表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/152

名を変えた武器、残された切り札

父上との話し合いの結果、結論は出た。


子供用クロスボウは、生産される。

ただし――「子供用」という言葉は使わない。

正式名称は、害獣対策クロスボウ。


用途を限定し、名で縛る。

武器ではなく、生活を守る道具として扱うためだ。


そして、もう一つ。これは俺の方から父上に提案した。


大人用のクロスボウは、生産は最小限。

数十基のみを領主館で管理・保管する。


理由は、単純だった。


もし、害獣対策クロスボウを使って反乱が起きた場合。こちらが同じ物で対抗していては、意味がない。


射程も、威力も、段違いの軍用クロスボウを使う。それだけで、戦力差は明白になる。


父上は少し考え――そして、頷いた。


「……理にかなっている」


それ以上、深くは踏み込まなかった。

後の運用は、領主としての判断。


俺からは、それ以上何も言わなかった。

……多分、父上はまだ気づいていない。

害獣対策クロスボウを扱える、という事は――構え方、狙い方、引き金の感覚。

それらは、軍用クロスボウにも、そのまま通じる。


いざとなれば、即戦力。しかも、練度は「ゼロ」からではない。表向きは、村を守るための道具。だが、その裏で――


領全体の、防衛基盤は静かに底上げされていく。


これでいい。今は、これで十分だ。


武器は、声高に語るものじゃない。

必要な時まで、名を変え、姿を隠していればいい。


俺は、そう考えていた。


害獣対策クロスボウは、決定から驚くほど早く量産体制に入ったらしい。


木工所では専用の工程が組まれ、弓部、台座、引き金、そして矢。

分業で効率よく作られる様になっていた。


各村の責任者は、順番に領主館へ呼び出され、クロスボウの取扱い説明を受ける。


・用途は害獣対策に限ること

・保管は必ず鍵付きの倉で行うこと

・使用記録を残すこと

・勝手な貸与、譲渡は禁止

・本数不足、用途違反が発覚した場合は――厳罰


罰則については、特に念入りに説明されたと聞く。便利な物ほど、管理が甘くなる。

そこは父上らしい判断だ。

結果として、村側も「これは預かり物だ」という意識が強くなった様だ。


冬に入り、農作業は一気に減ったが、代わりに仕事が無くなる事は無かった。


木工所では、クロスボウと矢の生産で手が回らない程だと言う。乾燥工程を終えた木材が次々と運び込まれ、削り屑と木の匂いが、工房に満ちているらしい。


一方で農家は、乾燥パスタ工場へ回される仕事が増えた。麦を挽き、成形し、乾燥させる。単純だが手数の要る工程だ。


「冬なのに、忙しいな」


そんな声が、あちこちで聞こえていると聞いた。……悪くない。

冬は、本来なら動きが鈍る季節だ。

だが今は、木も、人も、領全体が動いている。


害獣対策クロスボウは、表向きは村を守る道具。だがその裏で、仕事を生み、人を繋ぎ、技術を残す。


誰もそれを「武器」とは呼ばない。

それでいい。


静かに、だが確実に。

この領地は、次の段階へ進み始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