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若将軍は旅がしたい!  作者: 高嶺の悪魔
第六章 影の呼び声

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魔軍再来 2

「なんつー無茶をするのよ! こっちの心臓が止まるかと思ったわよ!」


 丘の上に戻るなり、レティから怒られた。


「大丈夫だったろ?」


 そんな彼女に肩を竦めて応じる。

 そんな危険なことをしたつもりはない。この程度の偵察なら今まで散々やってきた。

 敵がどこにいるのか分からないのならともかく、あれだけ堂々と姿を晒している連中に見つからないように近づくのはそれほど難しいことでもない。

 それに最悪、見つかった時の算段もしてあった。

 そう言った俺に、レティは酷く疑いを孕んだ目を向けた。


「ちなみに聞くけど、その算段って、どうするつもりだったの?」


「力の限り斬って斬って斬りまくる」


「訊いた私が馬鹿だったわ」


 それ以外にどうすれば良いのかと答えた俺に、呆れたように息を吐くレティ。

 この蛮族め、という呟きが聞こえた気もする。


「それより。アイツら、西の谷から来たオークじゃない」


「どうしてそんなことが分かるのよ」


「西の連中と合流するとか言っていた。奴らが西から来たのなら、そんなことは言わないだろ」


「それはそうね……って、ちょっと待って」


 ふむと考え込むように顎に手を当てたレティが、ふいに顔を上げた。


「アンタ、奴らの言葉が分かるの?」


「覚えた」


 その方が殺しやすい。


「うっわ。徹底してるわね……どうでもいいけど、私の前で奴らの言葉を使わないでよ。耳が腐るから」


 俺だって奴らの言葉を口に出したくなどない。舌が腐ったらどうするんだ。


「まあ、それで。奴が西から来たわけじゃないとして。それじゃあ、いったいどこから来たっていうのよ?」


 気を取り直したように首を傾げるレティに、頭の中でローセオンの地図を広げる。

 正直、ローセオン南部は辺境もいいところだ。前回の戦で散々踏み荒らされたため人里もまだ少ないし、大規模な魔軍の残党が潜んでいたとしても不思議はない。

 しかし、あれだけの装備を整えるためには相当しっかりとした拠点、砦が必要になる。辺境とはいえ住む人がいる以上、騎士団も定期的に巡回しているだろうし。そんな場所があれば見逃すはずがない。

 と、そこまで考えた所で、何処からか馬の嘶きが聞こえてきた。


「ルシオ、あれ!」


 それまで会話から外れていたラキアが、薄暗い平原の一点を指さして俺を呼ぶ。

 彼女が示した先に目をやると、松明をもった一団が高速でオークの群れめがけて突進してくるところだった。

 薄暗い平原を蹄の音が揺らしている。


「ローセオンの騎士たちだ」


 先頭を走る旗手が手にしている、白馬の描かれた旗を見て呟く

 数は五十騎ほど。ローセオン騎士団の編制でいうところの、一個大隊に当たる数だ。

 この辺りを巡回していたのだろうか。いや、それにしては規模が大きい。となると初めから戦闘を目的としていた可能性の方が高い。

 やはり、この辺りで何かが起こっているのだ。


 我知らず剣の柄に手を掛けて立ち上がったところで、騎士団の先頭がオークの群れに突っ込んだ。薄闇に白刃が煌めき、槍の穂先が閃く。突然の敵襲に喚き散らすオークどもを、強靭な軍馬とそれを操る騎士たちが狩りたててゆく。

 だが。

 どうやら彼らは、そこから一つの丘を挟んだ向こう側にいるオークの群れには気づいていなかったようだ。仲間の喚声を聞きつけた別隊のオークどもが丘を駆け上がり、そこから騎士たちを弓で狙い撃ちし始めた。思ってもない方向からの射撃に、騎士たちの足並みが乱れる。何本かの矢は仲間であるはずのオークを射抜いているが、奴らには知ったこっちゃないのだろう。


「どうする、ルシオ」


 俺に訊きながら、レティはもう背負っていた長弓を手にしていた。

 見下ろす先では味方の援護を受けて勢いを盛り返したオークどもが騎士たちを包囲しかけている。

 これは考えている場合じゃないな。

 それにどの道、この数のオークを放っておくわけにもいかない。


「ラキア、ここから動くなよ。レティと一緒にいるんだ」


 言いながら、夜光石の指輪を金剛石のものへと付け替える。


「レティ、ここから援護できるか?」


「少し暗いわ」


 彼女の答えに、俺は背中の短剣を引き抜いた。光刃が露わになり、辺りがぱっと明るくなる。レティがこれならいけると頷いたのを見て、俺は短剣をラキアに渡した。

 便利だが、戦いには役に立たないものを持っていくわけにはいかない。


「んじゃ、行きますか」


 レティと強襲の手順を簡単に取り決めた後、精霊鋼の剣をすらりと引き抜いて、俺は丘を下った。

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