39度の熱量
魔法講義を朝まで行わされたトオル。今日はついに魔法を唱えることになります。
目を覚ますと、開いたカーテンから夕暮れ時を知らせるオレンジの日の光が差し込んでいた。
朝まで続いたルーナの魔法講義。一度話し始めると彼女は止まらないタイプらしい。いらない情報までいろいろ聞かされたような気がする。魔力は精神に宿るだとか、空気中にある魔力を吸収して回復するだとか、いろいろだ。
結果、俺が魔法を使えるかどうかはまだ見ていない。ルーナが実際にちょっとした魔法を見せてくれたが、しゃべりつかれたのかすぐにそのあと寝てしまったからだ。
基本的に死霊術を扱う霊媒師でも魔力は消費する。魔法陣を生成するときや、実際に魔法陣を起動するとき、死霊を肉体から出したり入れたりするときにも使うらしい。
つまり魔術師としての才能が一片でも無ければ霊媒師は成り立たないのだ。霊媒師はその気になれば、魔術師になることもできるとルーナは言っていた。実際、転職する人もいるらしい。
ルーナは隣でまだ寝ている。よほど疲れたのだろう。ピクリとも動かない。
「魔法か……」
俺は試しにルーナが紙に書いていた魔法陣を見やる。
「確か昨日はこんな風に魔法を使ってたような……」
ルーナが昨晩見せた魔法は、炎の魔法。青い火の玉を浮かび上がらせるというものだ。
「よし、ちょっとやってみるか」
ぬいぐるみの手でその紙をなんとか引っ張り、地面に広げる。
そして呪文――魔法名を唱える。
「青炎灯」
ボウッと、手のひらの上に小さくチョコンと青い火の玉が灯る。魔法陣は呪文を唱えた瞬間だけ光り輝いていたが、今はただのインクで描かれた模様となっている。
布でできた俺の手には火は燃え映らず、生暖かいその熱は明るく部屋を青色に照らしていた。
「ブルーライトみたいな光だな」
さすが霊媒師なのだろう。明るい炎を出すより、こっちのほうがホラー要素高いもんな。
魔法を出すことができたのがそれなりにうれしいので、ルーナを起こそうとする。
「おい、ルーナ! 魔法出たぞ! お前のおかげだ」
しかしルーナは目覚めない。
「寝すぎなんじゃないか?」
魔法を消し、手でルーナをゆする。
しかし反応はない。
なにか嫌な気配をした俺は。ルーナを仰向けにする。
すると、ルーナは苦しそうに汗を流していた。
「ルーナ!? どうした!」
額に触れると、さっきの炎とは比べ物にならないくらいの熱量が手に伝わる。
これはやばい。大量の熱だ。
至急、誰かを呼ばなければ。
突然のルーナの熱。ただの風邪ではないような雰囲気を醸し出していた。




