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04・合流

Side・エドワード


 ロリエ村で無事にフィーナの両親に挨拶することができた俺は、これからの生活の足しにしてほしいってことで10万エルを手渡した。最初は遠慮していた両親だが、暴利ともいえる税金のこともあるから、最終的には受け取ってくれた。

 大和もストレージに眠ったままになっていた晶銀クリスタイトを後付けした魔銀ミスリルの剣を、五本ほど渡していたな。魔銀ミスリルの剣より強度は落ちてるが、それでも鉄の剣よりは使いやすいから、クライだけじゃなく村の人に使ってもらってもいいと思う。


 そんなわけで適当な理由をつけてロリエ村を出た俺達は、そのままアルカにやってきた。大和とマナ様はユーリ様と合流することも目的だから、今日はハウラ大森林を抜けるまで残っている。ジェイドは目立つからシリウスに乗ってるけどな。


「お、お姉ちゃん……なんなの、ここ?」


 フィアナもレイナも驚いているが、なんとか声を絞り出せたってとこか。まあ気持ちはわかる。


「ここはアルカっていって、空に浮かんでいる島なの。最近大和さんが見つけて、それ以来ここを拠点にしているのよ」

「あたし達の新居もここにあるから、二人もしばらくはここに住むことになるよ~」

「ええっ!?」


 いや、それは当然だろ。いずれはフィールに住むことになるだろうが、それまではどうすんだって話だぞ。


「あら、おかえり。早かったわね」

「ただいま、プリム。あれ?どっか行ってたの?」


 日ノ本屋敷の入り口の鳥居でフィアナとレイナが固まってると、プリム達も転移してきた。いや、プリム達もハンターなんだから、狩りぐらいは行くだろ。


「狩りよ。今日は大したものは狩ってないけどね」


 いや、お前や大和がそんなこと言っても、何の説得力もないからな?実際片手間で、S-Rランクのウインガー・ドレイクを乱獲してただろ?


「今日は本当に大した魔物は狩ってないですよ。ゴブリンやグラス・ボアぐらいですから」


 それだけ聞けば大したことないように聞こえる。だがグラス・ボアはともかく、ゴブリンはピンキリだ。

 フィールに来た翌日にゴブリン・クイーンを倒してる大和とプリムだが、ゴブリン・クイーンがいたってことはゴブリンの数も増えてる可能性が高いってことになるから、上位種なんかが増えてるんじゃないかって言われていた。だからハンターズギルドでもゴブリンの討伐依頼は多いらしいし、こないだ翡翠色銀ヒスイロカネ製武器の品評を依頼したホーリー・グレイブもけっこうな数の上位ゴブリンを狩ってきている。


 ホーリー・グレイブはハイクラスが五人いて、リーダーのハイフェアリーとハイヒューマンに青鈍色鉄アビイロガネ、残り三人に翡翠色銀ヒスイロカネ製武器の品評を依頼してて、既に実戦での使い勝手なんかの報告も受けている。五人ともすごく喜んでたし問題もなかったみたいだから、アミスターにあるクラフターズギルドには青鈍色鉄アビイロガネ翡翠色銀ヒスイロカネの製法は広められていて、現在はハイクラス限定で使われてるはずだ。


「ゴブリンとグラス・ボアねぇ」

「何よ?」

「それで、どんな上位種を倒してきたんですか?」


 マリーナもフィーナも、プリムが普通のゴブリンとか下位種とかじゃなく、上位種を倒したと信じて疑っていない。俺もそうだ。


「そんなに大したのは狩ってないわよ?」


 不本意そうなプリムだが、俺らとお前じゃ明らかに認識が違うからな?ゴブリン・ジェネラルとかゴブリン・ハイナイトとか狩ってても驚かねえぞ。


「い、いくらなんでも、ジェネラルとかハイナイトを少数で狩れるわけないよね?」

「だ、だよね」


 フィアナとレイナは知らないから仕方ないし、それが常識だが、こいつと大和にはその常識は通用しねえんだよ。なにせプリムは異常種の、大和にいたっては災害種の単独討伐を成してるんだからな。


「ラウス、どうなの?」

「えーっと……ジェネラルにトルーパー、それからガーディアンです」


 観念したように答えたラウスだが、予想通り厄介な上位種を倒してやがるな。というかガーディアンがいたのかよ。グランドナイトやアドミラルに比べると劣るが、それでも最上位に近い個体だぞ。別にそれぐらいで、プリムがどうにかなるとは思っちゃいねえけど。


