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20・天空島への招待

 クラフターズギルドに行ってフィーナに進捗状況を確認してからドレスの仕立依頼を出した後、リカさんとアプリコットさんも誘ってから俺達はアルカにやってきた。


「ここがアルカか……」

「本当に空に浮いてるなんてね……」

「す、すごいですね……」


 エド、マリーナ、フィーナにはちゃんとアルカのことを教えてから連れてきたんだが、予想通り驚いてるな。


 あ、獣車は明後日には完成するらしい。なので披露宴は十日後ってことに決まったぞ。


「まさかこんな物がベール湖の上空にあったなんて、全然知らなかったわ」

「本当ですね。さすがは客人まれびとの遺産、といったところですね」


 リカさんとアプリコットさんは感心しているが、別に客人だからってことはないと思う。


「で、俺達もここにある離れ、というか副殿ってとこに住んでいいってか?ありがたいけどいいのか?」

「全然構わない。工芸殿もあるから、お前も工房より集中できるんじゃないか?」


 エドは結婚したらアルベルト工房を出ることになっている。Gランククラフターになったこともあって、独立するための準備も必要だって言われ続けてたから、いい機会だと思っていたらしい。

 さすがに家を探すとこから探さないといけないし工房も用意するのは簡単じゃないから、普段はクラフターズギルドの工房を借りて、時々はアルベルト工房で指導を受けたりするつもりだったそうだが、アルカには工芸殿があるからわざわざ金を払ってクラフターズギルドの工房を借りる必要はなくなる。しかも工芸殿には鍛冶工房だけじゃなく、木工工房に裁縫工房、仕立工房、錬金工房なんてのもある。魔導具管理担当のコンルも使うことがあるが、それでも四人で使うには十分すぎるほど広い。


「なんかそんなのがあるって言ってたな。見せてもらったもいいか?」

「もちろんだ。案内するよ」


 エド達にとって、ある意味じゃ寝殿より工芸殿の方が気になるだろうからな。俺も見たけど、本当にすごかったぞ。


「ここが工芸殿だ」

「す、すげえ……」

「クラフターズギルドよりすごいね。王都でもこれだけの設備はないよ」

「こ、こんなすごいとこ、本当に使ってもいいんですか?」


 驚いてるが触ってみたくてウズウズしてるのがわかるぞ。工具の類は見当たらないが、クラフターにとって工具は命だから自分で用意することが常識になっている。あるのは本当に最低限の設備だけだ。それでも普通に用意しようと思ったら、白金貨が数枚は飛ぶだろうな。


「マジで何でも揃ってるな。さすがに100年前の設備だから今は使ってないのもあるけど、それでもすごいぞ」

「エドは炉も使わなくなったしね」

「それってどういうことなんですか?」


 コロポックル達も紹介してあるが、工芸殿に入り浸っているコンルは案内のためについてきてくれている。そのコンルが、頭に巨大なクエスチョンマークを点灯させながら首を傾げた。


「エドは新しい工芸魔法クラフターズマジックを奏上したんです。メルティングっていう物質を熱することができる魔法ですから、炉と同じ働きをして、魔力次第では炉以上の熱を加えることができるんです」

「そ、それはすごいです!私は工芸魔法クラフターズマジックを使えないので、いつも手作業でやっていたんですよ!」


 あれ?コンルってクラフターズギルドに登録してなかったのか?それなら登録すればいいんじゃないだろうか?


「私達は人工生命体ですから、ライブラリーに表示される種族はホムンクルスになるんですよ。登録はできると思うんですけど、問題も起きると思いますから自重していたんです」


 あー、そういうことか。確かにそれなら難しいな。聞けば身分証はサユリ様が用意してくれたのがあるから、それを使っていたらしい。ヒーラーズギルド設立者の特権で七人とも登録させて、ライセンスは似たものを渡してあるそうだからまるっきり偽造ってわけでもないが、バレたらヤバいことに変わりはないぞ。七人とも回復魔法は快癒魔法ヒーラーズマジックを含めて使えるから、間違いってわけじゃないんだが。


「いや、別に工芸魔法クラフターズマジックじゃなくても、工芸魔法クラフターズマジックみたいに魔法を使えばいいんじゃないか?」

「あっ!」


 そこまで思いつかなかったって顔だな。それぞれ得手不得手の属性はあるが、基本的に組合魔法ギルドマジックは属性魔法を最適化して奏上されてるんだから、魔法が使えれば工芸魔法クラフターズマジックに似せることはできる。ましてやコロポックルはレベル60のハイクラスだから、魔力が足りないってこともないだろう。


「ありがとうございます、エドワード様!さっそく今日から試してみます!」

「礼はいらねえって。よろしくな、コンル」

「はいっ!」

「ねえねえ大和。湖もあって、漁もできるんだよね?」


 エドとコンルが仲良くなって何よりだと思ってたら、今度はマリーナか。確かに漁師でもあるし、興味はあるよな。


「あるぞ。東側は魔物を養殖してるみたいだから入れないが、西側はけっこうデカい。アルカの魚は卵を孵化させて稚魚を育ててから放流してるから、半養殖って言うべきかな」


 アトゥイに言わせれば湖には天敵もいないし、繁殖してる個体もいるだろうからけっこう増えてるって話だけどな。ジェイドとフロライトは喜んで湖に飛び込んでるけど、それでも焼け石に水かもしれん。


「ならあたしも時々漁をしてもいいかな?」

「構わないと思うぞ。アトゥイも喜んでくれるだろうし」


 アトゥイの漁は船を使った網漁業だが、間引きもしなきゃいけないんだから釣りとか素潜りとかは効率が悪すぎる。たまにはやるらしいが、それでも湖はけっこう広いから、船網漁業が一番効率がいい。

