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反乱で処刑された若き領主、気づいたら過去に戻っていました。  作者:


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試作、そして最初の一射

思い立ったら、早い。


エドワルドはその日のうちに木工師の工房を訪れ、簡単な挨拶もそこそこに、持参した図を広げた。


「……こういう仕組みです」


描かれているのは、前世で見た記憶を頼りに起こした構造図だ。

弓部、溝、引き金。

装飾など一切ない、実用一点張りの形。


木工師は黙って図を眺め、指で線をなぞる。


「ほう……」


しばらくして、低く唸った。


「難しい細工はありませんな。仕組みも単純です」


「大人用と子供用、二つ欲しいんです」


エドワルドは続ける。


「大人用は、以前森のことを教えてくれた狩人に渡す予定です。子供用は……俺が使います」


木工師は一瞬、視線を上げたが、余計なことは言わなかった。


「用途は?」


「冬の害獣対策です。鹿や猪を想定しています」


「……なるほど」


納得したように頷くと、木工師は図を畳んだ。


「これなら、すぐにでも取り掛かれます。材料も揃っておりますし」


「どれくらいで?」


「子供用なら、明日には形になりますな」


その言葉に、エドワルドは内心で小さく息を吐いた。


やはり、早い。


複雑な加工が要らないというのは、こういう時に強い。


「では、明日また来ます」


「承知しました」



翌日。


約束通り工房を訪れると、木工師はすでに待っていた。


「坊ちゃん、こちらです」


差し出されたのは、想像していた以上に“武器”だった。


木の質感を残した簡素な造り。だが、無駄がない。


「……」


手に取ると、ずしりとした重みが伝わる。


「子供用ですので、引きは抑えてあります。ですが、近距離なら十分でしょう」


「矢は?」


「こちらに」


束ねられた短い矢。先端は金属で補強され、簡易ながらもしっかりとした造りだ。


「問題なさそうだ」


エドワルドは一度頷き、そのまま外へ出た。



向かったのは、森の縁。


冬の気配が濃く、足元の草も色を失い始めている。害獣……居るか?


クロスボウを構え、周囲を慎重に見回す。


弓を引く必要はない。引き金を引くだけ。

……これが、あの時の前世で見た光景が、ふと重なる。深く息を吸い、吐く。


「落ち着け」


狙いを定め、引き金に指をかける。


まだ獲物はいない。

だが、この一歩を踏み出したこと自体が重要だった。使えるかどうかは、すぐに分かる。


冬の森の静けさの中、エドワルドは初めて“準備された武器”を手に立っていた。


それは、未来を変えるための、確かな一歩だった。

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