「ふーん、ガーディアンがいたんだ」

「いや、ちょっと待って!ゴブリン・ガーディアンって最上位個体だよね!?そんなのを倒したんですか!?」


 レイナが声を上げるが、普通なら驚くよな。


「レイナは知らないから仕方ないけど、大和さんやプリムさんはGランクの異常種だって単独で倒したことがあるから、今のフィールじゃその程度で驚く人はいないと思うわよ」

「大和なんて、災害種すら単独で倒してるからね。エンシェントクラスに進化した今なら、大抵の異常種や災害種は何の問題もなく倒せると思うよ」


 絶句したな。今までエンシェントクラスって言ったらグランド・ハンターズマスターしかいなかったんだから、驚くのも無理もないんだけどな。


「エンシェント!?え?大和さんってエンシェントクラスだったんですか!?」

「こ、こっちのフォクシーの女の人も?」


 予想より早くプリムが帰ってきたし、大和もバリエンテ内じゃ声高に広めるわけにはいかなかったから、まだ教えられてないんだよな。


「そのことも説明するけど、先に中に入ろうよ」

「そうですね。いつまでもここにいても仕方ありませんから。フィアナ、レイナ、ついてきて」

「え?」

「う、うん……」


 完全に怯んでるな。まあ説明もなしにこんなとこに連れてきたら、誰だってこうなるだろうが。バリエンテの問題が解決すれば、普通に親父さんとかにも教えられるんだけどな。


Side・プリム


 予想より早くエド達が帰ってきたから、入り口の鳥居でバッタリ鉢合わせしちゃったわね。まああたし達も今日は予定外のゴブリンを狩ったし、バトラーズギルドに給仕依頼を出してたから、今日はもう何もしないんだけど。


 そんなわけで本殿の食堂で、フィーナの妹のフィアナとレイナを紹介してもらってるところよ。大和はまだ帰ってきてないけど、何か食材でも探してるのかもしれないわね。


「れ、レイナです!」

「フィアナです。よろしくお願いします!」


 あたしがエンシェントフォクシー、大和がエンシェントヒューマンだってことは説明したけど、やっぱり怖がられてる感じね。グランド・ハンターズマスター以外だと数十年ぶりのエンシェントクラスだから仕方ないとこはあるんだけど、なるべく早く慣れてもらいたいところだわ。なんだかんだ言ってもやっぱり傷つくのよ。


「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。二人ともとっても気さくな人達だから。あ、俺はラウス。大和さんの弟子ってことになるかな」

「う、うん……」


 さりげなくラウスがフォローしながら自己紹介してるけど、確かこっちのレイナって娘とは同い年なんだっけ?


「私はレベッカ。プリムさんの弟子だよ」


 ラウスが大和の弟子なのはわかるけど、あたしはレベッカを弟子にしたつもりはないわよ?確かにスピアードボウを槍に見立てて使ってるから手ほどきはしてるけど、弓に関してはあたしは素人も同然。まだぎこちないけど、レベッカはスピアードボウを槍として使いながら矢を番えて射るなんてことをやろうとしてるんだからね。


「いや、お前の槍さばきを教えてもらってるって時点で、十分弟子って言ってもいいだろ。まあお前も大和も、レベルによるゴリ押しが目立つ気がするが」


 ……否定できないわね。確かにあたしも大和も、今まで苦戦らしい苦戦はしたことがない。力押しって言われたらその通りだとしか言えないわ。でも正面から異常種と戦ったことは少ないわよ?


「少ないってだけで、正面から倒したことも何度かあるでしょ。普通はGランクだろうとPランクだろうとエンシェントクラスだろうと、そんなことできないからね?」


 マリーナのツッコミに、あたしは目をそらすことしかできなかった。確かに大和のアシストをもらったとはいえ、何体かの異常種は正面から突っ込んだ覚えがある。えーっと、何を倒したんだっけ?


「プリムさんが倒したって聞いてるのはグリーン・ファングとゴブリン・クイーン、エビル・ドレイク、マーダー・ビー、オーク・クイーンですね」

「私達が見たのはデビル・メガロドンとアビス・タウルスですね。アビス・タウルスは大和さんと二人でですから、ちょっと違うかもしれませんけど」


 確かにアビス・タウルスにとどめを刺したのは大和だけど、あたしが体に大きな風穴を空けてたから、多分あのままでもすぐに死んだんじゃないかって思う。そう考えると確かにあたしが倒したって言えなくもない?でも災害種だし、確実にとどめを刺しとかないと危ないから、大和がとどめを刺したことは間違いじゃないと思う。


「まあこういう人達なのよ。驚いてる二人の気持ちはよくわかるけど、大和さんとプリムさんがいなかったらフィールは今ミーナさんとフラムさんがあげた異常種や災害種、さらに別の異常種に滅ぼされてたかもしれないから、私達はお二人にすごく感謝してるのよ」

「だねぇ。レティセンシアに占領されてた可能性もあるんだから、本当に大感謝だよ」


 照れるから止めてよね。あたし達としては降りかかる火の粉を払っただけなんだから。


「失礼します。大和様とマナ様がお戻りになられました。他にも何名かいらっしゃいますので、おそらくは第三王女殿下と合流できたようです」


 レラが入ってきて教えてくれたけど、思ったより早かったわね。ユーリの他にも何人かいるって話だけど、お付きとか護衛がいるのは当たり前なんだから、多分その人達でしょうね。


「思ったより早かったな。ここに来るのか?」

「はい。今は中庭の案内をされていますので、じきに来られると思いますが……」


 なんかレラが言いよどんでる感じだけど、何かあったのかしら?


「その……マナ様の態度が変わってまして。やっと認めたと言いますか、開き直ったと言いますか」


 それは朗報だわ。


「それと、おそらくは第三王女殿下だと思うのですが、マナ様と競い合うかのように大和様の腕を取り合っているようです。これにはドラゴニュートの双子も加わってるようなので、かなりの激戦を呈していました」


 ……それは想定外だわ。まさかユーリまで落ちたの?というかドラゴニュートの双子って何よ?ユーリの護衛?

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