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若将軍は旅がしたい!  作者: 高嶺の悪魔
第五章 三人旅

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ドワーフの街 7

 翌朝。ラキアたちが起きてくるのを今か今かと待ち構え、ようやく昼前に起き出した二人を引っ張って温泉屋まで急いだ。


「おっちゃん、三人だ!」


 二つある入り口の間にある受付台へ銀貨を三枚、叩きつけるように置く。

 受付をしていたのは昨日と同じドワーフだ。確か、ノルズと呼ばれていた。思わずおっちゃんと呼んでしまったが、実際の年齢は分からない。


「ああ、お前らか」


 ノルズは目の前に置かれた銀貨から、もじゃもじゃの顔を上げて俺たちを見る。それから何を思ったのか。銀貨を掴むと、それを俺に突き返した。


「ゴウェルさんから言われとる。金は要らん」


「あら、昨日とは打って変わって気前がいいじゃない」


 レティが茶化すように口を挟む。それにノルズは少しだけ嫌そうな顔をした。


「わしだってタダで入れたくないわい。じゃが、ゴウェルさんから言われちまったら仕方ねえ」


 不満そうな顔のまま、彼は背後にある入り口をそれぞれ親指で示す。


「右が女で、左が男だ」


 なるほど。男女で分けているから、入り口が二つあったのかと今さらに納得する。

 確かにまあ、男女が同じ場所で湯浴みをするのは問題があるだろう。

 それから簡単に温泉への入り方を説明された。溜まり湯が汚れるから、湯に浸かる前には必ず、身体を流せと釘を刺される。それから、身体を拭く布も持っていったほうが良いと教えられた。


「ところで、荷物はどうする?」


 頷いてそれぞれ中へ入ろうとすると、そんなことを聞かれた。


「服を着たまま風呂には入れんぞ。当然、剣も駄目だ。荷物、預かっておいてやろうか?」


 なるほど。考えてみればその通りだと思ったので、御言葉に甘えようとしたところ。


「荷物一人分で、銀貨一枚じゃ」


 にやっと笑いながら、右手の親指と人差し指で輪を作るノルズ。

 俺たちはなんとも言えない表情を見合わせながら、順番に入ることにした。まず、ラキアとレティ。その間、俺は二人の荷物を見張る。二人が出てきたら、役割を後退して俺が温泉に入ることになった。


「湯浴みなんて久しぶりだわ」

「まーねー、旅していると身体を拭く分くらいしか沸かせないものねー」


 やはり女の子なのか。顔を輝かせているラキアほどではないにしろ、その後を追うレティの足取りもいつも以上に軽やかに見える。

 そんな二人をちょっと羨ましそうに見送る。俺も早く入りたい。

 なんて事を思っていると、建物の中からレティの叫び声が聞こえた。


「ちょっと! 男女別々じゃなかったの!? おっさんがいるわよ!!」

「あたしゃ女だよっ!!」

「うそっ!?」


 しまった。髭を三つ編みにしているドワーフは女性だと教えておくべきだったか。


 二人が出てきたのは、それから半刻ほど後だった。


「凄かった。あんなに沢山のお湯が使えるなんて、すごい贅沢だわ」


 ホカホカしながら、そう感想をいうラキア。その横では。


「……負けてない、私はまだ負けてないのよ」


 何か知らんが打ちのめされているレティ。


「どうしたんだ、これ?」

「えーと、あはは……」


 ラキアにそう訊くと、誤魔化すような笑みが返ってくる。


「ルシオ」


 そうこうしていると突然、レティがきりっとした顔を俺に向けた。


「何?」


「私にはまだ未来があるの」


「そうだな」


 文字通り、永遠にな。


「私はまだ、成長途中なの。羽化する前の蛹なの。生まれたての子羊なの。これから大空へ飛び立つ雛なの」


「そうなのか」


 何言ってんのか全然意味が分からないが、とりあえず頷いておく。


「だから、これからなのよ」


 そう言って、自身の胸に両手を当てながら何故か親の仇のようにラキアを睨みつけるレティ。

 あー、これは。

 なるほど。確かに、レティは細身だよな。

 対して、ラキアの方はまあ、年齢相応に発育している。どこがとは言わないが。

 そして迂闊に口を出してはならない問題だとも、俺に女性の扱い方を教えた人は言っていた。

 花の種類は数あれど、バラとアヤメ、どちらが美しいかと競うのは不毛というものだ。どちらにも、各々の美しさがある。スノードロップにもまた然り。


「……じゃ、次は俺、入ってくるから」


 このままここにいても面倒に巻き込まれるだけのような気がするので、逃げるように荷物を置いて温泉へ向かった。

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