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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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扱う重み

木工師は、完成したそれを前に、言葉を失っていた。


「……」


工房の裏手。

人目につかぬよう設けた簡易の的に向かい、試し撃ちをした直後だった。


子供用の時も、確かに驚いた。

弓を引かず、引き金一つで矢が飛ぶという仕組み自体が新しく、狩り道具としても十分だと感じた。


だが――


「……これは」


大人用は、別物だった。


矢は、音を立てて的に突き刺さり、背後の木板に深く食い込んでいる。

板は割れ、繊維がささくれ立っていた。


「威力が……違いすぎる」


木工師は、ゆっくりと息を吐いた。

わしのような老人でも、足を掛けて弾けば引ける。力のない者でも、仕組みさえ理解すれば扱える。


それで、この威力……


頭に浮かぶのは、嫌な想像ばかりだ。


狩りに使う?害獣対策?


確かに理屈は通る。だが、同時にこうも思ってしまう。


――人に向けられたら、どうなる?


弓なら、技量がいる。

剣なら、訓練が要る。


だがこれは違う。教えられなくとも、引き金を引けばいい。


「……手軽すぎる」


領主の子供、エドワルド坊ちゃんが考えたというのは分かる。理にかなった理由も聞いた。


だが、それでも。


「これは……軽々しく他の者に渡してはならん」


木工師は、完成品を布で包み、きつく縛った。領主様は、ご存じなのだろうか?


坊ちゃんだけの判断で進めて良い代物ではない。これは、道具ではなく――“力”だ。


「一度、直接お会いせねばならんな」


工房を閉め、周囲を見渡す。

誰もいないのを確認してから、包みを抱え直した。


人目を避け、路地を選び、足早に向かう。

目指す先は、領主館。


怒られるかもしれん……


それでも構わない。

作った責任が、そこにはあった。


こうして、木工師は初めて、「出来てしまった物の重さ」を抱えながら、領主のもとへ向かったのだった。

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