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若将軍は旅がしたい!  作者: 高嶺の悪魔
第七章 馬蹄砦の合戦

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馬蹄砦の合戦 4

 壮絶な矢の応酬が始まってから、一刻ほどが過ぎた。

 これまでの戦況に大きな動きはない。

 ノーバスター卿は急遽編成した選抜射手隊に攻城用の梯子を運ぶ連中を優先的に狙わせている。南側の正門、西の副門では丸太の破城鎚を抱えたオークどもの攻撃を受けているが、第一の壁とは違い門戸は鉄製な上、事前に補強して塞がれているためまだまだ破られる心配も無さそうだ。もし仮に破られたとしても、ヴェルダン卿の率いる騎士隊が万全の態勢で待ち構えている。

 レティは次々と矢を放っては、俺の指示通りハイ・オークだけを狙い撃ちにしていた。

 これまでの勲一等は間違いなく彼女だろう。

 一人、壁の外で戦っているレイブンは何処へ行ったのか分からないが、アイツのことは心配するだけ無駄な気がする。

 防衛線は、これまでは順調といって良かった。

 もちろん、このまま終わるわけがないのだが。


 敵陣の中ほどに、ぼうっと赤黒い炎が灯った。


「火矢だ! 気を付けろっ」


 ノーバスター卿が警告を叫ぶが、この状況下で何にどう気を付ければよいのか。

 質の悪い油を燃やした時のように黒い煙を吐き出しながら、火のついた矢が城壁上へと飛来する。ご丁寧にも投石の要領で油の入った割れ物まで放り込んできた。

 化け物のくせに、こういう時だけ連携が巧い。

 そう苦々しく思っていると。近くから絶叫が聞こえてきた。振り返ると、兵の一人が火だるまになっている。

 どうやらまともに油をかぶったところへ、火矢が掠ったらしい。その兵は絶叫しながら壁の外へ飛びおりていった。

 火矢による被害は兵だけに留まらない。城壁上にも、内側にも、至るところで火の手が上がり出す。面倒とはいえ、火攻めは攻城戦の定石だ。当然、それに備えた準備もされている。

 すぐに担当の兵たちが消火のために駆け回り出した。

 いずれも小火程度の大きさだ。すぐに消火されるだろう。

 そう思った矢先に、突風が吹いた。

 まるで示し合わせていたかのように吹き荒れた強風に煽られて、火が次々と引火して燃え広がる。問題はそれだけでは済まなかった。


「閣下! ゴブリンが来ます!」


 城壁の外を窺っていたノーバスター卿の副官がそう叫んだ。

 ゴブリンはほとんど垂直の壁でもよじ登ることができる厄介な特技がある。すぐに気味の悪い猿どもが城壁上へ乗り込んできた。


「弓隊は下がれ! 衛兵隊、抜剣!」


 消火を急がせていたノーバスター卿が、素早く指示を出した。後退する弓隊の代わりに城壁へ登ってきた衛兵隊とともに、自らも剣を抜いてゴブリンに応戦する。

 城壁上で乱戦が始まった。しかし、オークはともかくゴブリンなど大した脅威ではない。

 そもそもゴブリンどもの戦意も低い。武器を持った兵に襲いかかられれば、すぐに逃げ出そうとする。

 それでも壁を登ってくるゴブリンが後を絶たない理由は、城壁の外でオークどもが奴らを追い立てているからだ。壁を登ろうとしないヤツは容赦なく殺されている。

 群れから逃げだそうとするヤツもいるが、群れから離れた途端にその周囲を牧羊犬よろしく駆け回っている魔狼に追い回され、嬲り殺しにされてしまう。結局、奴らが生き残るには壁を登るしかない。

 もちろん、だからといって憐れみを抱くことなどないが。そもそも奴隷以下の扱いを受けると分かっていながら、どうして奴らはオークの下に集まるのだろうか。

 やれやれと思いながら剣を抜いて、胸壁から頭を出したゴブリンを二、三匹切り捨てた。

 レティの焦った声が聞こえたのはその時だ。


「ルシオ! あそこ!」


 呼ばれて見上げると、レティが正門の方向を指さしている。

 ゴブリンを切り殺しながら、城壁から身を乗り出して外を見ると、正門の前に巨大な黒い影が立っていた。


「ノーバスター卿!」


 警告するように彼を呼ぶと同時。再び突風が吹き荒れた。

 そして一瞬の閃光。轟音。衝撃が砦全体を揺らす。

 その全てが終わった時。


「正門が破られたぞーー!!」


 物見の兵が、そう叫ぶのが聞こえた。

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