 マリーナは素潜りが多いみたいだが、船を持っていないこともあって結界を出ることもない。たまに手伝いで船に乗って結界を出ることはあるが、基本的には岸の近くが主な漁場だ。アトゥイとは漁の方法が違いすぎるが、それでも参考になることは多いだろう。


「楽しみだよ」


 すげえ嬉しそうだな。たまに思うんだが、マリーナって仕立師なのか漁師なのかわからなくなるんだよな。俺達のアーマーコート、装甲板はエドがやってくれたが、仕立ててくれたのはマリーナだから腕がいいのは知ってるが、漁師としても毎日しっかりと最低限の魚を素潜りで獲ってるからしっかりと両立できている。本人的には漁師は趣味なのかもしれないが、Bランクトレーダーでもあるんだから、趣味の域を超えてる気がするぞ。


「大和さん、ここの山や森って、カントさんが管理してるんですよね?」

「ああ、そうだ。それがどうか……って、そうか。フィーナは木工師だから、アルカにある木材が気になるのか?」

「はい。さすがに簡単に切り倒すことはできないでしょうけど、定期的に手入れしないと弱ってしまうでしょうから、もしかしたら間伐材ぐらいはあるんじゃないかと思って」


 木工師のフィーナは、そっちが気になるのか。確か檜に杉、欅、樫、楓に、珍しいとこじゃチークやマホガニーもあったと思う。加工が難しいが、桜樹も優秀な素材だって言ってた気がするな。


 この世界にも間伐は普通に行っていて、特に森の国とも言われているバリエンテ、雨が多いレティセンシアじゃかなり昔から行われている。もちろんアミスターでも行われてるんだが、山の多いアミスターだと徹底は難しい。まあ山だろうと森だろうと魔物の住処になってることが多いから、ハンターズギルドのハンターが伐採してくるんだが。ウッドハンターって呼ばれてるぞ。


「あると思うが、アルカの森はそんなに広くないから、聞いてみないとわからないな。というかフィーナが自分で聞いた方が早いだろうし、話はしておくよ」

「お願いします」


 まだ森までは見せてないが、それでも木工師にとっては興味があるんだろうな。木材に関してはバリエンテからの輸入が多くて、アミスターが自前で用意できるのは檜、杉、欅、楓、桜樹ぐらいだったはずだ。チークとマホガニーはバリエンテでしか育たないって話だったと思う。


 まあ興味があるならカントに話すぐらい問題ないし、雨が降らないアルカといえども雲の上にある以上日差しの問題は避けられない。俺も初めて聞いたんだが、日当たりがよくなるようにってこと以外にも、日当たりが良すぎて伐採せざるを得ない木もあるって言ってたな。水分が足りなくなって枯れるそうだが、こればっかりはどうすることもできないらしい。


「それじゃあ湯殿に行きましょう。きっと気に入るわよ」

「あのお風呂はすごいですからね」

「そんなにすごいの?」


 あれはすごいぞ。

 風呂は本殿の一階と最上階、副殿に一つずつ、そして湯殿の七ヶ所にあるが、本殿の最上階と湯殿は露天風呂になっている。

 本殿一階にあるのはヘリオスオーブじゃ標準的な風呂だがデザインは日本の温泉を模している。これはどの風呂も同じだが、本殿一階の風呂のみ、完全な屋内となっている。

 副殿にある風呂は建物の一部が解放されていて、同じ階層建ての副殿やそれ以上の本殿からは見えないようになっている。テラスとかにある感じが近いかもしれない。眺望風呂って言うんだったか?

 本殿最上階と湯殿は、日差しを避けるために大きな屋根が半分ほどを覆っている。大きな岩も使ってるから、見た目的にも日本の温泉と変わらない。しかも湯殿にはサウナや泡風呂、滝風呂、水風呂なんかもあるから、ちょっとしたスパリゾートだ。

 それらの風呂に、24時間いつでも入ることができるんだから、まさにこの世の天国といっても過言ではない。


 あ、湯殿は男湯と女湯にわかれてるが、基本的には混浴だ。女性は家族以外に肌を見られることを嫌うから、湯殿での入浴には細心の注意が必要だな。


「王族でも入ったことある人はいないって断言できるわね。しかも雨に降られることもないから天気の心配もいらないし、アルカは暖かいから、湯冷めすることもないわよ」

「そんなにすごいんですね。楽しみです」


 リカさん、本当に楽しそうだな。今日はリカさんの屋敷に泊まる日だったから連れてくることができたが、そうじゃなかったら簡単には来れないかもしれないな。ただ領代としての任期が終わった後でも簡単に会えるようになったから、それだけでも大きな意味がある。上手くいけば、リカさんとも結婚することができるかもしれないしな。

 あ、実はリカさんのウェディングドレスも、しっかりと仕立てられていたぞ。俺が侯爵家に入ることはできないし、アマティスタ侯爵領に拠点を移すつもりもないから結婚することができないだけで、プリム達からすれば俺の嫁の一人っていう認識になってるから、せめて披露宴だけでもって考えてたらしい。


 というかゲート・クリスタルも直前に転移した地点を記憶してくれるんだから、アマティスタ侯爵領直通のゲート・クリスタルを用意しておけばいつでも行けるようになるし、結婚に関しても支障なくなるんじゃないか?貴族の女当主と結婚する場合でも別の女性と結婚するのは普通のことなんだから、拠点の問題もほとんどなくなるよな?


 うん、あとでプリム達にも確認してみよう。

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