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若将軍は旅がしたい!  作者: 高嶺の悪魔
第六章 影の呼び声

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94/121

馬蹄砦へ 2

いつの間にか評価ポイントが100点を超えている…

お読みいただきありがとうございます。もう少しお付き合いくださいませ。

 まあ、立ち話もなんですからと促されて城門を潜る。

 乗馬したまま入城しろというノーバスター卿の言葉には頑として従わなかった

 そんなことをしたら勘違いするヤツが余計に増えるだけだ。


 馬蹄砦を囲う二重の城壁。第一と第二の壁の間では田畑が作られ、家畜が飼われている。

 籠城の際、ある程度の自給自足ができるようにするためだ。当然、各所に井戸も掘られている。

 広大とまではいかないが、それなりに広い土地だ。当然、畑や家畜の世話をする者が必要となる。そうなれば、農夫たちが住む家もいる。という事で、第一の壁の内側はちょっとした城下といった雰囲気だった。

 しかし。中へ踏み込むなり、襤褸を纏った者たちが、憔悴しきった顔で道端に座り込んでいるのが目に入った。道端だけではない。広場や民家の軒下にもいる。


「彼らは避難民です」


 訝しむように彼らを眺めていると、隣からノーバスター卿が憂いに満ちた声で囁いた。


「近くの村や街から逃げてきた者たちで。報告では、軍の砦はどこも同じような有様だとか……まあ、後ほど詳しくご説明します」


 そういった彼に、無言で頷きを返す。

 どうやら、状況は思っていたよりも悪いようだ。

 できるだけ、彼らを見ないようにして第二の壁へ向かう。

 彼らを憐れむのは簡単だが、それで人が救えるわけでもないからだ。

 石を積んだだけの第一の壁と違い、第二の壁はきちんと組まれたものだ。上部は歩廊になっており、砦と直接繋がっている他、凹型の狭間を設けた胸壁が備えられている戦闘を前提とした造りになっている。


「あ、兄貴!?」


 第二の壁にある砦の正門を潜ると、近くで何やら作業をしていた大柄の兵が大声を上げながら駆け寄ってきた。


「やっぱり兄貴だ! その節は本当にお世話になりまして……」


「ええと……」


 誰だったか。こんな巨漢の弟を持った覚えはない。

 そもそも俺は一人っ子だ。

 そう首を捻っていると、兵は少し傷ついたような顔を浮かべて兜を脱いだ。


「俺ですよ、ダイツです。ほら、アノマの街でここの紹介状を書いてもらった」


 忘れたんですかとしょぼくれる禿頭の巨漢。

 それに、ああと手を打つ。

 あの黒い剣士と乱闘騒ぎを起こした街で出会った元傭兵だ。確か、騎士を目指しているとか言っていたから、遊ばせておくくらいならと思ってこの砦の指揮官に紹介状を書いてやったのだ。

 あれから色々と楽しいことがあったせいですっかり忘れていた。

 思い出したついで、あの街はアノマという名前だったのかと今さら知る。


「兄貴はいったいどうしたんですか、こんなところに?」


「えーと……」


 ダイツの質問にどう答えたものかと迷っていると、ノーバスター卿が代わりに答えてくれた。


「守備兵、悪いがアルバイン将軍はお忙しいのだ。積もる話もあろうが、それは後にしてくれ」


「これは城塞指揮官殿!? は、はいっ、失礼しました!」


 ダイツはようやく俺と一緒にいるのが誰なのか気付いたらしい。慌てて背筋を伸ばすと、ノーバスター卿に敬礼をした。が、それも一瞬のこと。


「いや、アルバイン将軍!?」


 混乱しているようで意外と人の話を聞いているのか、面倒なことに気付いてくれたようだ。口をパクパクさせて俺を見つめてくる。


「いや、始めあの男が貴方からの手紙を持ってきた時は驚きましたが、雇ってみればどうして中々筋が良い。あの巨体ですから腕力は申しぶんないし、体力もある。既に同時期に雇った兵の中では頭一つ抜きんでています。使える男です」


 茫然としているダイツをその場に置き去りにして俺を砦へと案内しながら、ノーバスター卿が耳打ちしてきた。


「ああ、ちなみに同封されていた準貴族章はお預かりしています。上には何も言ってません」


 そう付け加えて、彼は脅すような笑みで俺を見た。


「やっぱりああいう使い方は不味かった?」


「そう訊くくらいなら、初めからやらないでください」

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