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義妹に虐められていても婚約者である彼さえ味方でいてくれれば大丈夫、そう思っていたのですが……。  作者: 四季


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11話「まさかの展開で」

 ディコラールと私はあれこれ話し合った。


 けれども決定的な良い案は出ず。

 ただ時だけが過ぎていった。


 未来のこと。

 明日のこと。

 無限の可能性があるわけだけれど、だからこそ、ぱっと結論を出すのは難しい。


 人間に未来は見えない。それは誰もがそうだ。世界中を探せば多少未来の見える者もいるかもしれないが稀だろう。大抵の人間は明日何が起こるかさえ知ることはできない。多少方向性を予想することはできるかもしれないが、良くてその程度である。


 そうして私たちは一旦店を出た。


「なんだかんだ話がまとまらなかったですね……」


 思わずそんなことを言ってしまう。


 それを聞いて「確かにそうですね」と苦笑するディコラール。


「すみませんなんというか……」

「いやいや、気にしないでください」

「それで、ディコラールさん、これからどうします?」

「少し散歩でもしましょうか」

「気分転換、ですね」


 ――と、そうして歩き出そうとした、その時。


「おっ姉ぇさぁぁぁん!!」


 後ろから高く響く声が飛んできて。


「あ、先ほどの」


 振り返れば、宝くじを落としたあの女性が駆けてきていた。


「聞いて聞いて! 聞いてくださいっ」

「どうされました?」

「実はですね実はですねっ」


 女性は何やら嬉しげな顔をしていている。


「また落とし物ですか?」

「違いますぅ!」


 さすがにそれはないか……。


「さっき返していただいた宝くじ! 当たってたんです!」


 まさかの展開に「ええっ」とこぼしていたところ。


「しかもしかも……しかも、一等です!!」


 さらなる衝撃が駆けた。


「え、ええええ!?」


 これにはさすがに大きな声が出た。


「い、いい、一等!?」


 路上で叫んでしまう。


「取り敢えずぅ、ちょっとぉ、移動したいんですけどぉ……いいですかぁ?」

「あ、はい」


 数十秒経ってようやく落ち着きを取り戻す。


 ちょうどそのタイミングでディコラールが「僕は同行しない方が良いですか?」と尋ねてくる。私は一瞬迷い彼と女性を交互に見た。すると女性は柔らかな笑みを浮かべて「どちらでも大丈夫ですよぉ」と述べてくれる。一人で女性のところへ行くことが少し怖かった私は「ディコラールさん、よければ一緒に来てくださいませんか」とお願いしてみた。するとディコラールは「分かりました」と言って頷いてくれる。


「ではどうぞぉ」


 ディコラールと共に女性の背を追って歩く。



「で、当たったこのお金なんですけどぉ、貴女にあげることにしたんですぅ」

「ええええ!?」


 女性は当選金引換券を渡してくれる。


「あのくじを拾ってくれたのは貴女ですからぁ、やっぱりぃ、これは貴女のものかなぁーって思ってぇ」


 向かい合うように着席した私と女性。

 本格的な話が始まる。


 私の背後に待機してくれているディコラールは今のところ無言だ。


「そ、そそそ、そんなはずないじゃないですか……!」


 変にあたふたしてしまう。

 そして内心焦る。

 今の私の振る舞いは明らかにおかしいのではないだろうか、と。


「けどぉ。拾ってくれて、返してくれて、そのおかげで今これがここにあるんですよぉ。それって全部貴女の力じゃないですかぁ」


 女性はにこにこ眩しい笑顔。


「私はただ落とし物を拾っただけです……」

「だとしてもぉ、多分、何かの縁ですよねぇ」

「けど、当選なさったのは貴女です」

「一応買ったのはこっちですけどぉ、それはあくまで買ったってだけですしぃ。落としたってことはぁ、これは相応しくなかったってことかもですからぁ。このくじはきっと貴女のところへ行きたかったんですよぉ」


 最後まで女性は満面の笑みのままだった。


 ――そして、一等の当選金は、本当に私のものとなったのだった。

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