馬蹄砦の合戦 12
殺気立つドワーフたちから解放されたところで、ノーバスター卿たちと駆け足で作戦を練る。とはいっても、計画などあってないようなものだ。
まず、城の裏口から怪我人と女子供を逃がす。
次に俺たちが出撃して、派手に暴れる。
以上だ。
無茶も無謀も通り越した作戦ではあるが、意外にも参加を拒む者はほとんどいなかった。
もちろん、まったくいなかったというわけではない。
俺もノーバスター卿も、他人を無理やり自殺に付き合わせるほど非道ではない。そうした者たちは避難者とともに裏口から逃がすことにした。護衛という意味ももちろんあるが、何より戦う意思のない者など戦場にいても邪魔になるだけだ。
この馬蹄砦は元々、騎士の砦というだけあって城内でも騎乗できるだけの広さが確保されていた。厩舎も城内にある。
そこで、突撃の戦法は騎乗した騎士隊で行うことにした。
まず馬の速度と衝撃力で、門前に押しかけている化け物どもを蹴散らす。
その後に守備兵とドワーフたち歩卒部隊が続く。
言い出しっぺの俺は当然、騎士隊と一緒だ。
「今度は無茶だって言わないのか?」
騎乗するのは、ここに来るときも乗ってきた、ラウルという名の馬だ。
その首を撫でてやりながら、俺は近づいてきたレティに声を掛けた。
「そりゃ、無茶だとは思っているけど」
返ってきたのは小さな溜息だった。
「でも、アイツがいる以上は、ここに籠城したところで無駄だっていうのは分かるし。なら、貴方の直感を信じてみても良いかなって。ただ」
「ただ?」
聞き返すと、彼女はちょっと怒っているような目で俺を見る。
「ラキアよ。あの子を逃がすにしても、一言もなしなんて酷すぎるわ」
「いや、それは……」
非戦闘員の裏口からの脱出は、戦闘準備と並行してすでに始まっている。
決断をから実行まで時間が無かったのだから仕方無いのだが、その間にラキアと顔を合わせることはおろか、言葉を交わすことすらできなかった。
というか、本当はレティにも一緒に脱出して欲しかったのだが。
「冗談。私の役目は貴方を見て、その生きざまを記憶することなの。最後まで付き合うわよ。そもそも、貴方がこんなところで終わるなんて思えないしね」
だから、ラキアを逃がすのも反対だと彼女は言う。
大したものだと思う。レティはまだ、俺がこの状況をどうにかできると思っているらしい。
自分はそれほど信頼されるような人間なのかと唸っていると、レティから背中をどんと叩かれる。
「これが終わったら、ちゃんとあの子に謝るのよ」
「……善処するよ」
まるで再会が確定しているかのようなその物言いに苦笑しつつ、俺はそう答えた。




