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18・発見報告

 翌日、俺はアルカから石板を使い、マイライト山脈の山頂にジェイドと共に現れた。ジェイドなら1時間もかからずにフィールに着けるし、アルカから呼んだ方が危険も少ないからな。


 それにしても、昨夜は大変だった……。

 俺達の部屋は本殿の三階と四階の露天風呂と決まったんだが、防音が完璧になされているのをいいことに、露天風呂はもちろん、寝室でもロクに寝かせてもらえなかった。おかげで寝付いたのは日付が変わっていたと思う。同じ本殿の二階にマナリース姫が泊まってるんだから少しは遠慮しろと思ったが、口に出した瞬間地獄を見るので一生言うことはない。


 ジェイドの背に乗ってフィールを目指していると、何匹かフェザー・ドレイクを見つけたので倒して回収しておくことも忘れない。お、ウインガー・ドレイクも一匹いたのか。回収回収。


 ん?あれってオークの集落か?まだ小さいが、大きくなられても困るから潰しておこう。幸いにも俺の広域系でも集落全域をカバーできるな。あんまり時間はかけられないから、禁じ手の水性A級広域干渉系術式ネプチューンと風性広域干渉系術式ヴィーナスの積層結界で窒息させた上で氷らせてしまおう。


 二分ぐらいそのまま放置しておくと、結界内は完全に空気がなくなり、全てが氷り付き、全ての生命が活動を永遠に停止した。なのでオークの死体も回収っと。げ、オーク・プリンセスがいたのかよ。これはライナスのおっさんに怒鳴られるかもしれん。


 さて、回収も終わったし、行くとするか。


「ジェイド、頼むぞ」

「クワアッ!」


 アルカだと自由に飛ぶことができるから、牧場と違って窮屈な思いをしていないジェイドは機嫌が良さそうだ。フィールで家を買っても街中じゃ飛べないんだから、これだけでもアルカを見つけられて良かったと思う。今頃アルカではフロライト、ブリーズ、ルナ、シリウス、スピカが伸び伸びと過ごしていることだろう。


 そして一時間後、俺はフィールの近くに下り、石板を使ってアルカへ向かった。


「お帰りなさいませ」


 屋敷に戻るとシリィが出迎えてくれた。いや、仕事しときなさいよ。


「ただいま。みんなは?」

「養殖場の見学に行かれていましたが、先ほど戻ってこられました。今はお茶の用意をしているところです」


 なるほど、ティータイムってやつか。なら出発は飲み終わってからでもいいな。というか、養殖場なんてあったのかよ。


「あれ?ってことは、湖には魚はいないのか?」

「いえ、魔物は隔離しておりますが、普通の魚は半分ぐらいは放流しております。数が増えすぎないようアトゥイが週に一度、漁をしながら間引きもしています。生態系が崩れないよう注意もしておりますので、御心配には及びません」

「なるほど。ってことはジェイドとフロライトが取って食べてもかまわないのか?」

「はい。むしろアトゥイの手間は減ることになりますので、喜ばれると思います」


 それは良いことを聞いた。ジェイドもフロライトも賢いから、養殖場には入らないように教えておけば大丈夫だろう。牧場は襲うなって教えてたら、理解した感じで頷いてたからな。


Side・ミーナ


 大和さんがフィールに向かっている間、私達はアルカの東にある湖にやってきました。西にある湖の方が大きく、砂浜や桟橋もあるのですが、こちらには養魚場があると聞きましたから、みんなで見に来たんです。養魚場にいる魚は淡水魚ですが、アユやヤマメ、イワナなどが主ですが、魔物のホワイト・イールやファング・タートルも養殖しているそうです。この2種の魔物はCランクですが特に獰猛というわけではありませんから、養殖にも適していると仰っていました。


「それでもこっちの湖からは出ないようにしてるのね」

「はい。コンル特性の魔銀ミスリルを編み込んだ網と水しか通さない結界で塞いでいますから、逃げられる心配はありません」


 案内してくださっているのはフェアリーハーフ・ウンディーネのアトゥイさんです。河川や湖の管理をされているそうなので、こちらの養魚場や西の湖の生態にも精通されています。


「ところでこの滝って、上には何があるの?」

「桜という木が植えてあります」

「桜?」

「そういえば大和さんが喜んでましたけど、その理由はご存知なんですか?」

「はい。世界樹と同種の植物なのですが、ご主人様の住まわれていた国に似た植物があったそうです。桜と呼ばれて親しまれていたと聞いています」


 ヘリオスオーブでも小さな世界樹として人気がありますが、大和さんの世界に、世界樹と同じ木があったとは知りませんでした。だから日ノ本屋敷にも多く植えられていたんですね。湯殿からも見えていましたし、昨夜は星と桜を見ながら豪華な入浴を楽しませていただきました。ちなみにヘリオスオーブでは小世界樹、あるいは桜樹おうじゅと呼ばれています。


