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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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静かな冬、見えない兆し

冬の間、エドワルドはほとんどを書斎で過ごしていた。


外は雪。畑は眠り、川も静かだ。

やれることが限られるこの季節は、自然と「考える時間」が増える。


書斎の机には、積み上げられた古い資料。

年代順に綴じられた収穫記録、災害報告、交易の変遷、人口推移。

父の代、祖父の代、さらにその前――領地が領地として形を成してからの記録だ。


ページをめくる音だけが、部屋に響く。


何か……あるはずなんだが。


鮭の記録は拾えた。農業のズレにも気づいた。クロスボウという切り札も、予定より早く形になった。


だが、それ以外はどうだ?


特別な出来事。致命的な分岐点。


「見落としたら終わりになる何か」


探しているのは、数字や事件そのものではない。それらの“兆し”だ。


「……無いな」


思わず声に出る。


読み返す。もう一度、最初から。


だが、やはり同じだ。収穫量は上下し、流行り病は周期的に現れ、小さな争いは起きては消える。


前世の記憶があるから、全部が意味を持って見えてしまうだけか?


ページの端を指でなぞる。


もしかしたら――何かが起きたのではなく、

「起きなかったこと」こそが重要だったのかもしれない。


誰も気にしなかった空白。

何も書かれていない年。

判断が遅れた理由が、記録に残らなかっただけの可能性。


……ピンと来ない


焦りが、胸の奥にじわりと滲む。


これまでの自分は、「知っている未来」をなぞる様に動いてきた。だから判断は早く、迷いは少なかった。


だが今は違う。


未来が、少しずつ書き換わっている。

知っているはずの道が、確実にズレ始めている。


だからこそ、見えなくなっている……?


本当に必要なものは、資料の中ではなく、まだ起きていない“選択”の中にあるのかもしれない。


エドワルドは資料を閉じ、深く息を吐いた。


冬はまだ長い。

焦る必要はない――そう分かっていても、

何も掴めないまま時間だけが過ぎていく感覚は、落ち着かない。


「……今は、これでいいのか」


自分に問いかけても、答えは返らない。


ただ一つ確かなのは、この静かな冬が、嵐の前の凪である可能性だ。


エドワルドは再び資料を手に取り、「見つからなかった」という事実ごと、胸に刻み込むのだった。

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