているのか?

 答えは単純だ。ミオが着る洋服がないためである。

 昨日はアリシアの洋服を貸してもらっていたのだが、いつまでも借り続けるわけにはいかない。

 ミオとしては着る服は一張羅である軍服で良かったのだが、どうも共和国的にアウトらしい。

 そんなこんなでミオの服を買いにショッピングモールに行くことになった。当初はアリシアのお金で買う予定であった。しかし朝一にルプスから連絡が来て、生活費や生活必需品などの購入に関しては魔法少女保護機構が全額負担してくれることになった。

 だからこそアリシアの、あのハイテンションぶりである。

 ミオを試着室に軟禁して服の試着をさせ、ミオが着替えているうちに次の服を選ぶという鬼の所業を行っている。

「……これ……着るの?」

 さらに言えばアリシアの選んでくる服は、最初こそワンピースやチュニックといった普段着として使えるものであった。だが少し前から明らかに服の選出が変わってきている。

 今ミオが持たされている服は、白いブラウスと黒いワンピースである。ここだけ聞けば普通の服のように思えるかもしれないが、ワンピースには白いレースやフリルによって飾り立てられ、ウエストを締めるためのリボンの装飾がなされたコルセットが付属している。

「もー着替え終わった~? 開けるよ!」

「……もう……少し」

 だがミオには着替えないという選択肢は存在しない。

 抵抗することは無駄だと、最初の数回で学んだ。

 あまりもたもたとしているとアリシアが試着室に強襲をかけてくる。そして着替え終わっていないことを確認すると、「もー仕方ないなぁ」と満面の笑みを浮かべながら強制的に着替えさせられる。

「えーっと、あとはこの紐を引っ張って……」

 ゴスロリ風ファッションは少し他の服よりも複雑な構造をしているが、何回も着替えさせられ続けるうちに手慣れてしまった。

 だが何回も着替えているものの、未だ慣れないものもある。

(うう、ヒラヒラしてなんか無防備だし、スースーして気持ち悪い)

 ミオは帝国で支給された軍服しか服を持っていなかった。しかも軍が採用しているサイズは成人男性を想定されたもので、かつ男社会の風潮が色濃く残る軍隊のものだ。女性用はオーダーメイドするしかなく、もちろんのこと消耗品にそのような資金をかけるわけがない。帝国の魔法少女はサイズの合わない男ものの軍服を着るしかなかった。

 つまるところ、ミオはスカートを着る経験は絶無であった。

 だがミオにはもう一つ、スカート以上に慣れないものがある。

「……これは、だれ?」

 鏡に映る自分の姿である。

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