「あの滝は、北側から上っていただくことができます。アルカが一望できますので、お時間がございましたら一度上ってみてください」


 このアルカをさらに上から見ることができるなんて、本当にすごいです。今度上ってみましょう。


「そろそろ大和様が戻られる頃ですが、いかがなさいますか?」


 あ、もうそんな時間なんですね。でしたら戻った方がいい気がします。


「どうせ大和のことだから、マイライトで狩りをしてるでしょ」

「してるでしょうね。ゲート・クリスタルにフェザー・ドレイクを使うことになるんだから、何匹か調達してそうな気がするわ」


 マナリース姫とプリムさんがけっこうひどいことを仰ってる気がしますが、私もそんな気がしてきました。だとするともう少し時間がかかるかもしれませんね。


「でしたら庭でお茶でもいかがでしょうか?」

「そうしましょうか」

「そうですね。少し喉が渇いてきましたし」

「賛成です」


 満場一致でお茶会に決まりました。キナさんが育てられたお茶を淹れてくださるんですけど、今までに飲んだことがないほど美味しかったんです。マナリース様やプリムさんもそう仰っていました。さらにレラさんが焼いたお菓子もお茶請けに出してもらえますから、とても楽しみです。


Side・プリム


 あたし達が中庭でお茶会を始めようと屋敷に戻ってきたとほとんど同時に、大和とジェイドが帰ってきた。

 せっかくレラとキナがお茶の用意をしてくれてるんだから、それを飲んでからフィールに戻ることは大和も賛成してくれたから、庭の噴水がある小島でお茶会をしてから、あたし達はフィールに戻った。


「オーク・プリンセスか。また厄介だな」


 ハンターズギルドでライナスさんに報告すると、予想通り渋い顔をされてしまった。倒したことは怒られなかったけど、集落の数が少なかったことも一因かもしれないわね。


「まあそれはいい。この分じゃ集落には高確率で亜王種がいると考えるべきだが、そうなると次に問題となるのは集落の数だな。空からの様子はどうだった?」

「潰した集落以外は見えなかったな。森の中に作られてたら空からじゃ探しようがない」


 マイライトに限らず、森は木が生い茂ってるから空からじゃ森の中の様子って探しにくいのよね。それでもいくつかの集落を見つけることができたのは、マイライトの森は開けた空間が多いからなのよ。


「わかった。それについてはどうするかは考えておく。お前らに依頼がいくことになるとは思うが、それは覚悟しといてくれ」

「了解だ」


 ジェイドとフロライトがいるから、マイライトまでは短時間で行ってこれるし、行動範囲も広いんだから、あたし達に依頼が来るのは当然。あたしもそのつもりはあるから、特に異論はないわ。


「で、次の問題だが、マイライトの山頂で客人まれびとの遺跡を見つけて、そこを拠点にしようってことだが、正気かお前ら?」


 遺跡が魔物の棲み処になってるなんてことは、ごくごく普通にありえることだし、その場所がマイライトの山頂ってことなら問題が起きない方がおかしい。石碑が結界の魔導具にもなってるけど、周囲にはフェザー・ドレイクが住み着いてるんだからとても安全とは言えない。正気を疑われるのもわからない話じゃない。


 だけどアルカは、はっきり言ってそんなレベルじゃない。危険な魔物はでないし屋敷もあるし、何より空に浮いてるんだから侵入者の心配もする必要もない。コロポックルっていう家妖精?もいるから、管理についても心配いらないのも大きいわ。


「一度連れてくよ。実物を見てもらった方がいいからな」

「転移石板、だったか?それもすごい話だな。まあ遺跡を見つけたって報告は確かに聞いたから、その遺跡の調査権はお前らにある。マナリース様も認めてらっしゃるんなら、ハンターズギルドからは特に言うことはねえよ」


 転移で行き来できるのも大きいのよね。転移石板は大和しか使えないけど、あたし達はゲート・クリスタルを使う予定だし、そのゲート・クリスタルも今日中にできるって聞いてるから、報告が終わったらまたアルカに戻る予定よ。エドやマリーナ、フィーナも呼びたいから、少し多めに製作をお願いしているの。


「お父様には後で鳥を飛ばして連絡をするし、いずれは王都に招待しなきゃいけないんだから、その時でもいいとは思ってるわ。多分お父様も、サユリ様のご遺志を違えるような真似はしないと思うし」


 アミスターの国内にあるのは、いろんな意味でも都合がいい。マナ以外の王家がなんて言ってくるかはわからないけど、それでもマナの言うようにサユリ様のご遺志を違えるとは考えにくいし、フィールは王家直轄領だから他の貴族も文句を言いにくい。

 これが他国、特にソレムネやレティセンシアだったりしたら、問答無用で皇家が接収してたでしょうね。


「わかりました。ですが陛下から連絡があったら、俺にも教えてもらえますか?ハンター連中にしっかりと通達しておかないと、騒ぐバカどもが出てくるでしょうからね」

「わかってるわ」


 それもありがたいわ。特に新しい遺跡が見つかったって知れ渡れば、必ずトレジャーハンターがフィールに来て騒ぎ出す。あたし達に遺跡を見せろぐらいは言ってきてもおかしくはないもの。そんな礼儀知らずを相手するつもりはないけどね。


 さて、それじゃあ報告も終わったし、マナのアーマーコートを頼みに行きましょうか。

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