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若将軍は旅がしたい!  作者: 高嶺の悪魔
第六章 影の呼び声

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魔軍再来 4

 赤黒い炎によって視界を確保した騎士たちは、三度目の突撃でオークの群れを完全に粉砕した。逃げ遅れていた者たちも包囲から解放され、攻撃へと転じている。

 雑魚の始末は彼らに任せておけばいいだろう。

 そう思った俺は、一匹のオークに狙いを絞った。

 他よりも格段に身体が大きく、良い装備をしている。この群れを率いている上級個体ハイ・オークだ。


 行く手を阻む雑魚を切り捨てながら肉薄する俺に、あちらも気付いたようだ。取り巻きの雑魚を怒鳴りつけて、一斉に突っ込ませてくる。俺に向かってくるオークどもを、二方向から矢が襲った。一方はレティからの。もう一方は騎士たちからの援護射撃だ。

 鎧や兜の隙間を的確に射抜いているレティに比べ、騎士たちの矢はほとんど黒鉄の鎧に弾かれているが。一瞬でも奴らの足を止めてくれれば、それだけで十分だ。

 ハイ・オークとの間にいる三匹の懐へと滑り込み、剣を振るう。こいつらの鎧の弱点は首の付け根と脇の下だが、精霊鋼の刃はそんなことなど関係なしにオークの肉体を切断する。足を切り落とし、胴体を上下に分割し、首を刎ねる。


 一呼吸の間に三匹を片付けた俺に、ハイ・オークが忌々しそうな唸り声をあげながら腰に差している剣を引き抜いた。雑魚が使っているような黒い鉄塊のような剣ではない。まともな刀鍛冶によって鍛えられた、鋭い刃を持つ長剣だ。

 突っ込む俺を迎え撃つようにハイ・オークが剣を振り上げた。

 そのなんとも無様な構えに、思わず失笑が漏れてしまう。

 まともな剣を持っていたところで、所詮はオーク。剣術など理解する頭をもたない。

 ハイ・オークが振り抜いた大振りな一閃を大きくのけ反って躱し、その足元へと滑り込む。一瞬で俺に肉薄されたハイ・オークは慌てて剣を引き戻そうとするが、もう遅い。

 上級個体の生命力が他の雑魚よりも強靭なのは前回の戦いで学んだ。心臓を潰しても、首を刎ねても動くかもしれない。

 なので、まずは手足を奪った。精霊鋼の刃が三度冷たく閃き、ハイ・オークの四肢を切り落とす。

 手足を失ったハイ・オークは驚愕と憤怒の唸りを上げながら地面に転がった。

 立ち上がった俺はその醜い顔面を見下ろす。何かを喚いている。酷く汚い言葉だ。人の言葉に訳すのはやめておこう。

 それに、コイツが何を喚き散らしていたところで、もうなんの意味もない。


 ハイ・オークの頭を叩き割ってから辺りを見回すと、戦闘は終了していた。

 騎士たちは馬から下りてオークの死体を一か所に集めている。奴らの死体は放っておくと草木を腐らせ、生き物を蝕む悪疫の原因になるから、油をかけて焼くのだろう。


「アルバイン将軍!」


 戦闘後の疲労感から、ぼんやりしながら化け物の死体を山積みにしている騎士たちを眺めていると、隊の指揮官である壮年の騎士が近づいてきた。

 やはりまだ名前が思い出せないので、適当に手を上げて返事を返しておく。

 ぱっと見た限り、これといって怪我はしていないようだ。


「貴方という人はどうしてこう、居て欲しいと思った時に来てくれるのですか」


 感激したように言いながら、俺の両手を握りしめる指揮官。むさ苦しいのでやめて欲しい。


「ヴェルダン卿、アルバイン将軍とはまさか……」


 隣にいた騎士の一人が彼にそう尋ねてくれたおかげで、名前を思い出す手間が省けた。

 部下の問いかけにそうだと頷いたヴェルダン卿に、周囲の騎士たちがざわめく。銀髪じゃないかと驚く声に混じって、何やら最上級大将とか、連合軍元帥なる聞き覚えの無い言葉が聞こえてきた。

 何のことだろうか。気になるが、聞いたら聞いたでろくでもない答えが返ってきそうだ。

 なので、今は聞かなかったことにしよう。


「ローセオンに来ているとは聞いておりましたが、まさかこんな形で再会することになろうとは。また助けられてしまいましたな」


 ヴェルダン卿は嬉しそうに笑いながら、俺の両手を離した。

 やはりローセオンに来ていたことはバレていたか。まあ、馬蹄砦の指揮官に手紙を送った時短でそれは覚悟していたが。


「おーい、ルシオー」


 そこへレティが呼ぶ声が聞こえた。声の方向へ目を向けると、ちょうどラキアと一緒に丘を下りてくるところだった。


「終わったんなら呼びに来なさいよ。まったく」


「でも。怪我はしてないみたいね。良かった」

 少し不機嫌そうな顔で腰に両手を当てるレティの横では、ラキアがほっと胸を撫でおろしている。


「……あの、将軍。こちらのお嬢さんがたは?」


 そんな二人を見て、ヴェルダン卿が俺に訊いた。


「ええと、なんて言うか……一緒に旅してる仲間?」


 どう表現したらいいのか分からず、語尾が疑問形になってしまう。が、ヴェルダン卿は納得したようだった。妙な表情を浮かべながら、ああ、と頷いている。


「失礼ですが、リタ殿は?」


「リタならアンヌ―レシアの王都にいるぞ?」


「そうですか……」


 なんでリタの名前が出てくるのかと訊き返す俺に、彼は何かを悼むような微笑みを浮かべながらラキアとレティを見た。


「相変わらずですね、将軍」


 何言ってんだコイツ。

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